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レドウの華麗なる冒険譚  作者: だる8
第四章 勃発
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第54話 タルテシュのレドウ

 決闘用の剣調達は、以前タクト選びで足を運んだサラの店で行った。

 またレドウとシルフィの二人で訪れたため、同じようにシルフィは弄られていたがそれもまた日常の一幕である。


 レドウは、サラの店で二振りの片手剣を購入した。聖銀(ミスリル)より堅く軽い聖白鉱(アルカシウム)という非常に高価な金属で出来た片刃剣(ファルシオン)である。

 聖白鉱(アルカシウム)はリデル平野の北部に位置するアルカス山脈の奥地で産出される貴重な鉱物である。

 聖銀(ミスリル)の上位金属として期待された聖白鉱(アルカシウム)であったが、鉱山をマーニス家が抑えて価格操作をしているために流通量が少なく、結果として武器等に使用されることがほとんどくなってしまったため、一般の武器取り扱い店では入手できない逸品である。


 サラの店だから入手できたとも言える。

 レドウたちが来なければ、二本とも新作としてハズベルト家に献上される予定だったそうだ。「他にも献上品はあるから問題ないわ。言わなきゃ分からないし。レドウさんに使って頂けるなら優先的に卸すに決まってるじゃない」とはサラの言葉である。シルフィをからかうネタ抜きにレドウは気に入られているようだ。


 ともかく、無事剣を調達出来たレドウは一旦アスタルテ家に戻ったあと転移ゲートを使ってタルテシュに向かったのだった。



 レドウはタルテシュに着くと、まっすぐジラールの屋敷に向かった。

 念のため新しく調達した剣はタルテシュの宿舎に置いた上でである。


 ジラールは残念ながら自宅にいなかった。


 屋敷の使用人にもどこにいるか分からないようである。ちょっと前はなんだか市内に現れた新規の遺跡などを探索していたようだが、それも一旦落ち着いているとのことだ。

 それなら仕方ないと自分に言い訳しつつ、レドウが向かったのはいつもの酒場である。

 ここでギルドに向かって一生懸命ジラールの行方を捜さないのがレドウ流だ。

 

 酒場の扉を開けるといつもの金がガランと音を立てる。


「なんだレドウじゃないか。久しぶりだな」


 早速声をかけてくるのはマスターである。軽く手を挙げていつもの席に向かったが、なんと先約がいた。


「おい、そこは俺の席なんだが?」


 当然誰の席でもない。たまたまレドウがずっと座っていたというだけである。

 しばらく座らない時期が続けば、誰かが座ってもおかしくないのだが……


「ここは誰の席でもないからぁ、当然レドウの席でもないのよぉ?」


 座っていたのはリズである。

 仕方なくいつもの席ではなくその向かいに座るレドウ。


「何やってんだよ。ギルドはどうしたよ?」

「レドウこそぉ、なんでこっちにいるのぉ?もうクビになったぁ?」

「俺は仕事で来てんだよ」


 レドウはマスターにいつものエールを注文する。


「私の分はぁ?」

「あ?なんでリズに奢らなきゃならねぇんだ。自分で頼めよ」

「最近は稼いでるんでしょ?ケチケチしないのぉ」


 リズは引き下がらない。こいつも面倒くさいやつである。


「しょうがねぇな。マスター。ホットミルク一つ追加で」

「なんでぇミルクなのよぉ」


 不満そうにレドウをにらむリズ。だがレドウはそんなこと気にしない。

 マスターからエールとホットミルクを受け取り、リズの前にホットミルクをドンと置く。

 文句は言わせないとレドウは態度で示す。


「俺の質問にも答えろよ。ギルドはどうした?そっちこそクビになったか?」

「ふふ~ん。私はねぇ、偉くなったのよぉ。窓口対応するだけのリズさんじゃぁないのよぉ」

「ようはクビじゃないのな」


 自慢げに言ってのけるリズ。一方でレドウはギルドの細かい仕事の内容など知らないが、とりあえず仕事の内容が変わったということだけは伝わったようだ。


「まあいいや。ジラールがどこにいるか知らねぇか?」


 ギルドに精通しているリズなら知ってるだろうと聞いてみるレドウ。

 だが、リズからは思わしくない回答が返ってくる。


「ん~。今でしょぉ?分からないなぁ。こないだまでぇギルド指名依頼の探索をお願いしていたんだけどぉ、それも終わっちゃったしぃ」


 リズの情報はジラールの屋敷の使用人と同レベルであった。

 何か秘匿依頼でも受けているのかもしれないとぼんやり考えるレドウ。


「あぁでもぉ、こないだまで一緒にパーティ組んでたヘルマンさんならぁ、さっき二階(うえ)でみたから、まだ二階にいると思うよぉ」


 『ヘルマン』は、レドウにとって懐かしい名前である。


「ん。なんだヘルマンがいるのか。二階?」

「だめよぉ。今顧客との打ち合わせをしているはずだからぁ、下りてくるまで待たないとぉ」


 早速二階に上ろうと、飲みかけのエールを握りしめたまま立ち上がったレドウに釘を刺すリズ。

 リズの指摘を受け、やはりエールを握りしめたまま席に座るレドウ。


「リズ、やっぱりそっちの席譲れよ。こっち側じゃ調子がでねぇ」


 何の調子なのかは不明だが、居心地が悪いようだ。

 

「いよぅ、レドウじゃないか。いつ戻ってきたんだ?」


 会談から下りてきた一人の冒険者が声をかけてきた。

 以前にもこんなやりとりがあったような気がする。

 レドウは声のした方を見るが、やはり名前が思い出せない。見たことはあるんだが……


 (誰だっけな。まあいい。たしかこいつの名はザイルだ。)


「なんだザイル。騒々しいな」

「惜しい!惜しいぞレドウ。残念だが一文字違った……じゃねぇ。いい加減俺の名前くらい覚えろや。俺はガイルだ」


 その冒険者はずかずかとレドウの前に寄ってきた。

 リズも席に座っているため、テーブルに椅子はなかったがそのへんから適当に椅子を持ってきて座るガイル。


「ガイル、お前に用はねぇぞ」


 冷たく手であしらおうとするレドウ。しかしそんなことでガイルは引き下がらない。


「久しぶりに会ってそれかよ。この席に座ってるってことはどうせ暇なんだろ?なぁリズ」

「私もぉ、暇じゃぁないんですよぉ」


 明らかに暇そうなリズが暇ではないと主張する。暇じゃないわけがない。


「おい、マスター。この席に座るやつはなんでみんなこうなんだ。呪われてんじゃねぇのか?」


 ガイルのツッコミがマスターに飛び火した。だがマスターはそんなことで脊髄反射するような短気な性格ではない。


「冒険者という人種は全員そうですよ。ガイル、貴方も含めて」

「ちげぇねぇ」


 マスターの冷静な返しに納得するガイル。


「ガイル、いい加減にしないとまた(・・)お前のおごりにするぞ。俺はヘルマンのやつを待ってんだ」

「またってなんだよ。俺はレドウに奢ったことなんてねぇぞ。ん?ヘルマン?」


 ヘルマンの名前に引っかかった様子のガイル。


「なんだ?なんかあるのか」

「いや、レドウが待ってるのはヘルマンだってんだろ?下りてこないと思うぞ」

「何でだ?」


 ガイルが首をすくめる。


「さっき二階の窓から飛び降りて出てったからさ。ていうか、あいつはいつも窓から二階に入ってきて窓から出て行くから、一階には下りてきたことないんじゃないか?」


 ガイルの言葉にあっ!と手を口に当てるリズ。


「そういえばぁ、そうだったかもぉ」

「ヘルマン、馬鹿なのか?入り口をしらんのか?」


 レドウが呆れたように肩を落とす。

 慌てて追いかけないあたりがレドウらしさである。


「ヘルマンってぇ、風移動(ウィンドウォーク)を習得してからぁ、階段を下りるのがぁ面倒くさいってぇ言っていたような……」


 貴重なリズの情報である。いや、全然貴重じゃない。


「要するにアホってことだな。まあいい。本当に用事があるのはジラールなんだ。ほっといて飲み直しだ。リズ、付き合うよな?」

「えぇ~まぁいいけどぉ、今日はお休みだしぃ」

「「休みかよ!」」


 レドウとガイルの全力ツッコミを受けつつも、リズを中心に飲み直しをする三人であった。


聖白鉱(アルカシウム)というのは本作の創作金属です。

付録 舞台MAPを参照頂くと分かりますが、ウィンガルデの北方にアルカス山脈が広がってます。この山脈で産出される鉱物という設定です。指輪物語でミスリルが生まれて以降、ファンタジーで使用される空想金属は数多くありますが、人の手で加工できる金属としてミスリルよりちょっと強いものがこの物語では欲しいなと思って生まれました。

(そういうもんなんだなぁ~)と軽く読んでもらえるとありがたいです。

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