再会
「話がある」
ルドンの部屋を去った後、レムにそう言われ私は彼女の部屋に来ていた。
彼女の部屋には小さなテーブル一つと椅子が二つだけというものだったが、柔らかな優しさを感じた。
「…何のようだい?」
「ヴェル…ああヴェル…やっと会えた!」
私が部屋に入った瞬間レムは泣きながら私に抱きついた。
「ヴェルよかった、本当に会えて。もうはなさない」
「分かった…それより苦しいんだ、ちょっと離れてくれ」
そう言うと、慌てながらレムは痛かったか?ごめんなさい、と謝りながら離れた。
「なあ…あなたは私を知っているようだが、あんたは一体私の何なんだ?」
私がそう聞くとレムはまた抱きついて来た。だがさっきのように苦しくない優しい抱擁だった、私は昔誰かに同じ事をされたような気がした。
「私はあなたの家族です…ヴェル」
レムは私の頰に優しく触れ笑った。
その後レムは昔の事を話してくれた、私と共に孤児院で育った事、貧しい暮らしだが楽しかったという事、誘拐される前の記憶が無い私にはどの話も信じられなかったが、彼女の表情を見ると嘘は言ってないと感じた。
「あなたがルルームに攫われた後、私はあなたを必死に探しました。でもルルームは空間を操る能力者、どれだけ探しても足跡さえ見つける事は出来ませんでした。でもあなたに関する情報を聞いた時私は確信しました。ヴェルがいる、会えるんだと!」
レムは嬉しいのか大声で叫んだ、だがいきなり沈んだ。
「そうだごめんなさいヴェル。私はあなたを…」
「さっきも言ったじゃないか。別にいいよ気にしてない。ありがとうレム」
レムの表情が一気に明るくなる、そしてその後私は長い時間レムと話し合った。
「ありがとうヴェル、今日という日は絶対に忘れません。」
「あぁ、こんなに多くの嬉しいを感じた日はない、ありがとう。」
確かに嬉しいが何か違う…お互いに笑いあう幸せな空間だが、何かが私の心に引っかかっていた。
私はマカロの事が気になってしょうがなかった。私の作り笑いに気づいたのかレムは悲しげに笑った。
「ヴェルあの子は無事ですよ、怪我をしていたのでここではなく首都ペーラにある病院で治療を受けています」
「マカロは無事なのか⁉︎」
「…少し切り傷を負っていました。恐らくルルームにやられたのではないかと、幸い命に問題ありません。明日私が病院まで案内するのでお見舞いに行きましょう…ってヴェル⁉︎」
私は自然と涙が出ていた、マカロが生きている、一緒に生きる事が出来るという事が何よりも嬉しかったのだ。私が泣いているとレムが優しく触れた。
「大丈夫ですよヴェル。」
その言葉を聞き今まで死んでいた感情が荒波のように溢れ出し私は声を上げ泣いた。
レムは私が泣き止むまでずっと撫でてくれた。
「寝ちゃいましたか…」
隣で満足そうに眠る弟に毛布を掛け私は彼の腕を握った。その腕は若いというのに、朽ちた枝の様にか細く儚げな腕だった。愛する彼が今までどのような目にあって来たのか想像し私は涙を流した。
「ごめんねヴェル…」
私はもうこの子を離さない、ルドンの好きにはさせない、そう心に誓った。