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Dungeon Brave'S(ダンジョンブレイブズ)  作者: 北田啓悟
最強の勇者「アバン洞窟」
4/23

004 協力プレイ【2F】

【2F】


 まどろむ視界のなかホールを出ると、洞窟の2階にやってきた。振り向いて確認してみると、ホールは消滅している。一度階を進むと、前の階に戻ることはできないようだ。

 俺はマップを確認する。


「お。この部屋にはアイテムがあるようだな」


 マップに□のマークが表示されている。その場所を見てみると、一冊の本が落ちていた。

 アイリは言う。


「アレは魔導書ね。開くことで効果を発揮する消耗アイテムだわ」


「ほう、それは期待が持てそうだ。アイリ、取ってこい」


「はいっ! わかりました!」


 自分で取りに行ってもいいが、せっかくなのでアイリに命令してやることにした。俺についてくるのならそれくらいは役立ってもらわねば。

 アイリは小走りして、魔導書に近づいていく。

 カチリ。


「え!?」


 あと一歩で拾えそうというところで、アイリはなにかを踏んだ。

 アイリの足元に、岩の絵が描かれたパネルが表示される。

 そうして天井から、大きな岩が降ってきた。


「きゃあぁあああぁっ!?」


「……!? アイリ!」


 ドガガガガァンッ!

 手で頭を防いでいたアイリに岩が落ちると、轟音とともに真っ二つに割れた。その後岩の残骸は消滅する。

 アイリはうずくまって悲痛な声を上げる。


「いたーい! うう……落石のトラップを踏んじゃったわ」


 アイリのHPが一気に10も減ってしまった。

 とはいえ見た目ほどのダメージは負ってないようで、アイリは立ち上がり無事であることを俺に報せる。


「でも大丈夫よ! 冒険者はこの程度でへこたれないわ!」


「……最初から心配なんかしてないがな」


「あーーんっ! ひどーーいっ!!」


「ところでアイリ。今のはいったいなんだ?」


「こほん、今のはトラップね。ダンジョンには至るところに、踏むと作動する罠が仕掛けられているの。トラップは踏むまでどこにあるかわからない上に、様々なマイナス効果が発生するから気を付けないといけないわ」


「そうだったのか。1階でトラップを踏まなかった俺は運がよかったようだな」


 アイリは岩のパネルから降りて、その先にある魔導書をようやく拾った。


「シト様ー! 魔導書を拾ったわー!」


「おお。それはどんな効果だ?」


「えっとねー……」


『探知の魔導書を拾った!

 EFF:この階のトラップの位置がわかる。』


「って、遅いわよ!!」


 ばしん!

 せっかく拾った魔導書を思いっきり地面に叩きつけた。

 俺は言う。


「せっかくだから読んでおけ。まだこの部屋にトラップがあるかもしれない」


「そ、そうね。できればもう少し早くこれを使いたかったわ……」


 探知の魔導書を拾い直し、アイリはページを開いた。

 魔導書から光が発し、部屋全体を眩ませるほどに輝く。そうして光が輝き終えると、アイリの持っていた魔導書は塵となって消滅した。


「お? なんだ、俺の周りにもトラップがあったのか。使っておいて正解だったな」


 探知の魔導書の効果で、俺の周りにトラップが3つもあったことに気づいた。危ない危ない、自分で魔導書を取りに行っていれば確実に踏んでいるところだった。


「シ、シト様ったら強運の持ち主ね……! 冒険を教えているわたしの方がへとへとになってきたわ……!」


「フッ、どうやら俺は神に愛されてるらしいな。次の部屋に進むとしようか」


「あっ、待ってシト様ーーっ!」


 足元のトラップを避けつつ、俺は先導してアイリとともに通路を行く。

 部屋に出ると、■の表記がふたつ表示された。

 ゴブリンだ。ゴブリンが右と左から、1体ずつやってきた。


「グゥウウゥゥ……!」


「グイィイイイイィィ……!」


 俺はショートソードを構えつつ間合いを取る。


「モンスターが2体か……1対2はすこし分が悪いか?」


「もう、シト様!」


 後ろにいるアイリが、ぴょんっと俺の隣にジャンプした。


「わたしがいるじゃない! わたしだって冒険者なんだから、ゴブリンくらい倒せるわよ!」


「おっと、そうだったな。奴隷ならちゃんと役立ってもらわねば……だがアイリ、お前はなにも装備していないだろう。本当に大丈夫なのか?」


「装備はなくてもレベルは上がっているわ」


 アイリは腕に巻いてあるステータスを俺に見せつけた。


「前の階でシト様はレベル3まで上げたでしょ? 実はパーティの間でレベルは共有されるようになっているの!」


「! ということはアイリもレベル3になっているのか!」


「そのとおり! さあ、ふたりで力を合わせてモンスターを倒しましょ!」


 俺とアイリは、左右からやってくるゴブリンに向かって臨戦態勢を取った。

 ゴブリンたちは手に持っている棍棒を構えながら近づいてくる。


「グウォオオォォ……!」


「グゥヒィィウウゥゥ……!」


 不気味なうめき声を上げつつじりじりと接近してくる。

 十分まで距離が詰められたその瞬間――


「はぁあぁッ!」


「てやぁぁッ!」


 俺はショートソードを振りかぶる。アイリはハイキックをする。


「「グウゥォオオオオォッ!!」」


 攻撃を喰らった2体のゴブリンは叫び声をあげながら爆発四散した。よし、一撃で倒すことができたぞ。レベルを上げておいて正解だったようだ。

 隣にいるアイリがくるりとこちらに振り返り、そうして飛び込むように抱きついてきた。


「きゃぁああぁぁぁぁーーーーっ!! やったわシト様っ! 初めての共同作業、大成功よ!!」


「フン。あれくらい倒してもらわないと話にならない」


 さらにレベルアップのファンファーレが鳴った。

 俺とアイリのレベルは4になった。


『シト

 LV:4

 HP:26/26

 ST:88/100

 XP:61/100

 ATK:2[E]ショートソード

 DEF:0

 STR:11

 POW:8/8』


『アイリ

 LV:4

 HP:19/26

 ST:88/100

 XP:61/100

 ATK:0

 DEF:0

 STR:11

 POW:8/8』


 それから俺たちはふたりでモンスターを倒しつつ、この階の部屋をすべて探索し終えた。

 ホールのある部屋に俺たちはやってくる。


「さあシト様。次の階がこのダンジョンの最奥地よ。準備はいい?」


「この先にボスモンスターがいるわけか……フッ、どんなやつが俺を楽しませてくれるのやら」


「ふふっ、シト様なら絶対に大丈夫ね! だってここまでノーダメージだもの! シト様に怖いものなんてなにもないわ!」


「フン、ようやく俺のことがわかってきたみたいだな」


 アイリの言うとおりだ。この俺に恐れるものなんてなにもない。

 むしろボスモンスター相手も楽勝で終わるんじゃないかと心配しているくらいだ。俺のような圧倒的強さを持つ者にとって、イージーなゲームほどつまらないものはないからな。


「この俺を退屈させてくれるなよ? フフフ……」


 俺とアイリはホールに入っていった。ボスモンスターが待ち構える最奥地へ。

次回の更新は2/1の午前12時です。

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