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レドウの華麗なる冒険譚  作者: だる8
第五章 光と闇
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第90話 脱獄

「おい。おめぇ、レドウっていうのか。なかなか訳ありじゃねぇか!すげぇな」


 グリフィスが牢から立ち去るのを確認して、ゴルドが話しかけてきた。


「全然凄くねぇ。な?面倒くさいだろ」


 やれやれといった様子でレドウがため息を吐く。

 脱獄することは確定事項だが、果たしてどうやって動こうか悩む。


「そうだ。さっきお前と話していた奴を見ていたら思い出した。あいつの弟だかに剣士がいてな?そいつを殴ったんだった」


 そもそもグリフィスをちゃんと覚えていなかったレドウなので、その弟と言われても決闘した相手のことだとちゃんと気づけていない。

 レドウはふ~ん?などと適当に聞き流している。

 今の関心事は、ゴルドが誰を殴ったかではなく脱獄したらどこでどう動こうか?である。


(シルフィとアイリスはどうしたかな?)


 ここへ連行されてくる際に『通信魔導具』の魔晶石を捨てて、無効化をした。その指輪も奪われてしまったので無効化したこと自体は間違いではなかったのだが、動けるようになってから二人と連絡が取れないのは良くない。

 シルフィもアイリスも俺を助けだそうと……するだろうな。すると?まずどうする?


 レドウは考えを整理してゆく。そもそも《盗難防止》魔法の存在などは誰にも伝えていない。

 とすると『俺なら勝手に脱獄してくるだろう』と仮に考えていたとしても、そうすぐにコトが起こせるとも思ってないはずだ。

 ならばその間に何をするか?


 『協力者を集め、潜伏先を確保する』


 だろうな。二人が具体的に何をどう動いているかは分からないが、結局はこれに尽きるのだと思う。

 どちらにしても早めに連絡を取った方が良さそうである。


「おい、そういやさぁ、さっきの本当に良かったのかよ?」


 レドウの思考を邪魔するように、身体を揺り動かしてゴルドが話しかけてくる。


「何が?何のことだ?」

「何が?じゃねぇよ。折角取り返したタクト、大人しく返しちゃったじゃねぇか?」

「あぁ、すぐに取り返せるからそれはいいんだ」

「そうなんか??」


 釈然としない様子のゴルド。

 とここでレドウは、こんななり(髭面)をしているがゴルドも冒険者であったことを思い出す。


「そうだゴルド。おめぇここから出られるとしたら、出たいよな?」

「当たり前だろ?でも追われるのは嫌だな。何のためにふた月もここで我慢したかわからねぇし」


 腕組みをするゴルド。


「おい!お前ら、ここから出るなどと怪しげな会話してるんじゃない!」


 突然、背後から看守の声が掛かる。どうやら見回りに来ていたようだ。

 それを見てレドウが看守に近づく。


「本気じゃねぇよ。このなりでどうやって出るっていうんだ。あんたが出してくれるなら喜んで出るぞ」

「ふん。どうだかな。グリフィス様からはレドウという囚人は極悪人と聞いている。お前が何をしでかすかわかったもんじゃない」


 そこでレドウはおぉ!と気づく。


「そうか、さっきの奴はグリフィスって言うんだっけ?」

「無礼者が!貴様のような俗人がそのような口を聞いていい相手ではない!あのお方はグリフィス=イスト=マーニス様だ。八輝章家が一つマーニス家の現当主であらせられるのだぞ」

 自分のことでもないのに看守がエラそうに言ってのける。

 そういうお前がエラそうにしている相手は同格であるアスタルテ家の現当主(結果的に)なんだが……とツッコむのはやめておく。


「そうか、あいつはマーニスだったか。だから決闘の時に会っていたんだな。と、言うことは……」

「とにかく大人しくしていろ。余計なことは考えるんじゃないぞ」


 そう捨て台詞をはいて、看守がレドウ達の牢から離れる。

 レドウはゴルドの方を向いた。


「ゴルド、お前が殴った相手ってもしかしてミュラーって奴か?」

「お?あ、あぁ、確かそんな名前だったな。若造のくせに無駄にエラそうで」


 正解だった。

 となれば、ゴルドは忘れられていたのではなく、裁きをするはずのミュラーがいなくなったために放置されていたということだ。

 半分くらいレドウのせいである。


 ミュラーがどこまで手続きを進めていたかは知らないが、罪状申告まで進んでいたなら代わりの者が引き継がなくてはならないし、そうでないのならミュラーが死んだ時点でゴルドは釈放されているべきだ。どちらにしてもゴルドがこれ以上ここにいたところで意味がないことは分かった。


「ゴルド、大事な話をする。お前が殴ったミュラーって奴は、俺が決闘で殺した。つまり、あいつはもうこの世にいないんだ。ここにあんたがいる意味はもうない。俺に全面的に協力するっていう条件がつくが、ここから出してやる。それなら出たいか?」


 看守に聞かれないよう、声を潜めてゴルドに耳打ちする。


「マジか?いいのか?ていうか、お前にそんなことが本当に出来るのか」

「あぁ出来る。飯食うのより簡単だ」

「おぉぉ」


 自信満々のレドウの発言に何故か感動しているゴルド。

 ゴルド視点から考えたら、レドウが自信満々なだけで何の根拠も示されていないのに……である。こいつも単純な奴である。


「本当にそれ出来るなら、全面協力どころか忠誠を誓ってやる」

「んな面倒なことしなくていい。協力さえしてくれたらな。じゃあ改めて名乗ろう。俺の名はレドウ=イスト=アスタルテ。アスタルテ家の現当主……ってことになるのかな」

「んあ?」


 ゴルドがポカンとしている。そりゃそうだろう。普通はこんな牢の中に八輝章家当主なんていると思わない。

 ハッと我に返るゴルド。


「さっきも言ったが、俺はゴルド。ゴルド=ラズバックだ。港町シーランの冒険者をしていた」

「あぁ、よろしくゴルド。ちょっと考え事をしたいんでしばらく静かにしててもらえるか?」

「わかった。レドウ様」

「いや、様つけんのやめてくれ。しかも様つけながらタメ口なのは違和感あるから」


 いろいろと残念なゴルドだが、協力者はありがたい。


 さて改めて考える。

 潜伏先……はあそこしかないだろう。シルフィはすぐに思いつくはずだ。アイリスにも伝えておいて良かった。彼女も思いつくに違いない。

 じゃあ協力者は……


 レドウに思いついたのは冒険者ギルドくらいである。自分をバックアップしてくれそうなのはあそこくらいだ。

 あとは実家の力を使えば、今なら港町シーラン全体が協力者となってくれそうな気もする。

 それ以外は……正直シルフィとアイリスの人脈を頼るしかない。きっとそっち方面で動いてくれている筈だ。


 あとはどうやって連絡を取るかだけである。

 潜伏先で待っていればそのうちシルフィがやってきそうなものだが、どのくらい時間が掛かるかの確約が取れない。

 ゴルドを伝令に使う案も思いついたが、向こうがゴルドを知らないのでは信用されるまでに時間が掛かってしまう。


(……特に思いつかないが、まぁ、なんとかなるか。その場でやれることをやっていこう)


 大体やることが決まったレドウは改めてゴルドの顔を見る。


(うん。こいつの髭は剃ろう)


 それから数刻後、時間的には真夜中だろうか。

 グリフィスの反応と神器(アーティファクト)の反応が離れたことを確認した。

 レドウが焚きつけたせいか、随分長く試していたようである。無駄な努力ご苦労様である。


 他の神器(アーティファクト)の反応も一緒になっているようなので、奪った物を纏めてどこかにしまっているのだろう。

 そこからやや離れたところでグリフィスの反応が止まる。寝始めたと考えて良いだろう。

 レドウはおおいびきで寝ているゴルドを起こす。


「なんだぁ?」

「しっ……静かにな。これからここを出るぞ。恐らくお前にとっていろいろ不思議なことが起こるだろうが、質問は後だ。俺がいいと言うまで従っててくれ」

「わ、分かった」


 ゴルドを説き伏せるとレドウは《盗難防止》を発動し、三つの神器(アーティファクト)を手元に呼び寄せた。

 一瞬でレドウの手元には【王者のタクト】【聖心のペンダント】【叡智のサークレット】が戻ってくる。早速【聖心のペンダント】と【叡智のサークレット】を身につける。

 ペンダントの効果で全身に力がみなぎり、サークレットの効果で頭の中がクリアになっていく。


 次に、レドウ特製の魔法袋を手元に引き寄せる。そう、部屋のクローゼットと直接繋がっている例の鞄である。

 以前と違い、繋がっている場所は五階のウォークインクローゼット……つまり魔法で閉鎖した元ルティアのプライベートルームだが、用途は同じだ。

 これは別に奪われていたわけではなく、アスタルテ家の自室に置いてあったが、手元にあった方が何かと便利である。


 次々と現れる品々に目を丸くしながらも、ゴルドはレドウとの約束を守り黙っている。

 いろいろと騒ぎたそうだが、こればかりは仕方ない。


 そして【王者のタクト】を振るって牢の部屋と扉、扉の前の通路辺りまでを含む形で《防音空間》を発動させる。

 牢の格子の脇から看守の位置を確認するが、姿は見えないので大丈夫そうだ。

 流石に音が一切しなくても視覚的に牢が壊れるところを見られては台無しだ。


 レドウはガンガンと格子を叩いてみる。

 材質はなんだろうか?丸腰の罪人を拘留するのだから、鉄で十分だと思うが……


「まあ、大丈夫だろう」


 レドウは特製の魔法袋から、聖白鉱(アルカシウム)片刃剣(ファルシオン)を一振り取り出した。

 ゴルドは相変わらずあんぐりと口を開けたまま固まっている。


 そして片刃剣(ファルシオン)で扉の鉄格子を斬り開けた。

 ガランガランという鉄格子の落下する大きな音が《防音空間》内で響き渡る。

 もちろん看守の位置からは聞こえていないはずだ。だが視覚上は、扉を破って脱獄したように見えるだろう。


 次に転移ゲートを開く。

 移動先はタルテシュの自室である。もう完全に拠点をウィンガルデに移していたので引き払っても良かったのだが、残しておいて正解だった。

 ……実際は面倒くさかったので放置してただけなのだが。


 そしてゴルドをゲートの中に入るよう促す。

 約束通り大人しく従ってくれているゴルドは、おっかなびっくりゲートへ足を踏み入れる。

 ゴルドが完全に転移したことを確認した上で、牢に展開した《防音空間》を解除する。


 すると足音が聞こえてきた。まずい……巡回の時間だったか?

 レドウは急いで転移ゲートから移動する。


「脱獄だっ!」


 レドウが転移ゲートを解除するのと看守がそう叫ぶのが同時だった。ゲートは間一髪見られずに済んだようだ。


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