第21話 作戦会議~その1
ダンッ!ダンッ!ドガッ!ガガン!バギッ!
激しい打撃音が聞こえてくる。何か規則的なリズムというわけでもない。
木製の何かを激しく殴打しているような音だ。
「どういうことだっ!あれはっ!」
激しく沸き起こる感情のまま、テーブル、本棚などの調度品に八つ当たりをしている男がいた。
何か長い棒のようなもので手当たりしだいの家具を打ちすえている。
そのたびに部屋の家具は壊れてゆく。
「許せん!許さんぞっ!」
殴打はさらに激しさを増す。
ここに彼以外の人間がいなくて幸いだ。居たら真っ先に八つ当たりの対象になっていることだろう。
……いや、正確には一人いた。影だ。
「荒れておりますな」
「ふぅ……ふぅ……あれはな、俺のもんだ。わかるな」
「ええ、存じております」
静寂が訪れる。
「ならば俺の望みは分かるだろう?」
「ですが、機は熟しておりませぬ。急いては仕損じます。ご苛立ちお察し致しますが、どうかここは私どもにお任せ頂きたく」
……
屋敷に戻ったレドウは、結局アイリスに怒られた。
『あれほどいじめないようにと念押ししたのに』との冷やかな笑顔が実に怖い。
『俺は関係ねぇんだぞ』というレドウの言い訳は当然のように一切通用しなかった。
なお騎士団のラウルから、
「これから全員の武器の手入れをやるんですが、兄さんのもやっときましょうか?」
というありがたい申し出があったので、背中の聖銀の大剣を渡してある。
明日には仕上がっていることだろう。
そしてその夜のこと。
3階に用意されたレドウの居室で今後の動きについて打合せをすることになった。
出席者はレドウ以外にシルフィとアイリス。アレクにも声を掛けたが断られた。
アレク曰く
「他家から秘匿しておきたいレドウ君の動きを、私が詳細に把握してしまうことで、逆に気取られる可能性がある。いずれ分かることかもしれないが、稼げる時間は稼ぐに越したことはない」
とのことだった。アイリスもその方が良いかもしれないとのことで三人での会議となった。
レドウは自分の部屋に入るなり、二つの魔法《防音空間》《入場制限空間》を創造し使用した。タクトの精の提案だ。
範囲は部屋の中央にある円卓の周辺2ルード。
座って会議する人間のみに適用される透明の空間だ。空間内外の境目は全くわからない。
部屋自体には入室制限をかけていないため仮に秘密の会議をしていても、知らない者からはただ雑談をしているように見えるだろう。
空間に入場していない人には、会話の音声が聞こえないという違和感はあるかもしれないが……。
レドウは部屋に入ってきた二人を円卓に誘導し、そこで初めて口を開いた。
「ここに座れるやつだけが、この会話に参加出来る魔法を創った。秘密にしたい情報は必ずこの円卓で座って話してくれ。ちなみに大声出しても、円卓から離れているやつには声は届かないから安心しろ」
「もうそんなことが出来るんですね」
「早速これからのことをここで決めなきゃね」
三人は円卓を囲んで座る。
「まずは現状整理をしておきたいのですが、レドウさんが北の遺跡……『闇の祭殿』でしたね。そこで手に入れた……正確には元々持っていたタクトが進化して【王者のタクト】という神器を手に入れました。そして【王者のタクト】から多くの知識を手に入れた。但し、その知識にはレドウさんが現在理解できないものがほとんどのため、どう説明して良いかわからない。ここまでは合ってますか?」
「そんなとこだ」
「では、分かっているところから紐解いてゆき、次にとるべき行動を決めていきましょう」
「うんうん!」
ここでアイリスが懐から何かを書き付けた一枚の紙を取り出す。
「そこで、私が知っている限りのことをまとめてみました。これは私がレドウさんから聞いた情報から想像して書いた部分もありますので、レドウさんが知っていることと違っていたら、訂正をお願いします」
- 神器についての考察 -
Ⅰ.事実:
①『闇の祭壇』に古いタクトをかざす⇒タクトが本来?の力を取り戻した。
②『闇の祭壇』で復活した『王者のタクト』は闇属性
③祭壇に向かう扉は仕掛けで開いた。
⇒ヒントはレドウさんのお祖父さまのペンダントと読める古代言語。
④過去、神器が復活したことはなく、これから復活する可能性がある。
⑤神器には着脱不能の魔晶石『輝石?』がついている。
Ⅱ.想定:
①力を失っている古いタクト『鍵』?を祭壇にかざすとタクトが復活する。
②属性は5つある
⇒神器は5つ『火、水、風、光、闇』存在する。
③祭殿も5つある
④神器を持つと特別な魔法が使えるようになる。
Ⅲ.疑問:
①『祭殿』はどこにあるのか?
②復活の元『鍵』となるタクトはどこに存在するのか?
③全部揃えると何がある?何ができる?
④誰でも使える?
「まずは、こんなところです。【王者のタクト】についても考察したのですが、『創造』するということが私には上手くイメージできませんでした。必要な時に必要な使い方をレドウさんがしてくれると信じて、目的・方針を最優先で決めたいと思います。レドウさん、この私のメモを見て何かありますか?」
「そうだな……まず」
レドウは紙を指差しながら話し始めた。
「まず、Ⅰ.⑤についてだが、ついている石は『聖魔晶』っていう『旧帝国の技術によって精錬された世界で5つのみ存在する石』だそうだ。そういう意味では、Ⅱ.②③は合ってそうだな。Ⅱ.④については、よくわからねぇ。【王者のタクト】が創造の力を持ってるから特別に見えるだけじゃねぇかな。Ⅲについては全くわからねぇ。ただ……」
「……ただ?」
「この【王者のタクト】に関しては、俺しか使えないようだ」
アイリスが考え込む。
「最初に手にしたものだけが使える……ということでしょうか」
「それはわからねぇな。これしか例がないしな」
といってレドウが【王者のタクト】を見せる。
「じゃあさ、『聖魔晶』ってなに?聞いたことないよ」
「ん~、俺もちゃんと知ってるわけじゃないが、以前アイリスの言っていた『輝石』ってので半分合ってる。でもほとんどの場合『輝石』っていうのは、1ランク下の『聖魔石』のことを言うようだな」
よくわからないという表情のシルフィ。
「今回はたまたまレドウさんが持っていたタクトが当たり……つまり『鍵』だった。というだけで、本来神器を手に入れるためには2つ探さないといけないものがあるということですね。一つは当然『祭壇』そしてもう一つが……」
「『鍵』のタクトってことだな」
アイリスが意を得たとうなずく。
「ねぇ……。一つ気になるんだけど」
「どうしました?シルフィ」
「二人ともタクトタクトって言ってるけど『鍵』って本当にタクトなのかな?」
シルフィが納得いかない表情だ。
「実際にタクトが変化したんだが」
「今回はそうだったけど……じゃあ聞くけど『闇の祭壇』で復活した『闇属性のタクト』の名前が何で『闇のタクト』じゃないのよ」
「?」
全く理解できない様子のレドウ。アイリスもやや図りかねているようだ。
「全部タクトなんだったら……私なら『火のタクト』『水のタクト』……みたいなネーミングにするわ。でも実際は【王者のタクト】なんでしょ?ほかのはタクトじゃないから、そういう名前をなんじゃないの?」
「一理あるかもしれないですが、なんとも言い切れませんね」
「シルフィの言ってる理由は、俺にはよく分からんが……タクトじゃない可能性を考えておけばいいってこったな?」
「……まぁ、今はそれでいいわ」
(タクトの精、実際はどうなんだ?)
《お答え出来ません。現在の知識解放レベルは1に限定されております。》
(やっぱ駄目か。そんな気はしてたが)
「次に行動の提案なんですが『鍵』がなんだか分からないのなら、先に『祭壇』を探しませんか?一度行ったことがあって、イメージできるなら転移ゲートでいつでも飛べますよね?」
「あぁ、できるだろうな」
「冒険にいこう!」
シルフィが嬉しそうだ。
「じゃあ、どこかの遺跡で『祭壇』を探ってみるか……そこで、俺から一つ提案がある」
そういって、レドウはリーデル地方が記載されている地図を広げた。
いよいよ今夜はセネガル戦ですね!
これから私もTVからですが応援したいと思います!頑張れ日本!




