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雷ジング  作者: 城井大輔
第1話 《逢着》
8/24

自己紹介《カンナギ・リュート》

今風にすると

『気付いたら銀髪美少女が、馬乗りしていた件について』


何が起きてるんだよ…

俺がさっきまで戦ってたのは、この女の子だったのか?


「し、質問に応えろ!」


あ、そ、そうだった。俺今、割と殺されそうなんだった。


皇国って多分、ニーレン皇国のことだよな?


「いえ〜…あの〜…僕は皇国の人間ではないです………よ?」


皇国に追われてるのか?


「そ…そうか、なら問題はないな!」


…意外とあっさりと信じてくれんだな…。


「あ…いや、誤解が解けたなら、上から降りてくれない…ですか?」


「ん……あぁ!そ、そうだな!ほんとにすまない!」


どうやら本当に信じてくれたようだ。

銀髪の女の子はすぐに降りてくれた。


洞穴の中はさっきまでの、暗さが嘘のように今は明るく照らされていた。


起き上がって、身体についた砂を払う。


ふと…銀髪の女の子が跨っていた部分がほんのりと濡れているのが分かった。


『え……これってまさか…』


嫌な予感がした。


まさか、こいつ俺の上でおしっ………


「あのっ!!」


「はっ!はい!なんでしょう!?」


「そ、その…さっきは、大変失礼なことをした…謝って許されることではないかもしれないが…本当に申し訳ない。」


あぁ…やっぱり、こいつ、俺の上で…


いや、でもこうして謝ってくれてることだし…


「まぁ…その…気にすんなって…そういうこともあるかもしんないし…」


洗えば済む話だしな。


「いや、そういうことでは済まされないだろう!私は、君の命を奪いかけたんだぞ⁉︎」


この通りだ、とあたまを下げる。


「え…あぁ!そっちのことか!いやいやそれはこちらこそだよ!俺だってその…女の子の君に手をあげてしまったし、全然気にしてないよ!」


「そんな…なんて心の広い………ん?それよりそっちのこととは、なんのことだ?」


頭を上げた銀髪の女の子が尋ねてくる


「いや…俺はその…こっちの…」

そういって右手でお腹の辺りを指差す。


最初は何を言ってるかわからないといった表情だったが…

みるみるうちに女の子の顔が紅く染まっていく。


ま、まずい!女の子に恥をかかせてしまった

フォローしなくては!


「いや!俺は気にしてないから!大丈夫だよ!!洗えば済む話だし!!!」


「そそ、そそそんな訳ないだろう!!!」


バチーン


頬をたたく音が洞窟に木霊した。


『ぶべらっ…!』


「あっ…し、しまった!」


女の子が駆け寄ってくる


「あ、いやそのすまない…また失礼なことを…」


申し訳なさそうに言い、手を差し伸べる。

今の一撃、今日一番の威力だった。

俺はその手を掴んで起き上がる


「い、いや…こちらこそ変なこといってごめん…」


「…ちなみに言っておくが……私は漏らしてないからな…。」


まだ若干頬が紅く、口をすぼめながら言ってきた。


確かによく見ると、女の子の服はところどころ湿っているように見える。


水浴びでもしたのか?


ん……てかこの子よく見たら。


女の子は白いシャツに赤と黒のチェックのスカート、そしてその下に黒いハーフタイツを履いてるのだが

脇腹のところが赤くなっていた。


「おい…何ジロジロ見てるんだ…。」


「え…いや…その…もしかしてケガ…してるのか?」


「ん…あぁこれのことか?」


それ以外にも所々怪我をしているようだった。


「大したことないさ…もう血は止まってる筈だしな。」


んー平気そうだな。

けど…


「大丈夫か?」


「ん…気遣いはありがたいが本当に大丈夫だぞ。」


「ちょっと見せてくれ!」


「は⁉︎い、いや、ちょっと待て」


女の子の白シャツの右脇腹の部分だけ少しめくる。


「お、おい!おまえ!」


聞こえないフリ…聞こえないフリっと…。


止血の仕方が不十分だな…

少しづつだが血が漏れている。


「お、おい!早く離れろ!」


「え…あ!ゴメン!…その提案なんだけど…この先に村があって…そこで1回その怪我を見てもらう気はないか?」


「は…?」


女の子は驚いた表情をする。


「血、完全には止まってないし…俺の知り合いに腕の良い医者がいるからそこで…。」


「…気持ちは、ありがたい…だが遠慮させていただく。」


まぁ、そりゃ簡単には信じてくれないよな。

うーんどうしたら…。


「それに…お前はなんかヤラシそうだし…。」


「…え、あぁいや!さっきのは本当ゴメンて…。」


「…まぁ、私も君のことを襲ってしまったしおあいこにしておこう。」


うっ

と少しだけ女の子は呻き声をあげる

やはり痛そうだった。


「なぁ、本当に大丈夫かよ。遠慮なんかしなくていいんだぞ?」


「ダメなのだ…私がもし、君の村に行ってしまったら…。」


さっきから見てて思ったが、この子絶対何か事情を抱えてる。


それも人に言えないような

滝の一件にも関係してそうだし…。


「なんか…事情があるのか?」


「すまない…何も言えないんだ…。」


ぬぅ…

これじゃあ絶対に来てくれなさそうだな。


「迷惑をかけてしまったな…私なら大丈夫だ。」


ぐ、ここで引き下がる訳には…いかない…。


アレだ

カナンにも顔向け出来ない

女の子には優しくしなさいって言われたしな。

けど…しつこいのも…!


ん…あ…!

そうだ…!


「……追われてるのか?」


「!…何故それを…?」


あぁ…やっぱりそうなのか。

てか、自分で墓穴掘っちゃったよ。この子。


「やっぱり…。」


「な!き、貴様私をはめたのか?」


「いや、ゴメンて!ナイフこっちに向けないで。」


「それで…何がしたいんだ?貴様は?」


ナイフは下げてくれたが、女の子は怒ったような声で問い詰めてくる。

先ほどの慌てていた顔からは想像できないほどの怒気だ。


「…追われてるなら尚更だよ。君を放っておけない。」


「……信じられないな。貴様にメリットはないだろう。」


「メリットとかデメリットとかそういうことじゃない。今この状況で、君を放っておいてここを去るなんて俺には出来ないよ。」


「……。」


「君だって俺と同じ立場だったら、怪我してる人を助けようとするだろ?」


「………。」


女の子は黙ったままだ。

何かを考えているのだろうか?


「…なぜ、私を助ける?」


なぜって…そんなの…


「いや…なぜって言われたらすぐには答えられない…。

けど、そういうもんじゃないか?

誰かを助けるときって。

自分がそいつを救いたいって気持ち以外必要か?

俺はただ、君を助けたいって思っただけだ。」


「私は、君を殺してしまうとこだったんだぞ?」


「いや…まぁ…それとこれは話が別だよ。」



「…私に君を信じろと?」


「…あぁ。」


彼女は俺の瞳をジッと覗き込んでくる。

見れば見るほど綺麗な眼だ。

俺の中の何かを見透かすように只々ジッと真っ直ぐにこちらを見ていた。


…正直、美人過ぎて直視できないので、ずっと目が合ってるのは辛かった。


「…分かった。」


え?


「君がそこまで言うなら…今は君を信じるよ…君の言う通り、こんな止血じゃまたいつ倒れるか分からないしな…。」


「ほ、ほんとか…!ありがとう!」


「いや、礼を言うのは私の方だろう…こちらこそありがとう。」


よ、良かった…

こんなとこで見殺しにできないしな。


俺とその女の子は早速村を目指すことにした。

しばらく歩いて、洞穴の外にでると雲ひとつない青空が広がっていた。


先ほどよりもだいぶ暖かくなっている。


「おぉ…晴れたなぁ…。」

「……。」


う…黙りか…。


あの後から彼女はずっと、黙り込みいろいろ考えているように見受けられた。


それにしても…


外に出て改めて彼女の姿をみると、明らかに戦闘の後といった感じにボロボロだった。


それに、言うまでもないかもしれないが、彼女の横顔は本当に整っていて、明るい外ではそれが更に顕著にわかった。


「そういえば…自己紹介がまだだったな…私は、ロゼリィア。ロゼでいい…君はなんというんだ…?」


え…あぁ

横顔に見とれている場合じゃないな…。


ロゼリィアっていうのか…

やっぱこの辺の人じゃなさそうだな

…《大大陸》の出身かな?


「俺はカンナギ・リュウトだ。見ての通りだけど、ここの国の出身じゃない。」


「まーそではないかと、思っていた。明らかに《デカルト系》には見えないしな。

それにしても《カンナギ》…?珍しい名前だな、《リュート》という苗字も聞いたことがない。」


「あー、いや逆逆。よく間違えられるんだけど、俺はリュートが名前でカンナギが苗字なんだよ。」


「へぇ、珍しいな。出身はどこなんだ?」


「うーん多分知らないと思うぞ?極東の方の島国なんだけど…。」


「ふーん……そうなのか…それではリュートと呼ばせてもらうぞ。」


聞いてきた割に出身地については深く突っ込まないんだな…。


有り難いけど。


「リュート、まだ村には付いていないが、改めてお礼を言わせてくてれ。ありがとう。」


ニコッとその音が聞こえてくるじゃないかってほどのとびっきりの笑顔だった。


「…ん」


「さぁ!それではリュートの村に行ってみよう!」


あぶねぇ…


今の笑顔は本当にやばかった…


「リュート…?どうした??顔が真っ赤だぞ。」


「な、なんでもない!!」









読んでいただきありがとうございました。

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