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レドウの華麗なる冒険譚  作者: だる8
第五章 光と闇
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第73話 交錯する思惑

 ……心せよ。リーデルに隠ぺいされし五つの神器あり。

  其は大帝国の残せし至宝にて、我らが聖教国を穿つ楔である。

   その大いなる力を持って蜂起せし者、

    旧国復活の志を持ちて我が国に災厄をもたらす者なり……


 ……備えよ。災厄は必ず我らが聖教国を脅かす鉾となる。

  其の鉾に対抗する盾はなし。ただ一番槍となって挫くのみ。

   鉾は全世界を敵にしてなお輝く力を持つ。

    神器は災いの種にして人類最大の兵器なり。

     願わくば、後世にて我らが聖教国は旧国の残せし神器と

      同等の魔具を作成しうることを……


 『ヴィスタリア建国記』より抜粋


……


 レドウたちと別れたジラールは、ユーリとレーナを伴って港町シーランへ戻った。

 そしてその足で冒険者ギルドのシーラン支部へと向かう。もちろんレーナのギルド登録を支援するためだ。

 

 冒険者ギルドでは初回登録のための年齢制限があり「22歳までに」と規定がある。

 というのも年齢を重ねてから冒険者初心者となったところで、活躍が期待できないからであった。

 また顧客の要望としても、相応の年齢の冒険者にはそれなりに期待値が高くなるため、ベテラン年齢の初心者がいたところで依頼もないのが現状というわけである。

 

 ただ、これには例外が存在する。

 高レベル冒険者からの紹介……つまり口利きがある場合、優先的に登録が出来るのである。


 ちなみに一般的なベテラン冒険者のレベルは15~20程度が普通だ。ましてや称号★付の冒険者など滅多にいない。

 冒険者レベル25、かつ二つ星のジラールはそれだけでVIP待遇である。

 彼が紹介するとなれば、ギルド側の対応も大きく変わるのだ。


 レーナは既に27歳であり、通常であれば冒険者登録には遅すぎる年齢なのだが、ここでジラールの存在が役に立つというわけである。

 ちなみにユーリは用事があるとのことで、この時点で二人と別れた。

 レーナの冒険者登録がジラールの紹介であったとしても少々時間が掛かりそうだったためだろう。


 結局レーナはジラールの口利きのお陰で、初心者扱いであるLv1 - 5をスキップし、Lv6での登録をすることが出来た。

 冒険者クラスは探索傭兵のスカウト……要するに斥候である。


 レーナの索敵能力は、現役のベテラン冒険者と比較しても遜色ないどころか頭一つ抜きん出る実力である。

 冒険者として登録するなら戦闘傭兵として狩人で登録するより、スカウトの方が依頼があるだろうというジラールの提案にレーナが乗った形だ。

 ただ、ジラールの口利きがあるとはいえ、ギルドとしても依頼者との信頼関係に直結する尺度であるため、そう易々とレベルスキップ登録をするわけにはいかないことから、近隣の遺跡で能力試験が行われ、それに合格することが出来たためにこの結果が得られたというのが正しい。


 ともあれ、こうしてレーナの冒険者生活は港町シーランでスタートしたのである。


 レーナの様子を見届けたあと、ジラールは遺跡都市タルテシュに戻った。

 そして、自身の書斎である物を眺めている。


 一つの古ぼけた指輪である。

 

 この指輪は以前、タルテシュで発見された遺跡(水没してしまったが)で、発掘された遺跡だ。

 弟子のユーリが先走ってこの指輪を入手したところ、遺跡最大の罠が発動して水没してしまったことは記憶に新しい。

 苦労して入手したわりに、とるに足らない古い指輪であると書斎のデスクの奥に入れておいたのだが、レドウが神器(アーティファクト)を復活させる様を目の当たりにしたことで、考えを改めていた。


 というのは、ジラールはレドウの行動や言動、復活の儀式など自分に集まったあらゆる情報から、一つの仮説において確信を深めていたのだ。


 全部で五つ存在する神器(アーティファクト)のうち、先日のサークレットで既に四つが復活しており、残りは一つ。その最後の一つこそがこの指輪なのではないか。という仮説である。仮にそうであった場合、古ぼけていて無価値に思える指輪が厳重な罠で守護されていた理由が分かるというものだ。


 もう一つの根拠はレドウの行動にある。


 以前より、レドウは古代文字の存在やレドウの持つレリーフについて探していた。

 これは彼がそれこそが神器(アーティファクト)にまつわる情報そのものとして探していたのではないか?ということだ。


 現にレドウは既に三つの神器(アーティファクト)を手にしているという。それだけの確信をもって動いてなければ、これほどの短期間で世界の謎とされているクラスの宝を手にできるはずなどない筈だからである。


 そこまでを確定事項として思考を組み立てる。


 扉にレリーフのある遺跡には神器(アーティファクト)を復活させるための祭壇が存在する。

 復活させるためには祭壇の他に捧げるアイテムが必要だ。そのアイテムこそが神器(アーティファクト)へと変化する。


 そして改めて指輪を確認すると、かすれていてよく分からない部分が多いが、リングの裏側にレドウのいう古代文字が彫り込まれている……ように見える。

 これこそが神器(アーティファクト)復活の鍵となるアイテムなのだと。そう確信するには十分な理由であった。


 ジラールは考える。

 この古ぼけた指輪が神器(アーティファクト)であったとして、どこで何をすると復活するのか?

 いや、少なくとも祭壇は必要だ。となれば祭壇のある遺跡を探さなくてはならない。


 しかし、これまでもそのような情報が入ってきたことはない。

 見逃しているのかそもそも発見されていないのか……それすら見当もついていないのだ。

 ジラールの見立てでは、恐らく一つの祭壇で復活するのは一つの神器(アーティファクト)。つまり、このリングを『北の大灯台』に持って行ったところで意味はない。


(まだ知られていない、祭壇のある遺跡を探す必要がありますね)


 ジラールは自身でそう考え、なるほどと思った。恐らくはレドウも同じ思考をし、自分を頼ったのだろうと。


(探すべきは私がまだ知らない遺跡……だが、私にはレドウのように頼る相手がいません……私が頑張るしかないですか。あとは協力者が要りますね。たまたま『北の大灯台』には魔物の気配はなかったですが、本来遺跡には魔物がいるはずです。どんなに弱い森にいる群れでも侮ってはいけないのですから)


 彼は静かに動き出した。

 まずは自身が率いる探索チームのメンバー候補の心当たりを探すためであった。


……


「つまり、あの冒険者……名前は……忘れたが」

「ヘルマンですね」

「あぁ、そのヘルマンという奴は余の依頼を達成できず、失敗して死んだということだな?」

「……はい」


 闇の中で唸る声が聞こえる。


「余の見立てではそれなりに使える手練れであったと記憶しているが」

「単純に相手が上手であると、そういうことだろう。手強いね」


 気配が頻繁に揺らぐため定かではないが、恐らく会話をしているのは三人……ほどのようだ。


「やはり兄者の見立て通り、かの『闇の力』は強大だ。正攻法で叩くことも出来ぬか」

「かといってやはりこちらへ簡単に引き入れることが出来るようでもない……な?」

「はい。ご明察にございます」


 どうやら一人は壮年の男のようだ。そしてもう一人は『兄者』と呼ばれるもう一人の壮年の男だ。

 『兄者』のほうが話し方が砕けているため、なかなかそちらが上位者とは気づきにくいのだが。

 もう一人は誰だろうか。


 会話の流れから暗部の一人だと思われる。顔は闇に紛れてよく見えないが、声の感じは女性のようだ。


「……(はかりごと)が必要か。マーニスの二の轍を踏むのは癪だが」

「ロム、直接の行動は控えよ。そんなことは手を回してユリウスにやらせれば良いのだ。我々は裏で見ておれば良い」


 壮年の男の名はロムというようだ。この場で呼ぶだけの偽名かもしれないが。


「はっ。兄者。しかしそれでは時期が遅くなりすぎやしませんか?」

「俺は焦るなと言ってるだけだ。ヘルマンとやらに依頼をかけたこと自体が早計だと俺は思うぞ。相手を警戒させてしまっただけではないのか?」

「……申し訳ありません」


 どうやらヘルマンをレドウに差し向けたのはロムの独断のようだ。


「ほっといても(レドウ)の元には神器(アーティファクト)が集まる。だが、五つ集まることはない。何故なら……」

「一つはこちらにあるから。ですね」

「その通りだ。まぁ……ハズベルトから奪う必要はあるがな。だから焦る必要はない。災厄が訪れるとされるのは奴のもとに五つ集まった時とされている。ならば、集まらない今焦る必要はないと判断し、まとめて奪うための算段の準備を進めるのが最良だろう。表面上の敵対行為や謀略などユリウスにやらせておけば良いのだ」

「承知致しました。兄者」


 ロムが部屋を退出したようだ。続いて暗部の女も退出しようと立ち上がった。


「待て。今夜はお前が俺の相手をせよ。この苛立ちを静めるための捌け口となれ」

「……承知致しました」


 暗部の女は自身の服に手をかけた。

第五章が始まりました。

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