残滓
語呂の良さでタイトルは付けました。
いうほど、少年でもなければ少女でもないです。
異世界物が好きなんですけど転生じゃない普通のファンタジーが読みたくて
自分で書いてみることにしました。
応援よろしくお願いします。
これは記憶
一番怒った時の記憶。
決して消えない
怒りの記憶
確か、春だった
春のことだった。
日は当に沈みあたりはとても静かだっただろう。
ある場所を除いて。
夜だというのにそこは妙に明るかった。
それは俺が7年間、大切な人と一緒に過ごした場所。
その大切な場所は真っ赤な炎に包まれ
轟々と音を立てて燃えていた。
建物を支えきれなくなった柱はメキメキと悲鳴をあげている。
建物はボロボロで今にも崩れ落ちそうだった
炎の世界。
酸素は薄く、有毒な物質が空中を漂う
生き物の侵入を許さない
死の世界。
そんな死の世界で、声が鳴り響いていた
いや、声ではないかもしれない。
言葉にならない嗚咽のような叫び。
嗚咽は少年のものだった。
そして少年の前では、一人の女性が支柱を背にして事切れていた。
少年は。
俺は
膝を曲げて、彼女の胸元に顔を埋めるようにして叫んでいた。
俺を励ましてくれてた彼女は、もう二度と動くことはない。
鳶色の髪の毛はグズグズになり
黒く変色していた。
赤黒い血が額から顎にかけて流れている。
唇はひび割れていて、血が溢れていた。
青の中に薄い緑の入った眼。
その眼に、もう光は灯っていなかった。
青っぽい色のせいか、彼女の纏っている、袖のない服は血のせいで、暗い紫色に変色していた。
袖から覗いている腕は生傷でズタズタになっている。
そして彼女の肉の焦げる匂いが、彼女の死を深く実感させてくれていた。
彼女の最期の言葉を何度も何度も
心で繰り返した。
ー『誰も恨んではいけないよ…。』
彼女は俺に『恨むな』と伝えた
復讐はするなと
彼女は俺にそう言ったんだ…。
どうしていいか分からなかった。
このどうしようもない気持ちを。
自分の無力への怒り
世界の理不尽への怒り
それらをすべて否定しなくてはならなかった
彼女の言葉を守りたかった。
守ることでしか、もう彼女の存在を
感じれなかったから。
だからなのか
俺は怒りを哀しみとすり替えたのかもしれない
怒る代わりに赤子のようにわんわんと泣き続けることしか出来なかった。
読んでいただきありがとうございました。