夢の中で
「おい起きろクソ餓鬼!殺すぞ!」
「う…誰だよ…」
目を開けると女らしき人がこちらを覗き込むようにして見ていた。
女以外周りには何もない、ただ白い空間が何処までも続いている。
女は寝ている私の腹を蹴飛ばし唾を吐いた。
「何をするんだ!」
「うるせえ!あたしは寝てたのを起こされて今すぐにでも何かを壊したい気分なんだ!分かったら殴らせろこの糞餓鬼!」
そのまま一方的に殴られ続けた。
数分後
「ふう…いいサンドバッグだったぜ、多少は怒りもおさまったから、殴るのをやめてやる。」
「このクソ女…」
体のありとあらゆる所を折られ、立つ事が出来ない、しかも骨折程度ならすぐ再生する筈なのに再生しない、何が起きているのかさっぱり分からなかった。
「おいクソ餓鬼…てめえ変わった能力持ってるみたいだがここでは能力は使えないぜ。ここは死の世界だからな…」
死、その言葉が重くのしかかる。私は女に向かって叫んだ。
「おい女!死の世界ってどういう事だ!何なんだお前は!説明しろ!」
女はわざとらしく足音を鳴らしながら近づき、私の頭を踏みつけた。
「あぁん?口の利き方に気をつけろ。てめえの頭には何が入ってんだ?このスッカスカの頭をブチ撒かれたいのかてめえはよぉ!」
骨が軋む音がする、女が言った通り再生しないという事はこのままでは本当に死ぬということだ。
私は取り敢えずこの女のいうことをきく事にした。
「分かった…いえ分かりました。」
女は足を離した。
女はブツブツと文句を言っている。
「ここに人間が来たって事は…面倒くせえなあ〜、もう戦いたくねえってのによぉ」
「すみ…ません、どういう事ですか?」
私の問いに女は舌打ちをした。
「あたしは代償の能力者ゲルマだ。てめえ禁術使って代償の能力を得ようとしてんだろう?嫌だねこんな餓鬼に使われるなんて。」
「ちょっと待っ…て下さい。ゲルマさんあなたが代償の能力って」
「ああうぜえ、やっぱり殺すかあ、そうすりゃまた寝れるしな。」
ゲルマは私の頭を蹴る、その蹴りは先程とは比べ物にならない程強かった。
「くっ…待って、話を聞いてください。」
「やだね殺すと決めたら殺すんだ。昔からそうでね。」
ゲルマは私の肩を砕いた、だらりとぶら下がる左腕、もうどこも痛みを感じなかった。
「これで最後だ!」
ゲルマの拳が目の前に迫る。
「マカロ…」
「死ぬ前に好きな女の事を考えるなんて泣かせるねえ。でもあたしはそういうの大嫌いなんだ、死ね!」
死ぬ、そう思った瞬間ゲルマの拳が止まった。
「そこまでだ。ゲルマ…」
「ゼルビィ先生…あんたかよ。」
ゲルマの拳をゼルビィが掴んでいた。
「先生、お久しぶりですね、この手を離してください。」
「駄目だ、離さない。ゲルマお前にはまだ使命がある。」
ゲルマは使命という言葉を聞き狂ったように叫びゼルビィに殴り掛かった。
だがゼルビィは老人とは思えない身のこなしでゲルマを組み伏せた。
「あんたはいつもそうだなゼルビィ…国の事ばかりで。人間の事なんて考えない屑だ。」
ゼルビィは何も答えない。
「…無視かよ、まぁいい。あんたがここにいるって事は禁術は成功したって事だ、抵抗するだけ無駄ってわけだな。」
「ゲルマ…」
「気に食わねえが、そこの餓鬼に使われてやる。おいクソ餓鬼!目覚めたら覚えてやがれ。」
ゲルマはそう言い消えた。
ゼルビィが近づき手に触れる、すると体中の傷が治り始めた。
「ゼルビィどういう事なんだ。」
「ヴェル…禁術は成功した。目覚めれば代償の能力が使えるようになっている。色々説明してやりたいが儂はもうじき消える、すまん。どうかあの子をゲルマを頼む。」
ゼルビィはそう言うと倒れた。
白い空間に黒い亀裂が走る、亀裂は徐々に広がり私は亀裂の中へ落ちた。
次からはヴェル視点ではなく第三者視点で書いていこうかなと思います。




