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レドウの華麗なる冒険譚  作者: だる8
第二章 神器を求めて
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第15話 八輝章家

「レドウぅ~!」


 ミライド亭にいつもの緩い声が響く。

 声の主は迷うことなく目的の席にたどり着き、その向かいに座った。


「なんだリズ。朝っぱらから騒々しいな」

「大ニュースよぉ!レドウに年間契約の依頼がきたのぅ」

「あん?年間契約だ?ま、まさか一年経たないと評価も報酬ももらえないんじゃないだろうな?」


 レドウの反応にリズが冷やかな視線を送る。


「レドウ大丈夫ぅ?評価と報酬は最長7日よぅ。登録時に説明を受けてるでしょぉ?」

「……んな昔のことは忘れた。まあちゃんと報酬くれるんなら何でもいい」


 レドウは興味を無くしたようにエールをあおり、あっちいけというように手を振る。


「まぁだ、話は終わってないのよぉ。レドウにとってあんまりいい話だったからぁ、私の一存で依頼請けといたからねぇ」


 さらっとリズから爆弾発言である。


「ぶっ!勝手に契約するんじゃねぇよ。どんな話かも聞いてないだろが」

「じゃあ、話聞くぅ?」

「わかったわかった。じゃあ聞いてやるから、話せよ」

「おっけぇ」


 リズは立ち上がり、レドウの左腕をむんずと掴むと力任せに引っ張った。


「おい、またこのパターンかよ!俺はエール飲んで……ってか、ここで話しすりゃいいだろうが。ひっぱんな!」

「詳細はぁギルドでぇお話しますぅ」


 レドウの抗議を完全無視してリズはギルドに引っ張ろうとする。


「痛え、痛えって。ほんとどっからこんな力が。行くって行くから……」


 リズに引きずられていくレドウを、マスターはハンカチを振りながら見送っていた。


……


 レドウがリズに連れて行かれたのは前回アイリスとシルフィと面会した個室応接だった。


「なんだ、またここか?でも誰もいないようだが?」

「誰もいないよぉ。私が説明するだけだしぃ」

「じゃあさっきの酒場で良かったんじゃねぇか」

「そうもいかないのよねぇ」


 と、リズは依頼書を広げる。


「今回の依頼内容はぁ、依頼者の指定でぇ、本人とギルドスタッフ以外には秘匿情報扱いっていう条件なのよぉ」

「……じゃあそもそも酒場で話を切り出すなよ」


 レドウが悪態をつく。


「あの時間ならぁ、どうせマスタァとレドウしかいないしぃ。こっちにぃ連れてくるきっかけにはちょうどいいでしょぉ」


 雑談をしながらリズはテキパキと依頼書と依頼条件の資料を用意している。

 話し方こそ緊張感はないが、ギルドを取り仕切る優秀なスタッフだ。


「まずぅ、依頼者だけどぉ、なんと!あの八輝章家の一つ、アスタルテ家よぉ」

「……しらねぇ」

「レドウ。やっぱりバカぁ?」

「知らねぇもんは知らねぇんだ」

「じゃぁ、一般常識から説明だねぇ」


 話はヴィスタリア連合王国の建国神話にさかのぼる。

 

 一千余年の昔、山岳地帯の小国であったヴィスタ聖教国。神に祈りを捧げる慎ましやかなその土地に、あるとき国の存亡をかける未曾有の危機が迫った。


 隣国の大帝国の侵攻である。

 

 大帝国の目的は山脈を越えた遥か先、パルロカ大陸の西の地の侵略であったが、侵攻の中継点に当たるヴィスタ聖教国は侵攻の為に帝国に物資を搾取され、国民の生活は困窮を極めていた。

 そんな折、神託を受けた八人の英雄がヴィスタ聖教国に現れる。

 大帝国の一方的な侵略行為を許すわけにはいかないと、八人の英雄は山岳地帯の入口に砦を築き、大帝国との徹底抗戦を開始した。

 この地の利と神の加護を受けた聖戦は約100年にも渡って続いた。英雄たちも三世代に渡って戦い続け、ついには大帝国を打ち倒したのだった。

 聖戦でヴィスタ聖教国を守った八家は滅ぼした大帝国の領土を併合、ヴィスタリア王国を建国する際に国教をヴィスタ聖教と定めた。その後周辺小国を併合し、現在のヴィスタリア連合王国の礎を築いたのだった。

 なお戦の舞台となった砦は聖地として現在の王都ウィンガルデとなったのである。

 そして建国の英雄、八家の末裔たちが「八輝章家」として、現在もヴィスタリア連合王国を統治している


「でぇ、そのうちの一つがぁ、今回依頼してきた第八位アスタルテ家ってわけよぉ。って寝んなボケ!」


 リズの鋭い手刀がレドウの脳天を直撃する。


「ぐぁっ!バカ。本気で殴るやつがあるか!」

「真剣に教えてあげてるのにぃ、寝る方が悪いぃっしょぉ」

「知らねぇのか?世の中の常識では、つまんねぇ話は寝てもいんだぞ」

「言うに事欠いてぇ、このリズさんの話がつまんないだとぉ」


 ボグッ!


 リズの華麗な回し蹴りがレドウの顔面にクリーンヒットした。

 レドウは直撃を食らって卒倒する。


「少しは寝て反省するとぉいいのよぉ。あ、ダメだぁ。寝てたらリズの仕事がぁ終わんないじゃなぃ」


 リズは立て続けの攻撃を食らって満身創痍のレドウを無慈悲にも叩き起こした。


「おめぇ……もっと人間的な扱いをしろよ……」

「はいはぁい。ではぁ、契約の説明を続けますよぉ」


 レドウのぼやきは完全に無視だ。


「気をとりなおしてぇ、契約は一年間になりまぁす。といってもぉ、七日に一度評定が入りましてぇ、査定ポイントが加算されますぅ。ギルドは現契約料金設定を前金で一年間分頂いてますがぁ、途中で評価レベルが上がった場合にはぁ、契約期間終了時にぃ、差額を調整金として依頼者よりお支払い頂く流れですぅ。でもぉ、レドウにはちゃんと実績レベルが上がった段階でぇ、支払額が上がるのでぇご心配なくぅ……というですぅ」


 とにかく必要なことだけ話してしまおうというリズの言葉である。

 レドウは内容の半分も理解していないが、主に依頼の条件ばかりであることは分かった。


「へぇ、それで内容は?」

「依頼内容の詳細はぁ、現地で説明するとのことですのでぇ、説明はぁ以上ですぅ」

「おい!結局なんもわからんのと同じじゃねぇか!そんなん勝手に契約したんかよ!」


 レドウがかみついたが、リズは余裕の表情だ。


「リズが思うにぃ、八輝章家から名指しでぇレドウに依頼が来るなんてぇ、普通ないですよぉ。となるとぉ、こないだレドウを雇った人たちがぁ、アスタルテ家の関係者だったってぇ、考えるのが自然なのでぇ、問題ないと思って返事しときましたぁ」

「違ったらどうすんだよ」

「そんときはぁ……まぁ頑張ってぇ」


 リズがにっこりと微笑む。一般的には可愛らしい笑顔なのかもしれないが、レドウには悪魔のように見えている。


「リズ、まじふざけんな」

「大丈夫よぉ。私の勘が問題ないってぇ言ってるしぃ」


 根拠のない自信で自慢げなリズを見て、レドウはため息を吐いた。


「で?そのアスタなんとかって貴族んとこには、いつ行きゃいいんだ。もう行くしかねぇんだろ?」

「正確にはぁ貴族じゃなくてぇ、王族よぉ。王位継承権は第八位の最下位だけどねぇ」

「貴族でも王族でもなんでもいい、いつなんだ」


 それを聞かないとなんも始まらなんだろと、疑いの眼差しでリズを見る。


「ちょっとぉ待ってねぇ。……うん。契約開始は明後日なのでぇ、明日には王都ウィンガルデに向かって出発してねぇ!」

「ばっ!急すぎんだろうが!だからそういうことは事前に……」

「じゃあ、よろしくねぇ~」


 言いかけのレドウを尻目にリズは部屋を出て行った。


(はぁ、しかたねぇ。旅支度すっか。)


 リズを見送ったレドウはやれやれといった様子でギルドを立ち去った。



……



「おぃ!いるんだろ。出て来い」


 すっと。気配もなく影が現れる。


「お呼びでしょうか」


 ふぅ……とため息をつく音が聞こえる。


「お前なぁ、仕事が早いのは素晴らしいが、このタイミングで消せなんて言ってないぞ」

「ですが、私が確認する限り、彼は尾行に失敗しておりました。先方の護衛は優秀ですね」

「それは本当か?」

「えぇ。このまま続けさせるとこちらの足がついてしまうと考え、独断で申し訳なかったですが、始末いたしました」

「そうか。ならばご苦労だった」

「いいえ。とんでもございません。お役に立てて光栄です」


 やや沈黙が訪れる。


「ところで、依頼していた件はどうなった?」

「彼が尾行に失敗したおかげで、ガードが堅くなっております。もうしばらくお時間を頂きたく」

「仕方ないな」

「別の情報でございますが……もうご存知かもしれないですが」

「言ってみろ」


 と、ここで影は声をひそめ何事かを耳打ちした。


「なるほど。そういう可能性もありそうだな」

「仰せの通りにございます」

「わかった。引き続き情報収集せよ。下がれ」

「はっ!」


 影はいなくなった。


本日大阪にて大地震が発生いたしました。被災された方々のご心痛を察すると、胸が締め付けられる想いでございます。無力な私には直接お力になれる事はなかなかありませんが、せめて面白い文章を書くことで皆さまのお力になれたならと思います。

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