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レドウの華麗なる冒険譚  作者: だる8
第四章 勃発
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第66話 忍び寄る影

 ジラールの運転するレンタル魔導車は順調に海岸沿いを走っていた。


 港町シーランから目的地である『北の大灯台』までは結構な道のりがある。

 距離にして800ヴィーレ程の旅程であるため、単純に宿場町サレーンとの距離と比較するとその1.5倍はある計算だ。大きな違いはそれだけの距離があっても途中に宿場町などはなく、ポツポツと海沿いに住んでいる人々の集落がある程度であるということだ。

 テール半島に着いてしまえば宿場町と言えないまでもそれなりの集落があるので、物資の調達などは可能だが、途中でトラブルが発生すると大変な目に遭う。


 そのため、ある程度資金のある者は今回のジラールのように魔導車をレンタルして荷物を積んでいくし、そうでない場合は不定期に招集される隊商(キャラバン)に同行するのが普通である。


 ちなみにジラールが運転するこの車は、乗り合い魔導車として定期的に各都市を行き来しているものと同型のため、十人以上乗る事が出来る型である。そのため、レドウをはじめ乗っている人間としては一般の乗り合い魔導車と変わらない乗り心地だ。

 下手に乗り心地が良かったり悪かったりするよりはずっといいとレドウは思っていた。


 皆の様子を観察するに、ヘルマンやユーリなどはジラールの運転する魔導車に普段から乗り慣れているようだ。普段から行動を共にしているだけはある。レドウとシルフィは乗り合いで何回か乗っているのでまあ問題ないが、落ち着かないのはレーナである。


 そもそも魔導車自体に乗ったことがないようで、ドアの開け方というか乗り方からレドウが教える始末である。

 で、乗ったら乗ったで何故動くのかとか、どういう仕組みかなどずっと聞きまくり、それが終わると結構な速度で後ろに流れていく景色を見て感嘆したり、本当にせわしない。


 そもそも自分と似た思考レベルなのだから、聞いたって分からないだろうとレドウは思うのだが、そういうことではないらしい。

 仕方なく運転席の隣に座っていたヘルマンと席を変わってもらい、ずっとジラールと魔導車について話をしている。席を移動したヘルマンはすぐに寝てしまうし、その隣に座っているユーリはとっくに夢の中だ。


 ちなみにレドウの隣に座っているシルフィは、海側の席で窓からずっと海を眺めている。

 そんなにジッと見てて飽きないか尋ねたが、全く飽きないのだそうだ。海を見慣れたレドウには全く理解出来ない。


 となると会話する相手もいないレドウは、魔導車に揺られながら自然と眠りについたのだった。


……


「レドウ、つきましたよ」


 ジラールの声で目が覚める。

 あたりはすっかり暗くなってきているが、少々空に明るさがあるためまだ日が落ちでそれほど時間が経っていないのだと分かる。


「お、おぅ。みんなは?」


 レドウがあたりを見回すが、ジラール以外の人間の気配がしない。


「皆さんは、ヘルマンの引率で食事に出かけてます」


 ジラールの様子に違和感を感じたレドウ。普段の彼の性格であれば、自分を起こして全員で動くはずだからだ。


「何かあるのか?」

「……えぇ。先に少し相談しておきたいと思いまして。簡単に言えばヘルマンに人払いのお手伝いをしてもらってる状況ですね」


 レドウは軽くあたりを見回す。確かに他に人がいる様子はない。どこぞの暗部がいる様子もなさそうである。


「簡潔にな。俺も腹減ってるんで」


 ジラールによると、手紙にも書いてあったがしばらくマーニス家の依頼で『北の大灯台』の調査を行っていたのだという。

 極秘個別依頼としてジラールのみが招集されており、同行していたのはマーニス家の配下の人間と一緒の調査であったそうだ。そういう個別依頼自体は、これまでも時々あったのだそうだが調査結果の秘匿体制が異常だったらしい。


 結果としてこれまでに特に成果が上がっているわけではないので、レドウ達に秘匿しなくてはならない事前調査内容などはなかったそうだが、アスタルテ家が継続調査を行うとなると、いろいろと探りが入る可能性があるとのことで十分に注意して欲しいとのことだった。


 また『北の大灯台』は、入り口に仕掛けがあり、中に入ること自体が出来ていない遺跡として有名である。マーニス家としてはこの入り口の仕組みについて、調査を優先的に行っていたらしい。今回の調査もそこからだとのこと。


「でも、私はレドウがいれば解錠できそうな気がしています」


 ジラールがレドウをまっすぐに見る。


「レドウはまだ私に隠していることがあるはずです。入り口に行けば分かりますが、以前レドウに質問された例のレリーフ……あれが扉に刻まれています」

「!!」


 この時点でレドウは『北の大灯台』が残りのどれかの祭壇であることを確信した。

 が、もう何かあることがジラールにバレているようである。


「わかった。お前の仲間……つまりヘルマンとユーリに対しても秘密にする条件なら教える。どうだ?」

「……いいでしょう。それだけの秘密があるということですね。マーニス家が必死に調査していた理由と繋がるかもしれませんし」


 ちょっと考える素振りを見せたが、ジラールはその条件で納得する。


「ちなみに、うちの方のメンバーではシルフィだけが知っている。……あぁ、以前会ったことがあると思うが、アイリスという女剣士いただろ?あいつも知っているけどな」


 レドウは実際に自分が行使している能力については隠しつつ、神器(アーティファクト)の存在とその復活の儀式について、そして存在が明るみになった今、争奪戦が八輝章家の中で起こりつつあることを伝えた。マーニス家が躍起になって調査し、秘匿していた理由はこれではないかとも告げる。


「なるほど、まず間違いないですね。大いなる力を与えてくれる神器(アーティファクト)ですか。……で、レドウはいくつ持ってるのですか?」

「!!」


 ジラールの目がきらりと光る。

 自分たちが持っているなど一言も言っていないが、完全に見抜かれているようだ。


「……ふぅ。まあ、話すって言ったしな。これ以上は隠しとおせねぇか。これ以上狙われるのは避けたいんで、完全に秘密だぞ」

「大丈夫です。これでも依頼主の情報はプロの探索者として漏らしませんし……あと、レドウがどう思っているかは知らないですが、これでも一応昔から私はレドウの味方のつもりですよ」


 にこっと笑顔を見せるジラール。


「分かった。これ以上詳しくは話せねぇが、今は二つ持ってる。復活してねぇ神器(アーティファクト)はあと二つを残すのみだが、そのうちの『鍵』の一つを持ってるつもりだ。だからもしここで、俺が持っている『鍵』が正解なら、それが三つ目になる」

「すると……結構先行しているということですね?少なくともレドウの手元にない神器(アーティファクト)は、ハズベルト家で所持していることが分かっている。そして恐らく情報だけは持っていたが、現物を手元に所持していなかったマーニス家は必死に探して確保したいと考えていた。が、これもアスタルテ家……つまりレドウに先行される形になる……」


 レドウとジラールは真剣な表情で顔を見合わせる。


「……そろそろ次の手を打ってくる頃ですね。焦っているから手段を選ばない可能性もあります」


 改めて、現状を再認識したところで、皆と合流すべく飲食街の方へ移動する。


「レドウ!どんだけ寝ぼすけなのよ。そんなんじゃ私のこと笑えないでしょ」


 パーティの皆と合流するなりシルフィのヤジが飛んできた。和やかな笑いにつつまれる簡易パーティ。

 先ほどのジラールとの会話がウソのように、明るい夕食の時間の始まりであった。


……


 深夜。明日からの調査に備えて早めに就寝したパーティ一同。その中で一人レーナが目を覚ました。

 二組に分かれ、魔導車の近くに大きめの簡易テントを設置して寝ていたのだが、ふとした拍子で起きてしまったようだ。

 隣には大いびきをかいている兄貴(レドウ)がいるのがわかる。反対側には小さくまるまって寝ているシルフィの姿もある。


 ジラールとずっと会話していたために魔導車の中で一睡もしていないレーナだったが、中途半端に目が覚めてしまうとなかなか寝付けないものだ。

 疲れは感じているので、おとなしくしていればそのうち寝られるだろうと思った矢先である。


 レーナを静かに目を閉じていたレーナをぞわっとした悪寒が走る。


視られている(・・・・・・)


 何者かわからないが、レーナたちのテントの様子を伺っている者がいる。

 寝ているふりをしながら毛布の中で静かに懐のバゼラートに手をかけた。今は様子を伺っているだけだが、もし襲ってくるようであれば動けるのは自分だけだと戦慄する。


 幸いテント内を伺っていた気配は、襲撃をする様子はなくテントを離れていく。

 それと同時にレーナが行動を起こす。手持ちのバゼラート以外に近くにあった弓を背負うと、母親(ミラ)直伝の(わざ)で気配を殺す。

 正確には周囲に紛れ込ませるという表現が的を射ているのだが……。


 狩人としてのレーナの本領発揮である。


 本気を出したレーナはかなり広範囲の気配を探ることが出来る。本来は狩りの対象となる動物を探すために使うのだが、母親(ミラ)の暗殺術を習得した結果、人の位置まで探れるようになった優れた特技となっていた。

 残念ながら、その気配の持ち主が誰なのかを特定することまでは出来ないのだが……相手に見つからずに尾行することくらいは容易である。


 気配がテントから離れるのを確認し、レーナは外に出る。

 気配は『北の大灯台』……つまり、遺跡方面に移動している。結構な速度であるため、走っているのかもしれない。

 レーナも気配を殺しながら急いで後を追う。ある程度の距離は必要だが、索敵範囲から逃してしまっては意味がない。


 気配は遺跡の入り口付近で止まる。

 レーナも不自然にならないように少し移動しながら、姿を隠せるところで息を潜めた。

 そこに一人の新たな気配が現れる。どうやら会話をしているらしいことだけが、辛うじてわかる。当然会話の内容などは分からない。

 会話が終わると一人の気配が闇に溶けるように消える。明らかに暗部の動きだ。


 尾行していた一人がこちらに戻ってくる。

 レーナは気配を索敵範囲に留めながら先行する。これはかなり難しいが、相手の目的地も自分たちのキャンプであったために上手くいった。……いや上手くいってしまった(・・・・・・・・・・)のだ。

 レーナは理解する。


 パーティ内に間者(スパイ)がいるという事実を。


最近読者さまが少しずつ増えてきたようで嬉しい限りです。

そんな折り本当に申し訳ないのですが、今週本業が忙しすぎて原稿があげられません。

次回を更新を24日(金)とさせて頂きます。合間を縫って何とかそれまでに一話書き上げたいと思います。

今後ともよろしくお願い致します。m(_ _)m

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