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Dungeon Brave'S(ダンジョンブレイブズ)  作者: 北田啓悟
復活の希望「カース山脈」
11/23

011 一度きりの超絶経験値①【3F】

【3F】


 メルナが死んだ。その事実に、少なからず俺はショックを受けた。

 こんな序盤から人が死ぬ――カース山脈がいかに過酷なダンジョンなのかが決定づけられた出来事だ。いかに最強の俺といえど、生半可な気持ちではクリアすることは難しいかもしれない。

 メルナの死は決して無駄にはしない。気持ちを引き締めて、俺は前に進む。


「メルナ……あまり話はしなかったが、悪い奴ではなかった。仇は取ってやるぞ」


 そうして仲間の死を弔っていると、突然、部屋のなかになにかが出現した。

 シュイィィィン。


「! あれはなんだ?」


 魔法陣が地面に出現した。赤色の光を強く発すると、魔法陣のなかからなにかが浮き出てきた。

 それは俺の見知った顔だ。


「た、ただいまです……っ」


「おかえり!」


「メルナ!?」


 長耳と銀色の髪に、聖職者のような服。背丈が高くおどおどとしたその姿は、紛れもなくメルナだった。

 メルナは赤い魔法陣から出てきて俺たちに寄ってくる。そうすると赤い魔法陣は小さくなって瞬く間に消滅した。

 俺は愕然とする。


「お前、どうしてここに!? 5階で死んだはずじゃ……」


「うふふ。シト様、驚かせてごめんなさい。実はパーティを組んでいる冒険者は、そのパーティが全滅しない限りダンジョンに復帰することができるのよ」


「何だと……!?」


 死んだ命でも蘇る手段があるというのか。

 メルナの腰に手を回して、アイリは説明する。


「今の赤い魔法陣は『蘇生陣』といって、パーティを組むことで受けられる最大のメリットだわ。例えばわたしがモンスターに倒されて死んじゃったとしても、ある条件を満たせば蘇生することができるの。その条件というのは、『メンバーの誰かが次の階に進むこと』。次の階層に行った地点から、わたしはそのメンバーのもとに蘇生できるようになるわ」


「! 俺たちが2階から3階に進んだから、メルナはここに蘇生したと……?」


「そういうこと!」


「なら前の階、俺は杞憂していただけだと……?」


「うふふっ、シト様をびっくりさせようって思って黙っておいたの! あんなに驚くなんて、レア顔ゲットしちゃったわっ!」


 まるでひと仕事終えたように清々しい顔を見せるアイリに、俺は頭の中でブチンという音が鳴るのを感じた。

 そうして右手をグーの形にして、


「なんで! お前は! 大事なことをぉッ! 最初に! 説明! しないんだぁあッ!」


「ひぎぃっ♥ ごめっ♥ ごめんらはいっ♥ シト様っ♥ お許し♥ お許しほぉおッ♥」


 リズミカルに6回腹パンし、リズミカルに6回アイリを喘がせた。

 アイリは仰向けに倒れて恍惚な表情をし、「あぁぁ~~♥」と身体をビクンビクンと震わせる。

 強烈なやりとりを後ろで見ていたメルナは手をかざすように困惑していた。


「ふえぇ……!? わ、私、もしかしてお邪魔だったでしょうか……?」


「いや、ちょうどいいところに来てくれた。もうあんな女に用はない。これからはよろしく頼む、メルナ」


「えっ!? は、はい……お役に立てるよう、頑張ります……っ!」


「ま、待ってぇぇ……♥ わたしを捨てないでぇぇ……♥」


「あはは……」


 愛想笑いしかできないメルナだった。

 そんなメルナに、俺は質問する。


「それで? 蘇生陣に関する説明は今ので全部か?」


「あっ、えっと……まだ、デスペナルティの説明が残ってます。わ、私から説明しましょうか……?」


「そうしてくれ。あいつは使い物にならん」


「では――蘇生陣があるので死んでも復帰はできるんですが、死ぬことによる驚異がまったくないというわけではなくて……というのが『持っていたアイテムはすべて失ってしまう』んです」


「すべて!? ということは……」


「はい。恥ずかしいことに、いま私は裸です……でも死んだその地点に持っていたアイテムはすべてドロップしているので、急いで5階に向かえば回収はできますっ」


「ふむ。当面の目標はそれになるか」


「ごめんなさい……せっかくの冒険に水を差すようなことしてしまって……」


「気にするな。誰にでもミスはある」


 俺はメルナの背中を叩いてやった。

 メルナは照れるように微笑を浮かべる。


「ありがとうございます。シトさんって、優しいんですね……!」


「別に。面倒なやつが嫌いなだけだ。お前はそうじゃないだろう」


「えへへ……」


「な゛に゛い゛ぢゃ゛い゛ぢゃ゛じでる゛の゛よ゛ぉおおぉぉぉ~~~~っ!!」


「ひいいぃぃいっ!?」


「やれやれ……」


 俺とメルナが喋り合っていると、いつの間にか後ろに立っていたアイリがハンカチを噛んで涙をちょちょ切らせていた。まったく、そういうところが嫌いだと言っているだろうに。

 ともあれ俺とアイリとメルナは3人で団体行動をとって3階を探索した。メルナが来たことにより自然湧きのアイテムも三つ出現しているので、それらを回収していった。

 回収したアイテムはそれぞれ以下の通りである。

 俺はハイポーションを拾った。


『ハイポーション

 効果:HPがたくさん回復する。』


 アイリは識別の魔導書を拾った。


『識別の魔導書

 効果:アイテムを識別する。』


 メルナはバックラーを拾った。


『バックラー

 防御力:3

 効果:なし』


 そうして俺たちは次の階に進んだ。

次回の更新は2/10の午後7時です。

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