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Dungeon Brave'S(ダンジョンブレイブズ)  作者: 北田啓悟
復活の希望「カース山脈」
22/23

022 更に闘う者達①【15F】

「誰かが犠牲になるしかない……」


 隊長は苦々しそうに言い放った。

 彼の一言を受け、その場にいるものたちはざわめき始める。


「犠牲になるって……いったい誰が?」


「誰でもいいというわけではない。魔王軍のあの猛攻を受けきれる者でなければ……」


「無理だ! 隊長でさえ返り討ちにあったではないか! 私たちのうち誰があの軍隊に特攻できるというのだ!」


 冒険者連合軍は窮地に立たされていた。こちらの戦士の数は半壊しているのに対し、魔王軍のほうは未だ衰えが見えない。この世界が破滅させられるのはもはや時間の問題だろう。

 隊長は拳をグッと握り、苦々しくつぶやく。


「私だってわかっている……! だが他に方法など……」


 隊長は目を瞑った。不可能な作戦であることなど承知で言ったのだろう。魔王軍に敗北することを認めたくないがために。

 でもそれが唯一の希望ならば、


「……行きます」


 手を挙げて言い放った。


「わたしが、特攻します」


「「!?」」


 わたしがそう言うと、その場にいたすべての冒険者がこちらを向いて驚いた。


「貴様は天使チームの……! バカな! 貴様のような若造があの猛攻を突破できるわけ……はっ!?」


 言葉の途中でその冒険者は察する。

 冒険者のセリフを汲み取るように、隊長が言葉を続けた。


「そうか……ティクヴァーよ、確かにお前ならあの軍隊を突破することできるかもしれんな……」


 隊長の言葉がわざとらしく聞こえたのは気のせいではないだろう。この中で特攻できる可能性のあるものは元よりわたししかいない。それをわかった上で特攻作戦を提案したのだ。

 他のものも徐々に察し始める――最初からわたしに特攻させるつもりで提案したのだと。

 隊長は顔を伏して言う。


「すまない……」


「なぜ、謝られるのですか。歴史に残る大戦争の終止符を打てるのですよ。この上なき光栄であります」


「……本当にすまない」 


 わたしは立ち上がり、隊長の手から十字架型の剣『エンダーオブクロス』を受け取った。

 そして羽を広げて、暗雲に向かって飛び立つ。


「行ってまいります」


 この命を捧げよう、カタストロフィを終戦させるために――


 *


【15F】


「ついにダンジョンも中盤か……」


 ホールを出て15階にやってきた俺は、感慨深くそう呟いた。

 前にいるアイリが振り返って言う。


「始めのころは途方もなく長い旅路だと思っていたけれど、その半分をわたしたちは歩いてきたのよね」


「そうですとも。私たちは頑張ってきました……そのことは、私たち自身が一番よくわかっています!」


「だけどここで満足しちゃダメなのだ。ティズたちの使命はこの世界の破滅を防ぐこと……それを成し遂げるまでは決して冒険は終わらないのだ」


「……そうだな。必ず最後までたどり着くぞ!」


「「おお!」」


 気持ちを新たに、俺たちは前へ前へと進んでいった。


「! モンスターだわ!」


 通路を通って部屋に出ると、そこには新しいモンスターが二種いた。


「ブゥオオオオォオオオ!」


「ガァアァアルルルゥウ! ガァアァルルルル!」


 棍棒を持った豚のモンスター『オーク』と、三つの首を持つ犬のモンスター『スーパーケルベロス』だ。どちらも攻撃的な様子で俺たちと向き合っている。

 アイリは指示を出す。


「シト様、ティズ! ふたりはスーパーケルベロスを倒してちょうだい!」


「ああ! オークは任せたぞ!」


「行くのだ、シト!」


 俺とティズはスーパーケルベロスの方へと向かった。

 三つの首のうち、二頭は目を覚ましている。残りの一頭が眠っているのはこのモンスターの特性なのだろう。


「やれやれ、素でランクアップモンスターが出てくるとはな……気をつけろよティズ!」


「ガァァアァァアアウウゥウゥーーーー!!」


「「!」」


 スーパーケルベロスが飛び出してきた。俺とティズはギリギリのタイミングで剣を振るう。


「はあぁあぁぁ!」


「でやぁあぁぁぁ!」


 ズバアァァァ! ズシャァアアァァ!


「ガガァァウウウウゥ! ……グッ! グアァアアァァ!」


「!」


 俺たちふたりの攻撃を受けてもスーパーケルベロスは倒れない。果敢に反撃を仕掛けてくる。


「ガァアアアァ! ガウウウウゥウウ!」


 ズバシュウゥウゥ! バギシュゥウゥゥ!


「ぐおぉおおおおぉぉおっ! 二つの首で別々に攻撃を……!?」


「ふぎゅううぅぅう……! こ、こいつ、一度に二回攻撃を仕掛けてくるタイプのモンスターなのだ……!」


 俺たちのHPはそれぞれ3分の1程度削れてしまった。もし俺たちがスーパーケルベロス相手にひとりで挑んでいたなら、3分の2もダメージを受けてしまっていただろう。

 俺は脇腹部分の服を損傷し、ティズは胸部分のウロコが破壊された。急所を敵に晒さないようティズは、あらわになった胸をすぐさま左手で隠す。

 俺とティズは歯を食いしばり、一気にトドメを刺す。


「やられる前にやるぞ! はぁあぁぁぁぁあぁ!」


「おーなのだ! ふりゃぁあぁぁぁあぁぁ!」


 シャキィイイイィィン! ズシャァアァアァァ!


「ガァァアゥォオオォオオーーーー!!」


 こちらも反撃の余地を与えるまもなく二回の攻撃を与える。スーパーケルベロスはたまらず悲鳴を上げ、三頭仲良く爆発四散した。


「や、やったのだ……っ! ふぅ……あんなモンスターがふつうに出てくるなんて、いよいよ本番という感じがしてきたのだ」


「アイリ! そっちは大丈夫か!?」


 俺はさっと振り向いた。

 ジャギィイイイイィイイン!


「グゥォオオオオォオオオォーーーー!」


 ドカァアァン!

 アイリのブロードソードが炸裂し、オークの巨体が爆発四散する。


「はぁ、はぁ……! な、なんとか大丈夫よ……! といってもメルナに支援してもらったけどね」


「ハイポーションをひとつ使いました! あのオークというモンスター、特別な能力はなにも持っていませんでしたが、単純にHPと攻撃力が高くて厄介でしたよ……!」


「そうか……本当に、ダンジョンの本番はこれからという気がしてきたな」


 その辺にいるザコモンスターの一体一体が如実に強くなってきている。これからの旅路はもっともっと過酷なものになるのだろう。

 だがそのモンスターを相手に、俺たちはちゃんと戦えている。それは、俺たちが強くなった何よりの証拠だ。


「さあ、折り返し地点だ!」


 俺たちはフロアのアイテムを回収し、次の階に進んでいった。

次回の更新は3/11の午後7時です。

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