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レドウの華麗なる冒険譚  作者: だる8
第二章 神器を求めて
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第24話 宿場町ウィードル

 日が陰る頃、レドウ、シルフィ、アイリスの三人はレドウの部屋に集合した。


「私たち……特にレドウさんは今タルテシュにはいないはずです。ですので、知り合いに出くわさないよう注意しなくてはなりません」

「外見は、ちょっと変装すれば大丈夫よ。だって服装に関してはいままでのレドウとまるっきり違うからね」

「……それでも注意するに越したことはありません。レドウさんのような体躯の人間はそういるものではありませんから……」


 アイリスはあくまで慎重だ。


「そのための夜間行動なんだろ?タルテシュからのウィードル行き魔導車も最終便を利用する手はずだ」

「でも、レドウはタルテシュではある意味有名なんでしょ?」

「そんなこともあろうかと、変装道具を仕入れてきた。どうだ!」


 レドウが取り出したのは、目をしっかり覆うようなサングラスだった。


「どうだ。完璧だろう?これで誰も俺だとは思わん」

「そ……そんなのダメに決まってるでしょう!怪しいだけじゃない」

「そうですね。かえって目立つような変装にはしないほうが良いと思います」


 二人から全力でダメだしを食らった。


《マスター、提案があります》

(お。どうした。このサングラスを活かすいい方法があるんだな?)


《サングラスは不要です。人の気をそらすよう光の屈折角を変化させるような魔法障壁を作成し、マスターの周りに張り巡らせてはいかがでしょうか》

(……。わりぃ、何言ってるかさっぱりわからん)


《マスター、差し出がましい提案で申し訳ありません》

(いいってことよ)


 タクトの精の提案は、偉そうなレドウの理解不足によって却下された。


「とりあえず、目立つ行動は避けてすぐ移動しましょう」


 レドウは部屋の隅に転移ゲートを作成すると、タルテシュの自宅へ移動した。


「なにこの部屋。本当に何にもないじゃ……むぐ」


 レドウの部屋に到着するなり、あまりの物のなさにシルフィが声を上げた。


「(普段、声がするはずのねぇ部屋なんだから、声あげんな。壁薄いからここの会話は隣に筒抜けだぞ)」


 あわててシルフィの口を押さえるレドウが声を潜めて注意する。

 わかった。とうなずくシルフィの様子を確認して手を離す。


「(魔導車の出発時刻までそれほど時間があるわけじゃねぇ。乗り遅れないようすぐに移動する。ここから南門まではすぐだ。ついてこい)」


 レドウの案内に加え、タルテシュの冒険者用宿舎の周りにあまり街灯がないことも幸いし、予定通り三人は魔導車で出発することができたのだった。


……


 アルカス山脈の雪解け水が集まり、南端の高地にできた巨大湖。

 その湖から海に向かって流れる偉大なる河、リーデル大河は太古の昔よりこの地に生きる人々に恵みの水をもたらしてきた。


 そのリーデル大河に寄り添うように広がる豊かな森林地帯は、河口の海沿いまで続いている。

 そんな森林地帯へ入り口として発展した宿場町がウィードルだった。

 外環街道の南に位置するウィードルは、河岸の村リーデルサイドに向かうための中継地点の役割も担っている。


 北のノオム村に対しての宿場町オピタルのような位置づけと考えることもできるが、大きな違いがある。

 ここは農産物が盛んなリーデルサイドからの流通量がオピタルとは比べ物にならないほど多く、西の宿場町フューズ、東の宿場町サレーンとを繋ぐ重要な交通拠点だった。


 そんな宿場町ウィードルにに三人が到着したのは、翌朝のことである。


「朝食よ。朝食。野菜が新鮮で美味しいのよ」

「野菜とかどこで食っても変わらんだろ。この町には肉料理がほとんどないから、俺はあまり好きじゃねぇんだ」

「そのかわり、サレーン経由で運ばれてくる海産物がそろってますので、美味しいレストランはそろっている印象ですよ」

「……レストランなんて普通でいいんだけどよ」


 宿場町オピタルで背伸びして散財した男とはとても思えない発言だが、ここはスルーしておこう。


 シルフィとアイリスの二人に連れられて入った海鮮レストラン。

 店員に案内されて座ったレドウは、隣の席のよく知った顔から声をかけられた。


「おや、レドウじゃないですか」

「げ、ジラール。なんでここに」


 そう、そこには見かけぬ女性と二人で食事をしているジラールがいたのだった。

 アイリスが一瞬『場所の選定を過った』という表情を見せたが、幸いシルフィ以外には気づかれずなんとか平静を保ったようである。


「ていうか、誰だ。そいつ」


 レドウがジラールと同席している女性を顎で指す。


「……そういうレドウこそ見慣れぬ方々とご一緒しているじゃないですか」

「まぁな。俺はモテるからな」

「……」


 軽口に無言の抗議がシルフィから飛んでくるが、そんなことは気づく様子もなく無視するレドウ。

 と、ジラールと同席していた女性が口を開いた。


「お初にお目にかかります。リズさまのご紹介でジラール様の弟子とさせて頂きました、ユーリと申します」

「俺はレドウだ。……なんだそうか。また弟子とったのか」

「いつも取ろうとして取ってるわけではないのですけどね」


 落ち着いた様子でコーヒーを啜るジラール。


「それで、レドウはなぜここに?」

「俺か?俺はあれだ。お前から南岸遺跡行ってみ?と言われたんで、これから行ってみるところだ」

「あぁ。そういえばそんなこと言いましたね」

「私たちもそこへ行ってきたところです!」


 ユーリがややきらきらした瞳でレドウを見る。

 先ほどからユーリがレドウを見る瞳がやや熱っぽい。

 レドウには伝わらなかったようだが、憧れの人を見るときの視線である。


「そういえば……まだ行って数日も経ってないと思いますが、もう服装が王都っぽい装いになってますね」


 ジラールが物珍しそうにレドウの出で立ちを見ていた。

 今までが革の鎧姿以外でいたことがないため、何に着替えたとこでジラールの興味をひく結果になっただろうことは置いておくとして……。


「まぁな。到着するなり衛兵に連れてかれたからな」

「ふふっ。いつもの様子で闊歩したんでしょう」

「最初はよ、周りにいる連中がみんな俺の振り返るから、俺はどんだけ人気者なんだと思ってたんだがな……」

「そんなわけないでしょうに。レドウは王都に行くの初めてでしょう」


 ジラールは静かに目を閉じてフフッと笑った。

 王都で起こっただろう出来事を想像しているようだ。


「ずっと使い込まれた革の鎧しか着ていなかったというわりに、ずいぶんと良い物をお召しになっているようですね」


 レドウとジラールの会話を聞いて不思議そうにユーリが尋ねる。


「当たり前でしょう?私が選んだのよ」


 と、ここでシルフィが会話に参戦。何かを張り合っているようにも見える。


「そちらの方は?」

「あぁ、今回の依頼者さんたちだ」

「……なるほど。では詮索は無粋ですね」


 再びコーヒーに口をつけるジラール。


「これから南岸遺跡に向かうとのことですが……一つ伝えておくことがあります」

「ん?なんだ?」


 レドウが何事か?と尋ね返す。


「私もしばらく行っていなかったので知らなかったのですが……最近、実績を積んだベテランの冒険者が遺跡内で消息を絶っているようです」

「?!」


 それまで静かに食事をとっていたアイリスの手が止まる。


「もともと初級~中級者が油断や不意を突かれるなどで命を落とすことがある遺跡ではありますが、熟練の冒険者が倒れるような遺跡ではなかったはずです。今回、私はユーリの実力確認の意味で南岸遺跡に行ってきたのですが、実は裏調査としてギルドから熟練冒険者の失踪原因の調査依頼も受けていました」


 え?という表情でユーリがジラールを見る。聞かされていなかったのだろう。


「今回内部の様子をざっと確認した限りでは、目立って怪しいところはなかったですが、実際に失踪した冒険者たちがいるのは事実です。一度タルテシュに戻り、準備を整えてからユーリとともに再調査に向かう予定でしたが……深層までは準備不足で確認できてないのです。それより前にレドウが遺跡に入るということなので、注意してくださいね。間違いなく深層まで入ると思いますし」


 そこまで言って会計伝票を手に取ると、席を立った。


「私たちはこれからタルテシュに戻って再調査の準備を行います。ですのでこのへんで」

「レドウさんも気をつけてね~」


 ユーリもレドウに手を振りながら、ジラールと共にレストランを出て行った。


「……あの人危険だわ……」


 二人がいなくなったあと、シルフィがボソリと呟く。


「……?どこが危険なんだよ。ジラールは幼馴染だぞ」

「そっちじゃないわよ!」

「?」

「ここでジラール殿に南岸遺跡の噂を聞けたことは僥倖でしたね。充分に注意して行きましょう。それから……リーデルサイド行きの次の便を取っておきました」

 アイリスがにっこりと微笑んだ。


 レストランで少しゆったりしたあと、一行は乗り合い魔導車で森の中をリーデルサイドに向かったのだった。


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