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レドウの華麗なる冒険譚  作者: だる8
第二章 神器を求めて
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第23話 前日の出来事

 SIDE レドウ


 王都ウィンガルデについて二日目。


 レドウは一人で散策してみることにした。

 今夜にはまた南岸遺跡に向けて出発するのだ。となれば、せっかく遠出してきたこの街をほとんど見ずに出発することになる。

 本来冒険者であるレドウにとっては珍しいことでもなんでもないのだが、タルテシュに腰を落ち着けすぎたせいか、馴染みのない場所を拠点とするのは少し抵抗があった。


(今後の拠点になるなら、ちゃんと自分の足で歩いて把握しておかねぇとな)


 レドウが部屋を出ると短めの内廊下があり、廊下を進んでさらに扉を開けると階段のフロアがある。

 この階段を上るとアレクの執務室やシルフィの寝室がある。

 そちらへは行かず階段を下りると、1-2階が吹き抜けになっているエントランスフロアがあり、外へ出ることができる。


 扉を開け外に出ると城と中庭の境に大門がある。この大門は今は使われておらず、普段は横の通用口を使う。

 通用口を抜けるとやや広めの中庭があり、向かい合うように騎士団の宿舎と詰所が建っている。


 さらに抜けると扉のない門があり、外庭があり使用人の宿舎がある。その先が外門となりやっと敷地内から外に出ることができる。

 部屋から外門まで転移ゲートを作ってしまいたいくらい外に出るのが面倒くさい。


 特別区画の道を歩いている人はあまりいない。それはそうだろうと思う。

 そもそも区画内には王族とレドウのような関係者しか住んでおらず、都市区画から特別区画に入るには衛兵のいる門で検問を受ける必要があり、当然関係者立ち入り禁止である。


 レドウはアスタルテ家の家章を衛兵に見せ、特別区の外に出た。

 これが通過証の代わりをするらしい。


 自由に動けることを確認し、意気揚々と都市区画を歩き始めた。


(さて、ギルド王都支部……はどこかな。リズが言うには王都にも受付があるらしいが)


 適当にうろうろ歩いてれば見つかるだろう的な軽い気持ちで、まずは商業区画方面へと歩いていった。


……


 SIDE アイリス


 アイリスの一日は朝稽古から始まる。


 皆がまだ眠りから覚めない早朝に寝室を抜け出し、中庭へと向かう。

 そして騎士団の詰所の鍵を開け、そのまま団長室へ向かった。


 団長室といっても何か特別なものがあるわけでなく、会議卓とアイリスの稽古道具が置いてあるだけだ。通常よりウェイトのあるいつもの訓練用木剣とカイトシールドを取り出し、中庭へと戻った。


 まずは素振り。盾を構えた状態での素振りが延々と続く。重さのある剣と盾のためかなりきつそうだ。

 次に盾を動かしながらの突き。これも素振りの一種ではあるが、ただの素振りと比べればより実践的な動きだ。

 それが終わると今度は盾の素振り……これはかなり異質だろう。

 もちろんアイリスの得意技、シールドバッシュのための素振りだ。

 

 そこまでやって、木偶人形を相手の稽古が始まる。

 

 と言ってもただ木偶人形に打ち込むわけではない。

 縦一列にいろんな格好をさせた木偶を一列に並べ、剣を木偶人形の首に突き立てながら駆け抜けるというアイリス独自の訓練だった。


 最初は木偶の首に剣で突きたてながら駆け抜ける。

 今度は木偶を盾でバッシュしながら駆け抜ける。

 最後は木偶を剣とバッシュで打ちながら駆け抜ける。


 これをワンセットとして10セット行うのがアイリスの朝の日課だった。


「相変わらずの化け物っぷりですね。団長」


 珍しく今日は人がいた。昨日レドウの紹介の際に腹を壊しているとラウルから連絡があった、騎士団筆頭のリュートだ。


「あら、このくらい貴方も難しくはないでしょう?それよりお腹の調子は……大丈夫なのですか?」

「いえいえ。難しいかどうかではなく、10セットぶっ通しすることが普通じゃないと言ってるんですよ。あぁ、お腹は今日は平気です。なんだったんでしょうね」


 リュートが首を竦める。


「昨日は是非貴方に、レドウさんと剣を合わせてみて欲しかったのですが」

「あぁ、騎士団員の新団員さん……といっても魔法使いでしたね。どうやらラウルを一蹴したそうじゃないですか」

「ええ。まあ今のラウルではどうあってもレドウさん相手に勝ち目はないでしょう」

「天下のアイリス団長でも互角だったそうですね。……魔法使いを名乗る相手に情けない」


 ……アイリスはやや挑発的なリュートをじっと見つめる。


「とりあえず一度剣を交えてみるのが一番だと思いますよ。時期を見て……でしょうけど」

「団長は僕が負けるとでも?対人戦績だけ見れば、僕は団長に勝ち越ししているんですよ」

「それだけ自信がおありになるのでしたら、やはり一度戦ってみるべきでしょうね。少なくとも……」


 アイリスが自分の剣と盾を片付け始めた。


「レドウさんはまだ全く本気ではない気がします。そもそも本気を出すのは面倒くさいと思ってそうですけどね」

「ふ~ん。変わった人なんだな」


 リュートが腕を組んでやや思案する。


「木偶、このままでよいですか?貴方も使うのでしょう?」

「あれ?団長はもう終わりですか?せっかく僕が来たのに」

「このあと閣下とお話する予定になっておりまして……」

「あぁ、お呼び出しが掛かってるのか。それならしかたない。僕は団長と剣を合わせる機会があるかなと思って出てきただけなので、もう宿舎にもどりますよ。……あぁ、木偶は僕が片付けておくのでお気になさらず」

「ごめんなさいね。お願い致します」


 そういってアイリスは詰所の団長室に稽古用の荷物を置きにいった。

 このあと、昨晩の打ち合わせ結果をアレクに説明しにいく予定だ。


……


 SIDE シルフィ


 シルフィの朝は遅い。


 というか朝が苦手だ。

 できることなら昼頃まで布団の中で寝ていたいとも思っている。


 特に今夜は出発を控えている。

『夜眠くならないように朝遅くまで寝るのは大事な準備だ』と自分に言い訳をしながらもぞもぞとしている。


 そこへ、無常にもシルフィの眠りを妨げる声がかかる。


「お嬢様。朝食の準備が整いました。一階食堂までお越しくださいませ」


 ここで、シルフィのスキル『寝ているフリ』が発動する。完全無視だ。

 だが敵(使用人)も心得ている。

 声をかけたくらいでシルフィが起きてくるとは微塵も思っていない。

 次の瞬間、シルフィが頭から被っている布団は完全に剥ぎ取られた!


「ダメですよ。寝たフリは私には通用しません!」


 シルフィがそーっと薄目を開けると、そこには使用人長のルシーダの顔があった。


「ルシーダ!」

「ほら。やっぱり起きてましたね?」


 ルシーダの顔が悪魔のようにニヤリと歪む。※あくまでシルフィの個人的主観によるもので、ルシーダは普通に微笑んだだけです。


「本日は家庭教師の先生が見えられる日ですので、ご朝食のあと社会学と食事マナーのレッスン。それからご昼食のあとには魔法学と経理学の授業がございます。寝ている場合ではございません。さぁ行きましょう。お召し物替えは朝食の後で構いませんよ」

「やだ!まだ寝る!」


 全力でベッドにしがみつくシルフィを軽がると引き剥がし、ルシーダはシルフィを食堂に拉致していった。


「人攫い~!人でなし~!」


 シルフィの暴言が廊下に響き渡ったが、これは毎日のことであるため、城内に気にする人間は誰もいなかった。


……


 SIDE ジラール


 出現する魔物を次々と屠っていくユーリの様子を見て、ジラールはうんうんとうなずいていた。


「これは相当鍛えられていますね。少なくとも戦闘に関しては、私が教えることなどあまりなさそうです」

「いえ、とんでもないです。遺跡内での気配り、注意力、判断力、全てにおいて勉強になります」

「そうですか?それなら良いのですが」

「私などでは、お話に聞いているレドウ様の足元にも及ばないと思いますし」


 そういいつつ魔物と相対するユーリ。


「まあ、戦闘中心の彼と比較するのは、それはそれで筋違いだと思いますよ。それぞれ秀でたところを極めれば良いのです」

「わかりました!師匠」


 ユーリの戦闘技術は申し分ないレベルにいると考えたジラールは、彼女の育成計画について練り始めたのだった。


……


 SIDE レドウ2


「だぁぁ!冒険者ギルドの支部なんてどこにもねぇじゃねぇか!リズのやつ嘘ついてねぇか?」


 商業区画、一般都市区画(住居)、公的施設区画などを詳細に見て回ったが、タルテシュにあるような冒険者ギルドを見つけることができなかった。


 レドウは知らなかったのだ。


 ウィンガルデという都市の区画整理されている部分は、本当に中央のみであって『ウィンガルデ』と呼ばれている都市は、フューズに続く街道沿いの集落も全部ひっくるめて『ウィンガルデ』であるということを。


 ちなみに王都ウィンガルデにはタルテシュのような立派なギルド用の建物があるわけではなく、窓口だけの派出所のような受付が区画外の街道沿いに他の商店と軒を並べているのみであった。

 このことをレドウが知るのはしばらくあとのことである。


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