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Dungeon Brave'S(ダンジョンブレイブズ)  作者: 北田啓悟
復活の希望「カース山脈」
14/23

014 タンク・アタッカー・ヒーラー①【6F】

【6F】


「また洞窟にやってきたか」


 6階にやってくると、かつてアイリとともに冒険したアバン洞窟のような洞窟地帯にやってきた。山脈というから山だけを歩くかと思いきや、一ダンジョンのなかでも背景は変わっていくようだ。

 俺がマップを確認していると、アイリが提案をしてきた。


「シト様。せっかく団体行動でダンジョンを進むなら、それぞれの役割を決めてみない?」


「役割?」


「そう! 誰が前に出て安全確認するかとか、後ろから支援するかとか、そういうことを決めてわたしたちはいつも冒険しているのよ。ね、メルナ?」


「は、はい! 役割を決めておいたほうが、自分がどう動くべきか迷わなくなるので……大事なことだと思いますっ!」


 アイリとメルナは頷きあった。

 忘れかけていたが、そういえばコイツらはAランク冒険者パーティという実力派メンバーたちだった。パーティプレイによるセオリーは、きちんと熟知しているようである。

 確かに役割を決めるのは合理的な考えだろう――持っているアイテムや装備が違えば、各々の性格だって違う。それぞれが得意とする分野で動いたほうが効率的というものだ。


「役割か。いいだろう。で、いつもはどういう役割で動いているんだ?」


「いつもは、壁役のタンク・攻撃役のアタッカー・回復役のヒーラーの役割で動いているわ。タンクはわたし。アタッカーはティズ。ヒーラーはメルナね」


「わかった。ティズのやつは今いないから、アタッカーは俺がやってやろう」


「いいですね! 一番攻撃力の高い剣も持ってますし、シトさんにぴったりだと思います!」


「頼りにしてるわね、シト様! じゃあ、いっかい順番に並んでみましょ!」


 タンク・アタッカー・ヒーラーの順番通り、アイリ・俺・メルナの並びで俺たちは一列になった。

 前にいるアイリがこちらに振り返り、言う。


「詳しい説明は省くとして、とりあえずわたしがどんどん前に出るわ。モンスターが現れたら、いっしょに戦いましょうねシト様!」


「ああ。危なくなったらお前を壁にしてやる」


「大丈夫! わたしが壁ならシト様が危なくなることなんてないから! ――でも万が一、わたしやシト様のHPが危なくなったら、ポーション持ちのメルナに回復してもらうわ」


「はいっ! 今回、ポーションはたくさん拾ってますので、安心してください!」


「それは助かるな。期待しているぞ、メルナ」


「えへへ……私、シトさんのために精いっぱい頑張りますね……っ!」


「……ねぇシト様? わたしとの扱いに差がありすぎない? メルナも嬉しそうにしないで?」


 切実な顔のアイリをスルーし、それから俺たちは、持っているアイテムを整理した。それぞれの役割に合わせて、誰がどのアイテムを持つべきかを話し合って決めた。

 結果は以下の通りだ。


『アイリ

 [E]ブロードソード

 [E]アスピス

 24カラットの宝石』


『シト

 [E]バルムンク

 [E]エンブレムシールド

 32カラットの宝石』


『メルナ

 [E]バックラー

 識別の魔導書

 探知の魔導書

 混乱の魔導書

 ミドルポーション

 ミドルポーション

 ハイポーション

 ハイポーション

 解毒のポーション

 15カラットの宝石

 3カラットの宝石』


 メルナにアイテムを多く持たせたのは、後衛であるがゆえに3人のなかで生存率が最も高いからだ。ひとりでも生き残っていれば、蘇生陣を使って他のメンバーが倒れても復帰できる。

 俺とアイリは戦闘に必要なものだけを持っていればいいというわけだ。


「それじゃあ冒険を再開しましょ!」


「ああ」


「後ろ失礼しますねシトさんっ……! ふふっ。背中、大きいですね……!」


 3人のインベントリを整えて、俺たちは一列に並んで部屋を移動しようと通路を歩いていった。中間にいる俺は前と後ろの両方に気を配りつつ歩んでいく。

 すると突然のことだ。


「……? ひゃああぁっ!?」


「うおっ」


 後ろのメルナが悲鳴をあげた。がっしりと俺の背中を抱きしめてくる。アイリのよりも大きいおっぱいをぎゅむっと思い切り押し付けられた。

 いきなりくっついてきたメルナに、俺は気を向ける。


「どうした、メルナ!?」


「モ、モンスターが! 壁を掘ってやってきましたぁっ!」


「クァクゥゥゥゥァッ!」


「巨大アリか!?」


 さっき通った時には一本道でしかなかった通路を、モンスターが掘り進んでやってきたのだ。

 モンスターの名前は『フォーミアン』。ヤリを持った巨大なアリである。前足で持っているヤリで壁を掘り進んできたのだろう。

 フォーミアンはメルナのいる位置を掘り当ててきた。装備の貧弱なメルナが襲われるのはピンチだ。


「メルナ、俺と場所を入れ替えろ! 俺が倒す!」


「ひぁっ!?」


 俺は、体を半回転させて背中にくっつくメルナと位置を交換した。

 そうしてフォーミアンと対峙する。


「うぉりゃぁあぁ!」


「クァクウゥゥッ!!」


 なんとかフォーミアンに先制することができた。メルナからもらった強力な剣バルムンクで大ダメージを与える。なかなかの手応えを右手に感じたが、一撃では倒れない。

 隣にいるメルナがびくびくしながら俺を応援する。


「頑張ってくださいシトさん……っ! ううっ、もうすこし広ければ私も手伝えるのに……!」


 歯がゆそうにメルナは言う――通路での戦闘はあまり好ましいものとは言えないだろう。部屋で戦うのとは違って、こんな狭い通路のなかではどうしたって1対1にならざるを得ないからだ。せっかく仲間がいる状況なのに一人ずつしか戦闘できないのは不利である。


「クァァクゥゥウウゥ!」


「ぐぐぅっ……! 気にするな! アリ一匹くらい、俺1人で倒せる!!」


 シャキィイイイィン!


「クァァァクウウゥゥッ!」


 反撃を受けてダメージを喰らったものの、二度目の攻撃でフォーミアンを倒すことができた。フォーミアンは爆発して消滅する。

 俺は槍で突かれた胸に手を当てながら、ため息をつく。


「フン……ここに来て初ダメか。さすがにアバン洞窟ほど甘くはないか」


「大丈夫でしたか、シトさん!?」


「なんてことはない。列に並んでいたおかげですぐに対応できることができたしな」


「あ……っ♥ シトさん……ありがとうございます……っ♥ えへ……♥」


 俺はメルナの肩をぽんと叩いた。するとメルナは顔を赤らめて俺を見つめた。

 なんだか前の階からメルナの様子がおかしい。こちらを見つめる瞳がどうにも熱っぽい気がする……面倒なことにならなければいいが。

 ともあれ俺たちは通路を出て、フロアのアイテムを回収し、次の階へと進んでいったのだった。

次回の更新は2/16の午後7時です。

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