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レドウの華麗なる冒険譚  作者: だる8
第四章 勃発
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第61話 ジラールの誘い

 アスタルテ家当主アレクはホクホクしていた。

 長年アスタルテ家を悩ませていた財政難を、レドウの決闘報酬で得られたマーニス家の資産と、賠償金五千万リルが解決してくれたのである。


 特に大きいのは『ログナルタ坑道』と『聖白鉱(アルカシウム)第一鉱山』である。

 この二つを得ることで、マーニス家がほぼ独占していた聖銀(ミスリル)聖白鉱(アルカシウム)の主要産出品の流通を一手に握ることになったのだ。

 また『ログナルタ坑道』に至っては質の良い魔石も採掘されるため、その点でも非常にメリットが大きい遺跡であり坑道であった。

 

 アレクはすぐにカーライル家と連絡を取り、新たな流通経路を開拓するつもりである。聖白鉱(アルカシウム)に関しては市場価格を自由に決められるという点においても非常に美味しい報酬である。この時点でマーニス家の完全独占状態が崩壊したと言えた。

 

 その他の場所については、シルフィとアイリスの意見を取り入れた場所であり、アレクは特に関与していない。

 アレクにとってはこの二箇所があれば十分手腕を振るえるのである。

 すぐにアスタルテ家財政立て直しに着手するアレクであった。


 なお『南岸遺跡』を欲したのはシルフィである。

 水の祭壇のあるこの遺跡をアスタルテ家の直轄とすることで、神秘的な祭壇の間を真の意味で自分の秘密基地にするための希望である。ここに関しては完全にシルフィの個人的な希望によるものであった。

 

 残りの二か所に関してはアイリスの推薦である。

 祭殿のありそうな場所にあたりをつけて可能性の高そうな場所を確保した形である。

 どちらも旧帝国時代から存在すると言われる建造物なのだが、いずれも入り方すら明らかにされていない未踏遺跡である。

 『風の丘』などは現代では遺跡の存在すら確認できていないのだが、文献にはその存在が明記されており、マーニス家が金にものを言わせて場所だけ確保したといういわくつきの遺跡である。祭壇を探すという目的がなければ、一部の未踏に憧れる冒険者以外は探そうともしない場所だ。

 

 そういった理由から次の探索候補としては自然と『北の大灯台』に注意が向いていた。

 

 そんな折、ジラールからアスタルテ家のレドウ宛てに手紙が届いた。出し元は港町シーランだった。

 

 なんでもマーニス家からの直接指名依頼で、まさにその『北の大灯台』の調査に乗り出していたところ、途中で遺跡の所有権が変わったことでマーニス家による調査が出来なくなったため、違約金と共に依頼の終了連絡が来たのだという。で、調べたところアスタルテ家の所領となったことが判明した。入り口に以前話を聞かされていた古代文字があるため、一緒に調査の継続をしないか?というお誘いの手紙だったのだ。

 

「アイリスは引きがいいな」


 レドウは素直に褒める。


 入念に調査した結果なのでアイリスにとっては当然のことなのだが、それでも直球で褒められるとアイリスも照れを隠せない。

 面白くないのはシルフィ。ここのところあまりレドウの役に立ててない気がしていた。

 レドウにしてみれば、怪我の看病や治療魔法をもらったりしているので全くそんな事はないのだが、それを伝えても『【聖心のペンダント】のせいでさらに役目が減った』とさらにしょげる有様だ。

 厳密には【聖心のペンダント】の効果は体力回復であって傷治療などをしているわけではないため、シルフィの回復魔法の出番はなくても治療魔法は変わらず役に立っている。


 レドウはシルフィの自信回復のためにジラールからのお誘いである『北の大灯台』の調査に連れてってやろうと考えていた。


「ジラールの奴は多分ベストメンバーでくるはずだから、ヘルマンがいる。となるとアイリスは留守番でいいか?というより、継続して文献調査をお願いしたい」

「わかりました。任せて下さい」


 アイリスは二つ返事で同意する。

 文献調査は出来るだけ実施しておいた方がいいと考えていたからだ。

 それにアレクの事業が開始することを考えると近くにブレーンがいた方がいいに決まっている。


「シルフィは俺と一緒にテール半島の灯台調査だ。いいな?」

「任しといて!回復魔法の出番は最近はないけど、攻撃魔法使いとしてならレドウよりも役に立てるんだから!」


 見慣れた仁王立ちポーズだ。ちょっとは元気が出たようで良かったとレドウもホッとする。


「じゃあ、ジラールに返事を出しておくか。手紙より先に俺たちが港町シーランに着くのは変だから……えっと、何日後が自然かな?」

「七日後くらいにしたら?」

「そんくらいでいいか。ちっと休みが欲しいし」


 決闘以来、数日すでにグダグダとだらけた生活を送っていたレドウだったが、タルテシュからの移動時間を差っ引いてもさらに五日だらけるつもりのようである。

 最も忙しく働いているのは当主のアレクであった。これが本来の形かもしれないのだが。


「よし。暇つぶしに騎士団と遊んでくるわ」


 毎日中庭で鍛錬を積んでいる騎士団は決して遊んでいる訳ではない。

 レドウに暇つぶしにされる云われもないはずなのだが、彼らはレドウが行くと喜ぶのでアイリスも特に拒否はしない。


 決闘以後、特に第一小隊長のリュートの態度が一変した。

 レドウに対して生意気だったかつての面影はどこにもなく、兄貴と呼ぶラウル小隊長より熱心な信者になってしまっているのだ。

 それだけ決闘のインパクトが強かったということだが、生意気だった頃の方が面白かったとレドウは思っている。


 単純に慕われても面白くないのだ。レドウは天邪鬼である。


「あまり虐めないでやってくださいね」


 部屋を去り際のレドウに静かに釘を刺すアイリス。

 それに軽い調子で応えるレドウ。


「私も準備しなくちゃね」


 シルフィも席を立つ。


「あ、シルフィ。閣下から預かり物が」


 アイリスに呼び止められるシルフィ。

 振り返ったシルフィにアイリスは一つの魔晶石であった。


「制御石?」

「Lv4よ。マーニス家から奪った賠償金の一部で手に入れたそうよ」

「Lv4?!そんなの手に入ったの?」


 アイリスから受け取った制御石をじっと見つめるシルフィ。

 もともと制御石といえば無色透明な石なのだが、その石は若干虹色の光を放っている。光にかざすとその輝きはさらに増した。


「詳しいことは閣下から聞いてね。私は受け渡しを代行しただけですので」

「分かった。ありがとう!早速設置してみる」


 足取りも軽くシルフィが部屋を出て行く。


 その姿を見届けた上で、アイリスが声をかける。


「ラピス」

「はっ!」


 アスタルテ家暗部のラピスが姿を現す。

 その気配は薄く、いることを強く意識しないとそこに居ることを忘れてしまいそうなほどである。


「騎士団入団試験に紛れ込んだ間者(スパイ)の件、何かわかりましたか?」

「はい。いずれもマーニス家次男ラーギル直属の者と判明しました。ラーギルは各騎士団に自らの息の掛かった騎士を潜り込ませることで、裏から各家の騎士団を掌握しようと画策していた模様です。既に王国正規軍であるハズベルト家とパーン家にはラーギルの息の掛かった騎士がいるようですが、先日統括の騎士が更迭された模様。消されたウルスは、当家向けの一人目の間者(スパイ)であったことも突き止めましたので、現在の騎士団員にマーニス家由来の者はおりません」


 ラピスが調査結果をアイリスに報告した。その内容は喜ばしいものであった。

 だが、当のラピスには誇らしげな素振りは一切なく、未だに中庭に侵入されたことを悔いているようでもある。


「ありがとう。素晴らしい報告でした。ちなみに詳しくは聞きませんが、情報ソースは?問題ありませんか?」


 そんなラピスを労うアイリス。彼女のお陰でアイリスは非常に情報戦で優位に立てていると考えていた。


「問題ありません。当家に侵入し暗殺を行った者を捕らえ、尋問し、始末しております。苦し紛れに嘘を言う可能性もあるため、さらに当家に侵入しようとしていたもう一人も捕らえ尋問した結果も同じ内容の自白をしております。こちらも始末したため、外部に漏れることはありません」

「わかりました。ありがとう。貴女のお陰で枕を高くして寝られそうです」


 ラピスは一礼し、姿を消した。

 アスタルテ家は情報戦でもマーニス家に勝利していた。


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