第22話 作戦会議~その2
「実はな、あれから知り合いのツテで少し調べてみたんだが、他にも例の鳥のレリーフを他でも見かけているそうだ」
「え、本当!」
「それは可能性高いですね」
「全部は覚えてないようなんだが、すぐにわかる有名なところが……ここだ」
レドウは地図の南、リーデル大河に面した河岸の村『リーデルサイド』の付近を指した。そしてとんとんと軽く地図を叩く。
「ここに初級~中級冒険者に最適で、多くの冒険者が毎日訪れているような有名な遺跡がある。とは言っても俺は行ったことないんだが」
「そこの入り口が?」
「あぁ、そうだ。扉に鳥のレリーフがあるそうだ。こいつな」
そう言って、ジラールにも見せた祖父のペンダントを取り出してみせた。
「確かに、北の遺跡で見たものと同じようですね。よく見ないとわからないですが」
「決まりね。そこに行きましょう!」
シルフィが既にやる気満々だ。
そこへアイリスが口を挟む。
「ちょっといいですか。……行くにあたって、行動の基準を決めておきましょう。これも事前に考えてみたのです」
アイリスは先ほどとは別の紙を出した。
- 行動基準 ~神器の探索について
※主に同行者、他の探索パーティがいる場合
1.祭壇への道(隠し扉?)を見つけても会話に出さず極力見ない。
2.魔石の収集を目的と見せ、何を探しているか悟らせない。
3.遺跡を出てから転移ゲートで戻り、探索を再開する。
4.万一、祭壇に至る道が知られていても、祭壇に《鍵》と疑わしいものをかざさない。
「こんなところでしょうか?」
「……難しいな。演技なんてできん」
「全然難しくないじゃん。無視すればいいだけでしょう?」
「さすがに気にしすぎじゃねぇか?」
レドウが大きく息をを吐く。
だが、アイリスは警戒の意思を崩さない。
「いえ、警戒すべきです。この件ではないかもしれませんが……既に何度か尾行の気配がありました。目的は不明ですがうちの暗部とともに警戒……そうだ、レドウさんを紹介しておきましょう。一旦円卓から離れてください」
レドウはアイリスに促されて、席を立った。
「ラピス。いるのでしょう。……姿は見せなくていいから」
「は。控えております」
アイリスの呼びかけに応じる静かな声がした。声の感じからは女性のようだ。
「こちらがレドウさん。今日からアスタルテの家族ですので、よろしくおねがいしますね」
「……心得ております」
「よろしくな」
「では戻りましょう」
二人は再び円卓につく。
「レドウさんが、衛兵に捕まったことを伝えてくれたのも彼女です」
「!?……顔も知らないのにか?」
「えぇ。とっても優秀ですよ。そして、同じように他家にも暗部がいます。どのくらいの腕でどのていどいるのかは不明ですが」
「わかった。気をつけよう」
「あとさ……」
シルフィが言いにくそうにしている。
「アイリスの行動基準と反対しちゃうかもだけど……レドウ、さっきのお祖父さんのペンダント、つけとかない?」
「ん?なんでだ」
「……今日選んだ服に似合うよ」
レドウは促されるままレリーフのペンダントをつけた。
「こうか?」
「どうかな?アイリス」
「大丈夫だと思います。人のつけているアクセサリーの模様なんて、見ているようでちゃんとは見てないものです。それにシルフィの言うようにとってもお似合いですよ」
……
時は数刻前。南岸遺跡。誰がつけたわけでもないが、現在ではそう呼ばれている。
(確かに……あまり気にしたことはなかったですが、良く似てますね)
ジラールだった。
しばらく訪れていなかったがレドウとの会話で話題に出たため、久しぶりに訪れていた。
既に観光地化しているこの土地だが、こうした低難易度の遺跡は初級者の指導に丁度いい。
もっとも観光地化している真の理由は南岸遺跡以外のファクターなのだが。
「お師匠様、どうされました?」
遺跡扉の前で突っ立っているジラールを呼ぶ声がする。
数日前に弟子入り志願をしてきたユーリという女性だ。
志願と言っても直接門戸を叩きにきたわけではなく、冒険者登録をした際にギルドに師匠の紹介を求めたようだ。
『登録は初回だけどぉ腕立ちそうだからぁジラールが丁度いいんじゃない?』
と、リズを経由して連絡があったのだ。
ジラールも最近は新しい弟子はとっていなかったが、たまたま少し手が空いた時期だったため、承諾したのである。そして、彼女の技量チェックを兼ねてこの地、南岸遺跡を訪れたのだった。
「いえ、なんでもないですよ。では入りましょうか。まずは貴女の現在の実力を教えてくださいね」
「了解です!頑張ります!」
二人は南岸遺跡の中に入っていった。
……
「行き先はいいとして、いつ行くんだ?もう明日には出発か?」
「もちろんよ!すぐに出発よ」
「シルフィ、そう簡単にはいかないのですよ」
アイリスが二人を眺める。
「ここからが大事です。私たち三人がまとまって外出するのは非常に目立ちます。前回のように早朝こっそり出かけるのにも限界があります」
「バラバラに出ればいいんじゃない?」
「いや、それもダメだな。他家の暗部がここを張ってるんだろ?こっそり外出してこっそり戻るには限界がある」
「転移で出るのはどうでしょうか?どこへ出るかは検討が必要ですが」
「わかった。じゃあこうしよう。タルテシュの俺の自宅に転移しよう」
「部屋汚いとか嫌よ」
「シルフィ、そんなこと言ってる場合じゃないでしょ」
「ずいぶんな言われようだが、汚くなりようがない。物がねぇ」
《マスター。お伝えしたいことがあります》
突然タクトの精が話しかけてきた。
(なんだ、どうした?)
《永続転移ゲート、1つ分の作成エネルギーのチャージが完了しております。なお不要になった場合は魔元素を回収し、再び1つ分のチャージをすることが可能です》
「よし、それでいくか」
「どうしたのですか?」
突然独り言を呟いたレドウにアイリスが尋ねる。
「1つ分の使い捨てじゃない転移ゲートの作成が可能だ。この部屋とタルテシュの俺の部屋をつなぐ」
「え、そんなことできるの?」
「魔法使いだから可能だ」
「……わかりました。但し、永続……ということは使い方に注意も必要ですね」
「というと?」
「恐らく……作成したら誰でも利用可能なゲートになるはずです。私たち以外に知る者がいてはいけません」
「なるほど」
レドウは考え込んだ。といってもいいアイデアなど浮かばない。
「とりあえず、今回タルテシュの自宅まで転移する案は採用だが、そこに出入り口を創りっぱなしにはしておけねぇってことだな」
「向こうの家ってどんなとこなのよ」
「冒険者向けの賃貸アパートだが」
シルフィが肩を落とす。
「そんなとこダメに決まってんじゃん」
「意外性という意味では虚をつくので良いですが、賃貸物件に重要なものを設置はできないですね」
「まぁ。永続ゲートに関しては、あとで考えよう。今回創るのはいつもの一回ものだ。とりあえず明日は出発の準備をして、夜にここから出発すっか。……アレク殿への報告はアイリスに任せていいか?」
「わかりました。この件については話しすぎないという閣下の意向も考慮して、バランスよく上手く私から話しておきます」
そして三人はレドウの部屋の円卓から解散した。明日夜の出発に向けて。




