夏みかんの味
じんましんができそう
レモンの味なんてよく言うけど、あれは嘘だ。
目を見開いた私のことをわかってるのかそうじゃないのか、君はまだ、その……唇を離さない。ちょっと強引だよ。
少し呻いてみたけど君には効かないみたいだ。君の顔、熱いよ。私の胸が今までの経験では考えられないくらい早鐘を打っているのも多分もうばれてる。ねえ、こういう時、次にどうしたらいいのか君は知ってる? 私知らないよ。君に任せてもいい?
「ん」
ふいに君は唇を離す。もうやめちゃうの?
「人、来るから」
君の指した階段の下から、本当だ、足音が聞こえた。
「一緒に降りるくらいはいいよね? 別に怪しまれないよね」
体ごと離れようとするから、少し強引に君の右手を握った。どうしてこっち向いてくれないの? 恥ずかしいの?
「そんなんじゃないけど」
君は鼻だけ私に向けて言う。
「手、繋ぐのはさすがにまずい」
「そうかなあ」
なんだかもう、私の方が乗せられちゃってるみたいだ。
君のこともっとからかってみたい。君が急に下手に出るから、こんな気持ちになるんだからね。
君は不安そうな目で繋いだ手を見てる。
「行こ」
引っ張って階段を下りようとすると、少しの抵抗を感じたあと、肩が横に並んだ。
初めてのキスは夏みかんの味がした。