断水 《カンナギ・リュート》
この話のなかで、主人公は常に全裸です。
日課のトレーニングを終えて、シャワー浴びてる最中、事件は起きた。
「ぐわぁあああ!」
つ、つめてぇえ!
シャワーが突然冷たくなったぞ…
しかも、ただ冷たいだけじゃない。
ほんと氷水のような、とんでも無い冷たさなのだ。
「ジョゼさん!!!シャワーの水にまたなんかイタズラしたの⁉︎」
先ほどの悲鳴を聞きつけたのか、この家の住人がやってくる
「あー?なんだリュート…朝っぱらからでけぇ声だしやがって…」
のそのそ気怠そうに熊のようなガタイのおっさんが顔を覗かせる。
立派に蓄えた顎髭をボリボリと掻いていた。
「なんだ?なんか起きたのか?」
「いや、なんだじゃないよ。シャワーの水が氷水みたいになってんだけど」
あーん?
と首をかしげながら、ジョゼさんがシャワーの温度を確かめに来た。
「ったく、大袈裟だな。確かにまだ春先だが、飛び上がるほど冷たくはないだろう。」
やれやれ、とジョゼさんは、躊躇いもなく、水に触れる。
「ぐぎゃあああ!」
またまた悲鳴が響いた。
今度は獣の咆哮のような悲鳴だった。
「な、なんだ!この冷たさは…てめぇ!リュート!!ドッキリか‼︎」
「いや、俺が実際に被害を受けてるのに俺な訳ないでしょ。」
「なにー?どうしたの?」
欠伸をしながら二階から、アメリアが寝間着姿のまま降りてきた。
見た目は本当にお父さんと似てないのに、お腹を出しながら降りてくる姿は
熊のようなジョゼさんを彷彿とさせる。
「いや、アメリアよ、聞いてくれ。シャワーの水が氷みたいに冷たくなっちまったんだよ。」
「フーン…。またお父さんがなんかしたの?」
そして娘にも疑われるジョゼさん。
「いや、そんなわけないだろう。お前まで酷いぞ」
「いや、ジョゼさんの普段の行いを見てたらね…」
俺はアメリア同調した。
「そんなに、冷たいなら私にも触らせてよ……」
アメリアは風呂場に入ろうとしたところで何かに気づいたようだった。
「リ、リュ、リュリュリュート!!!
あんた!は、はだかじゃない!す、少しは隠すとかしなさいよ!」
顔を真っ赤にしてアメリアが怒鳴り散らしてきた。
…俺が呼んだわけじゃないのになぁ…と思いつつ、一応女の子の前なので前を隠した。
「全く……ほんとにびっくりしたわよ…」
まだほんのりと赤い頬で、口を尖らせるアメリアは人差し指で、金色の髪の毛をクルクルしている。
「はっはっは!お前、昔は一緒に風呂入るくらいの仲だったろ!何を今更騒いどるんだ。」
「当たり前でしょ!!昔ってもう何年も前の話じゃない!私はもうすぐ13歳なのよ!」
「昔はリュートと結婚するって息巻いてたのなぁ…」
「ほんとにやめて!ほんっとに恥ずかしから!」
またまた顔を真っ赤にさせて怒る
正直、俺も恥ずかしいのでやめて欲しい。
「ちょ、リュートも黙ってないでよ!
ガチっぽくなるでしょ!」
「あ、いや…そうだな。ごめん。」
一応平謝りしとく。
後が怖いから。
プリプリと怒るアメリアは俺の背中に蹴りを一撃くれると、脱衣所後にし、リビングの方に消えっていった。
あらかた汗は流したので風呂場から出ることした。最後に顔を洗おうと蛇口捻る。
「…あれ?」.
蛇口を捻っても水が出なかった。
「なんだ、またなんかあったのか?」
ジョゼさんが身を乗り出してきいてくる。
一度蛇口を戻し、もう一度捻るが、それでも水は出てこなかった。
「うーん…断水でもしたのか?」
「かもね…念のために、あとで水を汲んでくるよ」
「おっ、そうか。悪いな、トレーニングの後なのに」
「いいよ。俺はただの居候だし。」
脱衣所で手早く着替えると、
裏口から外に出て、家の裏から手頃なバケツを持ってきて、荷車に載せる。
今日は晴れていたが、早朝のせいかまだ外は肌寒かった。
読んでいただきありがとうございました。