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Dungeon Brave'S(ダンジョンブレイブズ)  作者: 北田啓悟
復活の希望「カース山脈」
10/23

010 レディーゴー!②【2F】

【2F】


 2階にやってきた俺とアイリは真っ先にマップを見た。フロア内はすでにほとんどマッピングされており、メルナとティズはホールに向かっている最中のようだ。

 俺はため息をつく。


「あの二人め……この階のアイテムをすべて回収しきったようだな。仕方ない、この階はすっ飛ばして次の階に……」


 おかげで俺たちが拾えるアイテムはこの階にはひとつもなくなっている。これでは探索する意味がないので、俺たちもホールへ向かうとしよう。

 ――と思っていたのだが、その時不思議なことが起きた。


「ん? ……!?」


 マップ上に、突然□マークが出現した。それも二個だ。それぞれ別の部屋に出現してしまったが、それは紛れもなくアイテムのマーク。

 驚く俺に、アイリが説明をする。


「さすがシト様、気づいたようね! これは『自然湧き』だわ!」


「自然湧き?」


「ええ。ダンジョンにはアイテムが落ちているものだけれど、実はそこには二種類のタイプがあるの。最初から落ちているものと、時間経過によって自然に発生するものよ」


「ほう……出遅れてもアイテムを拾えるチャンスがあるということか」


「そのとおり! そしてアイテムが必ず自然湧きするタイミングがあるの――それは、冒険者がホールを進んで次の階にやってきた時よ!」


「! だから一気に二個も出現したのか」


 俺とアイリはいっしょに2階に上ってきた。ふたりの冒険者がホールを進んだから、二個のアイテムが二個も自然湧きしたわけだ。

 そうとわかれば立ち止まってはいられない。自然湧きしたアイテムくらいは拾いに行かなければ。

 俺とアイリは、出現したアイテムを近い順から取りに行く――メルナとティズは次の階層に行ったようだ。二個のアイテムを取られる心配はない。


「しかし……ふたりが先にマッピングしてくれたおかげか、モンスターがほとんどいないな」


「レベルもいつの間にか4になっているわね」


 前線のふたりがモンスターを狩ってくれたおかげで、フロア内は実に平和である。競争開始時から出遅れてしまったものの、モンスターを倒す手間が省けたことを考慮すると追いつくのはそう難しいことではないのかもしれない。

 アイリは言う。


「でも一応気をつけて。自然湧きするのはアイテムだけじゃないわ。前線が狩り尽くしていたとしても、モンスターは出てくるわよ」


「! フッ……どうやらそのとおりみたいだな」


「ニャァアアァオォオ!」


 猫型のモンスター・キャットが出てきた。こいつはアバン洞窟でもいたモンスターだ。恐るるに足らない。


「ニャオッ!」


 キャットは俺に近づいて、飛びつくように攻撃してきた。

 俺はそれを正拳突きで迎え入れる。


「邪魔だ!!」


「ギニャァアアァァアァーー!」


 正面からぶん殴ると、一発で倒すことができた。前線のふたりのおかげでレベルがガンガン上がっており、この階層のモンスターを倒すのは素手でも一撃になっていた。


「きゃあぁぁぁぁああーーーーっ! やっぱりシト様カッコいいっ! 抱きしめてぇぇぇぇぇぇーーーーっ!!」


「下らないことで騒ぐな! アイテムを取りに行くぞ!」


 今いる部屋から出て通路に行き、隣の部屋へと移動する。

 部屋にやってきたらマップを見てアイテムの位置を確認した。自然湧きした二個のアイテムは、両方ともこの部屋にあった。


「俺は近くに落ちているものにしよう。アイリは遠くにあるものを取れ」


「えっ!? わたしもアイテムを拾っていいの!?」


「? お前がやってきて自然湧きしたアイテムなんだから当たり前だろう」


「シト様……なんて優しいの……! 奴隷のわたしにもアイテムを与えてくれるなんて……わたし、シト様の奴隷で本当によかった!」


「気持ち悪いからはやく行け」


「はーいっ!」


 罵倒されて喜ぶアイリを置いていくように俺は歩を進め、近くにあったアイテムのもとへ行く。


「おっ、盾か」


『エンブレムシールドを拾った!

 DEF:3

 EFF:アイテムが盗まれなくなる。』


 俺はエンブレムシールドをさっそく装備した。防御力は3アップし、何やら便利そうな効果もついている。


「シト様ー! 剣を拾ったわー!」


『ブロードソードを拾った!

 ATK:6

 EFF:なし』


 対するアイリは攻撃力6のブロードソードを装備した。お互いなかなか良い装備品に恵まれたようだ。

 それからアイリは一息ついた。走りっぱなしだったので疲れが溜まってきたらしい。


「ふぅ……一段落ついたし、すこしゆっくり行きましょ。競争といっても対戦じゃないからね」


「だな。遅れていてもそれなりにメリットはある」


 拾えるアイテムは少ないとはいえ、ダンジョンを比較的安全に探索することができる。それが遅れている側のメリットだ。メルナやティズに追いつくのは、彼女たちが息切れしたときでいいのかもしれない。

 アイリは額の汗をぬぐい、俺といっしょに歩きながらホールを目指した。

 話題転換に俺は言う。


「アイリ。ところで、今のうちに聞いておきたいことがあるんだが」


「?」


「あのふたりもスキルは持っているのか?」


 今後協力プレイすることを考えると、彼女たちの個性は早いうちに把握しておきたい。そう考えて俺は質問した。

 アイリは答える。


「ええ。メルナもティズもすごい強いスキルを持っているわ」


「ほう。どんなスキルを持っているんだ?」


「そうね、まずメルナが――」


 ビーーーーーーーー!!

 アイリが説明しようとしたその瞬間、不穏なブザー音がステータスから鳴った。

 俺は驚きつつも、何が起こったのか確認する。


「なんだ!?」


「ブザー音……まずいわ。シト様、マップを見て」


「ああ」


 アイリに言われたとおり俺はマップを見る。一目見ただけではなにかおかしい点は見当たらない。だが端のほうに視線を動かし、それが視界に入った瞬間、全身から血の気が引くのを感じた。

 マップの端には、メンバーの名前と今いる階層が表示されている。しかしメルナの欄を見てみると、さっきまで5Fと書かれていたのに今表示されてあるのは――『DEAD』の文字だった。

 マップを持つ手から汗が噴き出す。俺はアイリのほうを向いて、恐る恐る訊く。


「メルナが……DEADだと……!? まさか……!」


「ええ。とてもまずい状況よ」


 さすがの俺も、ゴクリと固唾を呑んだ。

 アイリは俺の目を見つめる。そしてハッキリと、その言葉を口にした。


「メルナが死んだわ」

次回の更新は2/8の午後7時です。

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