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雷ジング  作者: 城井大輔
第1話 《逢着》
9/24

治療《ロゼリィア・エミリア》

1日、1話は更新できるようにします。



怪我を治療してくれるというので

私は〈カンナギリュート〉という少年について行くことにした。


最初は

失礼なことを言う奴だと思ったが…

多分…悪い奴ではない…と思う。


疑うべきなのかもしれないが、

人を救うのに理由はいらないとまで

言い放った奴だ。


『……もしものときは』


…考えたくないが、一応気は抜かないでおこう。


しばらくするとまぁまぁの大きさの村が見えた。


中央にちょっとした大きさの噴水があり、まばらに家が広がっている。


そしてその中でも目を引くのは

黒くて、横に広い建物だ。

なぜなら屋根の面積の半分ほどの大きさの看板が掲げられていたから。

『jose's.kitens』

……kitchenと書きたかったのだろうか。

まさかここの家じゃないよな。


「ついた…ここだよ。」

と例の家を指す、リュート。

…っく、ここだったのか

キョトンとするリュート

「はぁ…。」

助けてもらって申し訳ないが

ため息をついてしまった。

残念な気持ちを胸の奥に押し込める。


3段の階段を登り

樫の木のドアをリュートが押す。

店の中は意外にも綺麗だった。


テーブル席が16席、カウンターが8席

…習性なようなもので、隠れる場所を、探すために、店内をすぐに見回してしまう。


「ただいまー」

リュートがカウンターに向かって叫ぶ

すると中から野太い声が聞こえてきた。

「お、リュート帰ってきたのか?アメリアから聞いたぞ、大変なことになったな…それとおまえ!アメリアが怒ってたからあとで………」


のれんから、髭を蓄えた熊みたいな金髪オールバックの中年男性が現れた。


その熊のような大男は、私を見てポカンと口を開けている。


「お、おま……アメリアというものがありながら…」

わなわなと震えるジョゼさんとやら。

アメリア…?

まだ住人がいるのか??


ドタドタ!


階段を降りる音が激しく聞こえる


そして今度はのれんからら勢いよく、金髪でポニーテールの少女が現れた。

「リュート!!あんた私を置いてどこ行ってたのよ!!おかげで私があの荷車持ち帰るハメになったじゃないっ!」

リュートに不満をぶつけている

おそらく、この娘がアメリアだろう。

「あっ…ゴメン、アメリア。そういや忘れてた」

申し訳なさそうに片手を上げるリュート

「ゴメン、じゃないわよ!そもそもねぇリュートは昔から……」

不意にそのアメリアという娘と目があってしまった。

その瞬間、その娘の表情が固まった。

リュートは、バツが悪そうに頭をかいている

しばしの沈黙のあとアメリアさんが口を開いた

「…だれその娘…?」

「えと…その…コンニチワ。」

思わずカタコトになってしまった。

「あ、はい…コンニチワ。」

アメリアさんも片言になる。

「えと…ジョゼさん、アメリア

この娘はロゼリィアっていうんだけど、なんていうか…今怪我をしてて、助けて欲しいんだよ。」

リュートが私をの状況を説明してくれる。

というか、私はまだ自分の名前しか教えてない。

「ロゼリィア・エミリアです…。そのご迷惑だとは思いますが…宜しくお願いします。」

頭をさげる

「ん?怪我だと…?」

見せてみろと熊男ことジョゼさんが近づいてくる。

「ひどい、怪我してるじゃないか。こっちに来なさい。」

「あ、はい…。」

ジョゼさんは近くで見ると、本当に大きいと思った。

「アメリア、おまえは裏から救急箱を

リュート、店の開店は今日は一時間遅らせる、この娘の治療をしたいからな。」


「!…ありがとう、ジョゼさん!」

「すいません…本当にありがとうございます。」

「気にするな…君みたいな女の子が怪我してるのを放っておけるわけないだろう。」


…最初に、恥ずかしい店だと思ったのを後悔した。

なんて優しい人なんだと思った。

何度、お礼をいっても気が済まなかった。


治療はとても丁寧だった。

なんでも、ここで店を開く前は軍医だったらしい。

なるほど、あのガタイの良さも納得できる。

リュート曰く、医者をやったほうが確実に儲かるし、役立つだろう、と

むしろ料理するとことで村に病人が増えるとまで言われていた。

私は笑ったが、ジョゼさんはリュートを小突いた。


アメリアはというと、私が治療をしている間、スープを作りパンを焼いてくれた。

正直とてもお腹が減っていたので助かった。

スープは冷えていた体を温めてくれたし、パンにはバターが塗ってあり、それが食を進め、早々にお腹は膨れた。

アメリアは私よりもすこし年下らしい 。

まだ、若いのにこんな料理ができるなんてなんて立派なんだ。


ちなみにだが、この店にはたくさんのメニューがある。

その中で父親であるジョゼさんから、アメリアは一つだけ料理を作っていい許可を貰っている。

それは日替わりメニューらしいのだが…

村人の人はそのメニューしか頼まないらしい。


理由は、まぁ…うん。


なので実質アメリアがキッチン。

ジョゼさんが配膳らしい。


「ほいよ、治療終わったぜ。」

「…すいません。本当にありがとうございます。」

「なーに、いいってことよ。」

「その、お金は払わせてください…」

はぁ?と不思議な顔をされる。

「いやいや、嬢ちゃんみたいのから代金なんて貰えねぇよ。」

「しかし…」

そうはいきませんと、財布を探す。



財布を探そうとして、あることに気づいた。

『ない…!』

貴重品やら旅の道具やらが入っている、ポーチが無い!!

『そ、そういえば…』

さっき、リュートと戦っていた洞穴…

すぐにリュートを始末するつもりだったからあそこに置きっぱなしだ…。

「す、すいません。私ちょっと忘れ物をしてしまったので、外に出て来ます。」

「ん?忘れ物??どこに置いてきたんだ?」

「滝の側にある、洞穴です。」

おぉーあそこかぁ

と懐かしそうにする、

「まぁ、行かせんがな。」

え?

ど、どうして

ジョゼさんは私の脇腹を指差した。

「その傷、矢か?…まぁ、なんで矢で射られるような状況だったかは、敢えて、聞かないでおく。どうやら毒が塗ってあったらしい。」

な…

さーっと顔から血の気が引く。

「痺れ毒だが、しばらくは安静にしておいもらうぞ。これは元医者からの命令だ。」

「け、けど…。」

「だめだ。これはゆずれん。どうしてもっていうなら、リュートにでも頼むんだな。」

「……分かりました。けど、リュートには頼みません。怪我が治ってから自分で取りに行きます…。」

ここまでしてもらってリュートに頼るのは申し訳ない。

きけば、めったに人が訪れるような洞穴ではないので…まぁ大丈夫だろう。


ふと、あることを思い出した。

『そういえば……私あの時…』

滝の上での攻防を思い出す。


先ほど…矢傷のことを指摘されたが、あの時、矢が私を掠めてこの傷が出来たわけではない。

矢は確実に私に『刺さっていた』。


しかし私が、滝から落ち、目が覚めた時には矢は無くなっていた。

そう、『無くなって』いたのだ。


もちろん滝つぼに落ちた時に、無くなった可能性もありえなくはないが…


どうも腑に落ちない。


『リュートではない……はず……いったい何が…』


何が起きたのか…

私はこの時、知るよしもなかった。







読んでいただきありがとうございました

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