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Dungeon Brave'S(ダンジョンブレイブズ)  作者: 北田啓悟
復活の希望「カース山脈」
21/23

021 最大の敵=空腹④【14F】

【14F】


「ティズは隣の部屋か……」


 マップを見てティズの居場所を確認し、俺は新しくやってきた14階のフロアを進んでいく。


「……ん? ポーションが落ちているぞ」


 部屋に向かっていく途中で俺はポーションを拾った。道中にあるということはティズはこのポーションに気がつかなかったのだろうか? それとももはや食料アイテム以外はすべてスルーしていくつもりなのか。

 とりあえず俺はそれを拾う。


『無敵のポーションを拾った!

 効果:しばらくの間ダメージを受けなくなる。』


「おお、これはいいアイテムだ」


 かなり便利そうなポーションを拾った。

 が、その効果に関心を寄せる暇もなく、隣の部屋から悲鳴が聞こえた。


「ふぎゃぁああぁぁぁぁぁ熱いのだあぁああぁあぁぁぁーーーーっ!!」


「!?」


 ティズの声だ。

 俺は急いで隣の部屋に向かった。すると……


「ティズ!」


「もうヤなのだぁあぁあぁぁぁぁあぁーーーーっ! なんでティズばっかりこんな目にぃいいいぃぃぃーーーーっ!」


 胸のウロコだけでなく、股間部位を守るウロコまで壊されているティズがいた。大事な部分を隠すのに手一杯で攻撃する余裕など一切ないほど、危険な状態だ。

 同じ部屋には――


「ドシュウウウウゥウゥ!」


「ジュウウゥウゥウウゥ!」


「ドジュウウゥ! ジュウウゥウウゥ!」


 大勢のモンスターが、ティズを囲んでいた。

 そのモンスターたちの名前は『マグミン』。溶岩が人型を模した姿をしており、見るからに熱そうなモンスターだ。

 マグミンは3体もおり、そのすべてがティズを襲いにかかっていた。

 さらに部屋にいるのは大勢のマグミンだけではない。


「ガチリ! ガチガチガチ!」


 離れた場所にボマーもいる。これはかなり厄介だ。

 俺は大声で言う。


「ティズ! こっちに来い!」


「!? シト!? お前、なんでここに……!?」


「そんなことはどうでもいい! モンスターが多すぎる! 通路に来るんだ! はやく!」


 俺の助言が届くか届かないか、まさにその瞬間に遠くにいるボマーが爆弾を発射してきた。


「ガガヂヂヂ! ガヂリ! ガヂガヂ!」


 ボガァアアァアァアァアアァアン!


「ひいぃいぃっ! あぶないのだぁぁあっ!」


 間一髪、ボマーの攻撃はティズに当たることなくなんとか回避することができた。

 だが――結果的にいうと、それはむしろ最悪な展開だったのだ。


「ドジュジュウゥ!」


「ジュジュ!」


「ジュウウウゥウウゥゥ!!」


「!? なっ、なんだと!?」


 ボマーの爆弾は、マグミンにヒットした。モンスター同士で攻撃が当たったのだ。だがマグミンはダメージを受けていない。

 それどころかマグミンは――なんと爆弾の爆発で『分裂』したのだ。


「バカな! さっきまで3体だったのに6体に増えただと!?」


「シ、シト! あのマグミンは火の攻撃を受けると増えるみたいなのだ!」


「!? なんて面倒なやつらだ……!」


 部屋の状況は、マグミン6体にボマー1体。まともに戦っては絶対にHPがもたないだろう。

 状況は非常に厳しい――ここは逃げるべきか?


「……いや」


 その時、俺は閃く。


「ティズ! こっちに向かって逃げてこい! だがひとつだけ、お前に頼みがある!」


「なんなのだ!?」


「ボマーの攻撃がマグミンに当たらないように、『ボマーの攻撃を受けきってくれ』!」


「!? ……うう、わかったのだ!」


 俺からの作戦に恐れを抱きつつも、ティズは快諾した。

 ティズは俺の方に向かって走ってくる。後ろに気を配りつつ、通路の方へと走ってくる。


「ガヂリ! ガヂガヂ!」


 ボガァァアアァアァァアァン!

 ボマーが爆弾を発射した。爆弾は直線上に飛んでくる。


「ふぎゃあぁあああぁぁぁーーーー! あつっ! あつぅうーーいぃっ!!」


 爆弾はティズにヒットする。途中にいる6体のマグミン、その1体にも流れ弾が当たることなくティズに直接当たったのだ。


「きゃうぅ!? お、お尻がぁぁぁーーっ!!」


 Tバック状の形でガードしていたお尻のウロコがぶっ壊れて、一番恥ずかしいところが丸出しになってしまう。もうほとんど全裸の姿、残りHP一桁の状態だ。

 だがこれでいい。この状況を打破するためには、こうやってボマーを惹きつけるしかない。


「ジュジュ?」


「ドジュウジュウウゥウゥ!」


「ジュウウゥウウウゥゥ!」


 マグミンたちが一斉にある方向に視線がいった。

 走って接近している俺に気がついたのだ。


「礼を言うぞ! 後は俺がやる!」


「「ドジュウウウウゥウウゥ!!」」


 俺は、マグミンの群れに突っ込んでいく。当然、マグミンたちは俺に向かって攻撃してくる。

 マグミンたちは各々、溶岩で作られた灼熱の拳で殴りかかってきた。そんな攻撃、6発も喰らえば俺のHPは一瞬で底をつくだろう。

 だが――


「フッ、残念だな!」


 ガギィイイイイイィン!


「ジュウウウゥウ!?」


「お前らの攻撃なんか効かないんだよ!!」


 マグミンたちの攻撃に俺は1ダメージも喰らわない。

 それもそのはず、俺はすでに飲んでいたのだから。先ほど拾ったあのアイテムを。


「さっき拾った無敵のポーションを飲んだのさ! いくら殴られても傷一つ負うものか!!」


「ジュ、ジュウゥ!」


「だが安心しろ。俺が倒したいのはお前らじゃない――一番奥にいるボマー! お前だぁああぁ!」


「ガギギギギギ!?」


 群がってくるマグミンたちを無視して突っ走る。そうして俺は、右手に持ったバルムンクに混沌の光を輝かせ始める。

 いつ無敵のポーションが切れるかわからない……だから一撃で仕留める!


「ブレイブソードォオオオオォオオオオ!!」


 ズバッシャアァアアアァアァアァ!!


「ガギャギャギャアアァアァーーーー!!」


 ボマーを一撃で粉砕した。機械の体がバラバラに吹っ飛び、再起不能になった。

 通路の方に逃げたティズが言う。


「やった! 一番先にボマーを倒したのだ! これでもうマグミンが増えることはないのだ!」


「ああ、そうだ。この場で最も倒さなければいけないのはボマーだった。だからティズには、あいつの注意を引きつけてもらいたかったんだ」


 もしボマーが俺の方に照準を合わせていたら、無敵状態になっているのでダメージは喰らわないにせよ、近くにいたマグミンには誘爆してしまうのでまた数を増やされていたことだろう。

 そうさせないために、ティズには一回攻撃を食らってもらうしかなかった。


「そして残った6体のマグミンは、こいつで片付ける!」


 俺はマントからリベンジロッドを取り出した。

 ティズが驚く。


「!? ま、まさかそれをマグミンに!?」


「ああ。杖の使用回数はちょうど、6回だ!」


 ぽん! ぽん! ぽん! ぽん! ぽん! ぽん!


「「ジュウウウゥウウウゥウウゥゥウウゥ!?」」


 百発百中、振り抜いたリベンジロッドはすべて別々のマグミンにヒットし、毒々しい色に全身が包まれる。

 そのタイミングで、無敵のポーションの効果が切れた。

 俺はマグミンにまた近づいていく。


「さあ、かかってこいよ。マグミンども」


「ジュゥ……ジュウウゥウウゥ」


「怖気づいたのか? ダメージが跳ね返ることを理解しているのか? ――だとしても無駄だ。お前らが攻撃しなくても、俺はお前に攻撃するんだからな!」


「ジュウ!」


「ドジュウウウウウゥウウウゥーーーー!!」


 挑発に乗ったマグミンたちは一斉に俺に攻撃を仕掛けてきた。

 灼熱の拳が襲ってくる。

 ドジュウウウウゥウウゥ!

 バギュウウウウゥウウゥ!


「ぐっ……うおおおぉおおおおぉおおおーーーーっ!!」


 殴られた箇所の肉が溶けそうになるほどの強烈な攻撃。それが二回俺を襲った。

 そしてそのダメージは、そっくりそのままマグミンたちに反射する。


「「ドジュゥウウアアァアァァアアァァアァァァアァーーーー!!」」


 6体のマグミンは断末魔の六重奏を上げた。そうして全身の溶岩が鎮火し、爆発とともに消滅した。

 俺は息を荒らげ、ボロボロの体になりながら言う。


「ボマー、そしてマグミン6体……討伐!」


 がくりと膝をつく。

 それから、自然回復によってウロコがもとの状態に直ったティズが走り寄ってきた。


「シト! だ、大丈夫なのだ!?」


「フン……なんてことはない」


「無茶するななのだ! そんな自分の身を犠牲にして……戦い方が危なっかしすぎるのだ!」


「ザコを相手に逃げるなんて選択肢は俺にはない。……お前こそ、よく俺の言うとおりに攻撃を喰らってくれたな」


「…………ごめんなさいなのだ」


 俺に目線を合わせるよう、ティズはしゃがんだ。

 そうしてしおらしそうに言う。


「ティズが勝手に飛び出したから、シトに迷惑を……」


「おいおい、お前らしくないぞ。いつもの俺に対する態度はどこにいった?」


「…………」


「……やれやれ」


 口を真一文字に閉じて泣きそうな表情にティズはなる。……まったく、そんな顔するなよ。


「ふ、ふぎゅっ」


 俺はティズの頭をぽんと撫でてやった。


「気にするな。誰もティズを迷惑だなんて思ってない」


「あ、う……ひゅ……っ!」


「だから元気を出せ」


「シ、シト……ふあぁあぁ……♥」


 ティズは気持ちよさそうな顔をして、へなへなと俺の手前に倒れ込んできた。

 今まで俺に抱いていた警戒心が溶けてなくなったような、とろけきった表情だった。


「ん?」


 近寄ったティズから、なにか食べ物のいい匂いがした。


「おいティズ。なにかいい匂いがしないか?」


「え? くんくん……本当なのだ!? どこから匂うのだ? ――あっ!」

 

 匂いの在り処を突き止めようとティズはインベントリの中身を見てみた。するとそこには……


『こんがりパン

 こんがりパン

 こんがりパン

 こんがりパン』


「腐ったパンがこんがりパンになってるのだ!? いつの間に!?」


「ボマーやマグミンのおかげだ! 火の攻撃を食らってアイテムが変化したんだ!」


 ティズは恐る恐るインベントリの中にあるこんがりパンを手に取った。


『こんがりパン

 効果:お腹が膨れ、HPもすこし回復する。』


 それは見るからにおいしそうな見た目をしていた。手にとっただけで外の皮がカリカリしているのがわかり、香ばしい匂いは俺たちの胃にダイレクトに響いた。


「シト様ーーっ!」


「ティズさーーんっ!」


「「!」」


 ちょうどタイミングよく、アイリとメルナがやってきた。

 俺とティズは明るい声で言う。


「おお! ふたりとも! やったぞ!」


「食糧問題が解決したのだ!」


「えっ、本当!?」


「わぁぁ、おいしそうなパンです!」


 そうして俺たちは4個のこんがりパンを口いっぱいに頬張り、なんとか冒険を続けることができたのだった。

次回の更新は3/6の午後7時です。

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