出発
少年は不思議に思っていた。まだ、名前を聞かれていないのだ。少年の住んでいた日本という国では最初に名前を聞くのが常識だった。いきなり殺されそうになったこともあり、名前を言いそびれたのもあるが異常であった。そんなことを考えていると4等兵と思われる兵士が呼びに来た。
「おい、王様がお呼びだ」
少年は手早く身を整えて兵士について行った。王様の前に着くと少年はまだ、この国の礼儀作法を知らないことに気がつき、どの様なポーズにするか迷っていた。
「礼儀など今は無しでいい、昨日の続きを話そう。イェルムヴァーレンが魔王に支配され世界の危機であることは説明したな?そこで各国の王が相談し合い、最高の魔王討伐学校を作った。そこで、そなたには戦い方を学んでもらい仲間を集め魔王を倒してほしい」
「わかりました。いつ頃出発し、どれぐらいで着くのですか?」
「学校に異世界から来た勇者候補と伝えたら、新年度がもうすぐ始まるので、一緒に適正試験をするからすぐに来てくれとのことだ」
「適正試験?学校に入れないこともあるってことですよね?」
「そんなことは心配しなくていい。とにかく行けばわかる。早くしないと試験そのものに間に合わなくなる」
王様はそう言うと部屋に呼びに来た4等兵らしき兵と1等兵らしき兵を呼び、少年の準備の手伝いと護衛を命じた。
「ここらから1日も歩けば着くだろう。食料は我々が持っていくので・・・そういえば、お前のなまえはなんと言うんだ?」
やっと聞かれた。少年は内心少し安心した。
「ナオトです」
「ナオトか、王様はうっかり者でな。大事なことを忘れることが多いのだ。不安になったかも知れぬが、そう言う理由だ」
ナオトは名前を聞かないうっかり者って・・・国を守ることができるのか?と考えてはいたが口にはしなかった。準備が出来たので、いざ出発の時になると王様の腹心の魔術師であるヴィオナンドが出て来た。
「これはわずかな魔力でも反応する魔札です。モンスターが出た時に使用してください」
ヴィオナンドから数枚の魔札を受け取るとナオトたちは魔王討伐学校に向かって歩き始めた。
周りに何もないところを歩いていると、一つの影が見えた。