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レドウの華麗なる冒険譚  作者: だる8
第二章 神器を求めて
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第16話 アスタルテ家

 リズから契約の話を聞いた翌日早朝、レドウは王都ウィンガルデに向かって発った。


 腰に【王者のタクト】を挿し、ジラールから買い取った聖銀(ミスリル)の大剣を背負い、ありったけの金貨をかき集めることくらいしか旅支度は出来なかった。

 とても年間契約のために旅立つような準備ではないが、もともとレドウの荷物なんてその程度しかないため、そんなに大変な準備ではなかった。

 心残りがあるとするなら、偽装用のタクトが準備出来なかったことと、聖銀(ミスリル)の大剣の手入れが出来なかったことくらいだ。

 まあどちらも王都であれば出来るだろうと楽観的だ。


 遺跡都市タルテシュから、王都ウィンガルデに行くためには、タルテシュの西街道から宿場町フューズを抜け、さらに西のアルカス山岳地帯まで向かうことになる。

 ノオム村に向かう時も山岳地帯を目指して進んだが、大きな違いは宿場町フューズから王都までの街道には住宅や店が必ず存在し、ややまばらな地域であっても人の気配があるということだ。要するに栄えている。

 定期便の数も比較にならず、夜間でも便があることが界隈の繁栄を物語っている。


 レドウは王都に向かうにあたって、一つ注意していることがあった。


 それは【王者のタクト】の暴走防止だ。


 詳しい仕組みをレドウは理解していないが、魔導車というものが、魔晶石の魔元素をエネルギーとして走っていることくらいは知っている。

 ということは、もしかするとその気になれば乗車している魔導車からすべての魔元素を吸収して走れなくすることが出来てしまうのではないか。ということだ。

 レドウは魔晶石のエネルギー残量といったような繊細なことは一切気にしない(モノタクトの性能から気にすることも出来なかった)のだが、万が一にも部屋で実験したような吸収力を、移動中に発揮してしまうわけにはいかない。ということで、今回ばかりはやや緊張気味で乗車していた。


《マスターが吸収しないと指示している以上、問題はありません。》


 と、タクトの精は言っているが、自分の制御力にまだ自信がないのだ。


 結局一人旅にも関わらず、宿場町フューズでオピタルの時のようにハメを外すこともなく、王都に着くまで(レドウの勝手な)緊張感につつまれた旅程となったのだった。


……


 宿に止まらずに夜行魔導車を利用したため、レドウの乗った魔導車が王都ウィンガルデに到着したのは、午前中の早い時間帯であった。

 契約開始より一日早い到着だが、契約内容も良くわからない今回に関しては、ちょっと早いくらいでいいだろうとレドウは考えていた。


 王都ウィンガルデは当然ながら、ヴィスタリア連合王国の首都であり、最大の都市である。

 奥の山の上にはヴィスタ聖教大神殿があり、都市からは参道でつながっている。


 また南側の大門から見て山岳地帯側には王宮があり、その手前には特別区画という王族の居住区画がある。今回レドウに声を掛けたアスタルテ家を含め、八輝章家8家の主邸宅はその特別区画に存在する。

 一般の都市区画や商業区画と特別区画との間には城門があり、衛兵が常時警護しており王宮でのセレモニーでもなければ、貴族も含めた一般人は入場できない区画となっている。


 ちなみに八輝章家以外のいわゆる貴族たちは、王宮の反対側にある議会場や裁判所等の政治施設の周りに居を構え、政治を行っている。

 こうしたことからヴィスタリア連合王国における八輝章家がいかに特権階級であるかが伺える。


 なお、レドウがウィンガルデを訪れるのは初めてだ。


 そもそも王都ウィンガルデという都市はタルテシュに住む冒険者たちとって通常関わることのない都市だ。敢えて関わりがあるとしたら、貴族からの依頼があった場合と財を成した冒険者が高級装備品の買い付けに来る程度である。

 乗り合い魔導車は都市一般区画の入り口までしか送り届けてくれないため、レドウは降ろされた都市の入り口で突っ立っていた。


「さて、どうすっかな。街がどうなってるかもわからん。うろうろしてりゃなんとかなるか?」


 冒険者然としたレドウの風貌は、洗練された王都の雰囲気と明らかにマッチしていない。

 レドウとすれ違う人は皆なにごとかとレドウを振り返る有様だ。


「うむ。俺は人気者のようだな。みんな俺を振りかえって見ていく」


 圧倒的な勘違いである。

 王都においてレドウは明らかに不審者であった。

 そして街の一般区画から商業区画に差し掛かる頃、レドウは衛兵に完全に取り囲まれていた。


「おい、そこのお前。王都に何の用だ。狼藉でも働きにきたか!」

「周りの市民がお前に恐れを抱いているのがわからんか。もっとまともな格好をせんか」


 完全に歩みを止められたレドウ。ここでやっと気づく。


「あん?なんでお前ら俺の道をふさぐんだ。初めてくる街なんだ。観光くらいさせろよ」


 ……いや、気づいているかは微妙なところだが、状況がおかしいことには気づいたようだ。


「貴様のような怪しい奴をうろうろさせるわけにはいかんだろう。ひっ捕らえて詰所まで連れてけ」

「は!」


 周囲を囲みながら二人の衛兵がレドウの両腕を掴む。


「確保です!」

「おい、何しやがる」

「よし連れてけ!」


 衛兵長らしき男が号令を下した。

 腕を抱えた二人の衛兵が号令に従ってレドウを連れて行こうとするが・・・動かなかった。


「何をしている。さっさと連れてこんか!」

「衛兵長!こいつビクともしません」

「何だと!そこの怪しいやつ!おとなしくついてこんか!」

「お前ら・・・非力だな?俺を力づくで連れて行こうとしたのはわかったが・・・リズの方がよっぽど強えぇぞ」

「いいから来るんだ!」


 結局、レドウは周りを取り囲んでいた衛兵4人によって詰所まで連行されたのだった。


……


「で、いい加減本当のことを言わねぇか!」


 衛兵長が詰所のテーブルをドンと叩く。


「だからよ、本当のことしか言ってねぇって。俺はタルテシュの冒険者ギルドに所属する冒険者でレドウってもんだ。アスタルテ家ってとこから依頼があってはるばる王都まで来た。だが、初めて来たんで道もわからねぇ。仕方なくうろうろしてたらお前らが集まってきた。ただそれだけだ。どこに嘘があるってんだ」

「どうせならもっとマシな嘘をつけ。恐れ多くも八輝章家が、貴様のような冒険者風情を雇うわけがないだろう。ん?」

「んなこと知るかよ。呼ばれたから来ただけだ。確認してみろよ」

「確認するまでもない。本当のことを言う気になるまでそこで反省してろ」


 レドウを詰所に拘束したまま、衛兵長は席を立ってどこかに行ってしまった。


「……はぁ。どうしたもんかな。こんな拘束すぐ解いてここから移動できるんだが」


 席に繋がれたままのレドウは深いため息を一つついた。


……


「ねぇ、レドウ明日には来るんだよね」

「契約上はそのはずです。ですけど、レドウさんのことですから……遅れてくるかもですね」


 アイリスは苦笑する。と、そこへ一人の気配が現れる。


「騎士団長殿、お伝えしたいことが」


 姿は見えないが、アスタルテ家お抱えの暗部の声だ。


「なんでしょうか」

「商業区画の方がやや騒然としておりましたので確認しておりましたところ、どうやら一人の冒険者風の男が衛兵師団に拘束されたようです。現在、北東区画詰所にて担当の衛兵長による尋問が行われているようですが、その男当家からの依頼で来たと訴えているようです。心当たりはございますでしょうか」


 シルフィがにかっと笑う。


「もう来てたね」

「早速トラブルですか……わかりました。私が出ます。その方が話が早いでしょう」

「では私はこれで」


 暗部の気配が消える。


「トラブルが大きくならないうちに迎えにいってきますね」


……


 席に繋がれたままのレドウ。

 暴れるのも面倒くさい。という理由でおとなしくしていた。

 このまま事態が好転するとも思えなかったが、衛兵長がギャンギャン目の前でわめくのもうざったかった。


 突然、詰所の入り口付近が慌しくなった。

 レドウの目の前でうたた寝をしていた衛兵長が飛び起きる。


「何事だ!騒々しい!」

「は!衛兵長に来客でございます」

「応接に通せ。すぐに向かう」

「は、それがこちらに直接いらっしゃるとのことで」

「ん?来客はどちらさまだ?」

「それが……アスタルテ家直属の騎士団長殿でございます」

「なんだって?!」


 衛兵長が目を丸くしたとき、取調室のドアが開いた。


「お邪魔しますね」

「はっ!ははっ!これは騎士団長殿。こんなむさ苦しいところおいで頂きまして誠に申し訳ありません」

「いいえ。お勤めご苦労様です」

「はっ!もったいなきお言葉。して、ご用件は?」

「なんだよ。置いてきぼりにすんなよ。俺はまだここでお前の尋問を受けてんだぞ。俺が先だ。要件は後にしてもらえよ」


 背後を見られないレドウは衛兵長の様子を見て不機嫌になった。

 そしてレドウを無視しながら、なぜか揉み手をしながらご機嫌を伺う衛兵長。

 そんな様子を見てクスッと笑う騎士団長。


「要件はですね、こちらに拘束されていらっしゃるレドウさまは当家の客人です。申し訳ありませんが拘束を解いて身柄の解放をお願い出来ないでしょうか」

「えぇ?そうだったのですか?これは大変失礼致しました。すぐに解放いたします。……お前、そうならそうと最初から何故言わんのだ」

「だから……最初に言っただろうが。お前が信じなかっただけだ」

「くっ」


 変わり身の早い衛兵長にレドウが止めの発言をする。


 衛兵長が拘束を解くとレドウは立ち上がって大きく伸びをした。


「ま、この程度の拘束具じゃすぐに抜け出せるんだけどな。誰だか知らねぇが……って、何だアイリスかよ。ん?騎士団長?」

「レドウさん。お久しぶりです。アスタルテ家直属騎士団長のアイリス=カルーナと申します」

「貴様、呼び捨てとは無礼だぞ!」


 衛兵長が息巻くがレドウは当然気にしない。


「では、いきましょう。衛兵長殿失礼いたします」

「じゃあな。もうこないけどな」


 レドウはアイリスを連れて悠然と詰め所をあとにした。


「到着するなりトラブルに巻き込まれているあたり、レドウさんらしいですが……暴れなくて正解です」

「ん。まあいろいろありそうだからな。明日まで拘束されてたらさっさと脱出するつもりだったが」

「すぐに迎えにこれて本当に良かったです。では、まずは屋敷に向かいましょう。案内しますね」

「あぁ、よろしく頼む」



サッカー日本代表、初戦勝利!おめでとうございます!

結構ハラハラする試合内容でしたが、思わず食い入るように見てしまいました。

投稿遅れましてゴメンナサイ。

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