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レドウの華麗なる冒険譚  作者: だる8
幕間 ~ジラールの冒険
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第47話 新しい遺跡

 その日、遺跡都市タルテシュはここ数年見ない騒ぎとなっていた。

 それもそのはず、なんと都市内に遺跡の入り口が発見されたからである。


 場所は都市の北西、商業区域の一角。発見は本当に偶然である。

 道具屋の主人が店の敷地内に井戸を掘っていたところ、掘削業者から横穴があり通路が繋がっていると連絡があり、道具屋の主人は慌てて冒険者ギルドに報告したというわけだ。


 そんな感じの発見であったため、とりあえず井戸掘りは中止。

 また、遺跡から魔物が現れる可能性があることから、道具屋のあった土地は冒険者ギルドの買い上げによってギルド所有地となり、道具屋の主人は引っ越すことになった。そうした経緯からギルドの配慮もあり、ギルドのすぐ隣の土地を譲り受けた主人は冒険者御用達の店として大繁盛するのは後のお話である。


 新しく発見された遺跡の話に戻すと、冒険者ギルドとしてはこうした都市内遺跡は放ってはおけないため、遺跡の探索と真の入り口の発掘のために信頼のおける冒険者への探索調査の指名依頼を出した。


 白羽の矢が立ったのはジラールである。

 いまやタルテシュでは知らぬ者のいない特級冒険者である彼は、未踏遺跡の探索では当然のように頭一つ抜きん出た実力と経験を持ち合わせている。

 冒険者ギルドとしてはそんなジラールに依頼するのは、立場からして当然の行為であった。

 ジラールは探索メンバーとして自分以外に弟子のユーリといつもの仲間である戦士ヘルマンとの三名でみなに見守られながら遺跡に潜っていったのだ。


「思ったより湿気がありますね。水を求めて井戸掘りをしていたというのは、あながち間違った判断ではなかったのかもしれませんね」


 ジラールは遺跡に入るなりそうつぶやく。

 遺跡内が湿っていることはあまりいいことではない。


「ジラールさん、ほとんど魔物の気配はありませんね。それどころか雷光蟲すら見あたらないですよ」

「すると光魔法(ライト)は必須ですか」


 言うが早いか、ジラールがタクトを振って光魔法(ライト)を使う。通路が明るく照らされる。


「これ、本当にあまりよくないですね。こっちの奥の方、足元が水没しそうな勢いです」


 足下をバタつかせながらユーリもぼやく。おかげで水面がやや波打っている。


「だめです、ユーリ。水の様子をしっかり観察しなさい。水位は上がってますか?変わってないですか?それによって次に打つべき行動が変わりますよ」


 ジラールはぼやいただけのユーリを嗜める。

 ユーリはジラールに言われ、奥の状態を観察する。


「水位は……上がってないです。むしろ少しずつ下がっているように見えます」


 ユーリの報告に少し考え込むジラール。


「それもあまり良くない傾向ですね。動いているというのが宜しくない。罠か、もしくは足場の崩落の危険があります。いったん反対側から確認しましょう」


 最初に照らした方と反対側へ向かう三人。

 こちらは比較的足場は安定しており、湿気も心なしか収まってきているように感じる。

 ただ、やはり魔物の気配はない。


 しばらく進むと登りの階段があった。

 まず階段の状態を確認するジラール。足場が確保されていることを確認しながら慎重に上るが、彼はすぐにその場に立ち止まった。


「どうしたんですか?師匠」

「いえ、特に問題はないのですが、そういうことですか。」


 ジラールは場所をユーリと変わって奥を見せてやる。

 階段は途中で大きな岩に阻まれ、さらにその上はリーデル平原の大地の地層で覆われていた。


「おそらくここが入り口です。ですが、何らかの原因でこの岩が入り口を塞いでしまい、その後長い年月をかけて土砂が堆積して隠されてしまったということでしょう」

「ということは?」

「はい。入り口の発掘はほぼ無理です。今ある井戸を入り口にするほかないですね。」


 ジラールが冷静に結論を告げる。

 が、戻り際に何か景色に違和感を感じていた。なぜ違和感があるのかこの時点のジラールにはわからなかったのだが……


「じゃあ次はあの水浸しの通路だな?見るからにやな雰囲気だが」


 戦士ヘルマンも少し警戒気味だ。


「仕方ありません。魔物が出ないだけでもマシですし」


 来た道を戻る三人。入り口まで戻ったとき、明らかな変化を感じた。

 そう、最初に入った時と全く異なる状態のものがあったのだ。


「水が……ない!」


 ユーリが驚きの声を上げる。

 ジラールはやはり難しい顔をしている。


「一旦出ましょう。このまま進むのは危険です」


 ジラールの指示で遺跡から出る三人。

 三人を迎えたのは周辺で商売を営む人々と、ギルドのスタッフたちであった。

 といってもリズやリーサたちのような窓口スタッフではなく、有事に現場に急行する支援部隊のスタッフである。

 

 普通に冒険者家業で依頼をこなしているだけではあまりお目にかかることはないが、こうしたギルドからの直接依頼の場合、彼らが支援してくれるのだ。


「ジラール殿、お疲れ様です。予想より早いお帰りでしたが、どうなさいました」


 言葉の通りである。

 探索をしてくるには戻りが早すぎるのである。何か困難な壁があったと考えるのが普通であろう。


「少々、情報が足りないようです。道具屋の主人とこの依頼でこの井戸を掘削していた業者と会話できますか?」

「掘削業者と連絡が取れるかはわかりませんが、まずは道具屋の主人とセッティングしますね」


 そういってギルドの支援スタッフは行動を開始した。


……


 半刻もかからずにジラールは遺跡入り口にやってきた道具屋の主人と会話することができた。ギルドの支援スタッフのおかげである。


「主人、お呼び立てして申し訳ありません。実は聞いておきたいことがありまして」


 ジラールが丁寧に切り出す。

 一方、道具屋の主人は何を聞かれるのかわからずに不安そうな面持ちである。


「ご主人は井戸の遺跡を直接ご覧になりましたか?」

「いえ、私は見ていないですね。井戸掘りをお願いしていた掘削業者が血相変えて報告するもんでね?何事かと思い……まあ早い話が冒険者ギルドへ丸投げした次第で」


 道具屋の主人は申し訳なさそうに答える。


「では、ご主人が依頼されていた掘削業者と連絡はとれますか?」

「あぁ。それは問題ない。宿場町ウィードルに拠点を持つ業者だが、タルテシュにも支部があってね。こんなことがあったんでまだいるんじゃないですかね」


 道具屋の主人の答えに軽くうなずくジラール。


「コンタクトの依頼をお願いします」


 その上でギルドの支援スタッフに依頼をする。


「いるようならすぐに呼んで参ります」


 こういうときの支援スタッフのフットワークは非常に軽い。その道のプロというやつだ。

 すぐに当日作業をしていた職人二名を連れてきた。

 ジラールは丁重に道具屋の主人に帰宅を促し、今度は二人の掘削職人にヒアリングを始めた。


「お忙しい中、いらして頂きましてありがとうございます。掘削工事の際の状況を教えて頂きたくてお越し頂きました」


 ジラールは二人にも深々と頭を下げた。そしてすぐに用件を続ける。


「お時間は取らせません。お二人が遺跡を発見されたとき遺跡の床に水はありました?またあったとして水位はどのくらいでした?」


 ジラールの質問に顔を見合わせる二人。そして小柄な方の男が口を開いた。


「あっしが最初に発見したんですがね?あっしらは井戸を掘っていたんで最初は水位がどころか横穴は水没してる状態でしたよ。最初は邪魔な穴くらいにしか思ってなかったんで気にしなかったんですが、気づいたら水が引いてましたね」


 すると今度はもう一人の男が発言する。


「わしはこいつが言うような水没状態の横穴は見てねぇんですが、話聞いて井戸の水が全部そっちに流れちまうと思ったもんですから、最初は穴をふさごうとしていたんです。そしたら流れ出した水が戻ってきやしてね、慌てて上に逃げ戻ったです」


 その言葉に小柄な男がびっくりした顔をする。


「そんなことあっただか?あっし知らなかったよ。おめえが横穴埋めてくるっていうもんだから、邪魔しちゃ悪いと思ってその日は作業に入らなかったんだ。で、翌日見たらなんも埋まってなかったからサボったと思ってなぁ。そんときに好奇心で穴覗きこんだら床が続いてるもんでな?中入ったたら人工物だったんで、慌ててギルドに連絡しただよ」

「なるほど……ありがとうございました。大変参考になりました」


 ジラールは二人を返して考え込んだ。先ほど遺跡の入り口付近で感じた違和感の正体に気づいたのだ。


「ねぇ師匠、どういうことよ」

「俺、魔物がいねぇ理由が分かったかもしれない」


 ユーリの発言を無視してヘルマンがそうつぶやく。


「ヘルマン、恐らく君の想像通りです。これは入る時間を気をつけないと全員命を落とす可能性があります」

「も、もしかして……」


 やっと答えにたどり着いたのか、ユーリが蒼い顔をしている。


「そう、この遺跡は周期的に水没します。理由は不明ですが」


 ジラールが険しい顔でそう伝えた。



ちょっとジラールさんの冒険を挟みます。第三章は前話で終了です。

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