第1話 再生
「待てよ。」
私は目の前にいる男にこう言った。男は驚きの表情を浮かべながら私を見ている。
無理もない、私はつい先程この男に身体のありとあらゆる所をナイフで滅多刺しにされた。
普通の人間なら致命傷だが、私は今男の前で堂々と立っている。
「ばっ化物! 」
男はそう言うと一瞬で目の前から消えた。
「化物なんて非道いなぁ、いきなり背後から襲ってきたお前の方が化物じゃないか」
血唾を吐き文句を言った。
服を脱ぎ刺された箇所を確認すると傷は見事に再生されていた。
「うん、いつも思うけど私の能力は素晴らしいね最高に便利だ。」
私はさっきまで血が吹き出ていた首を右手で優しく触れながら溜息をつく。
右手はまだ再生が追いついてないのか少し痺れた。
「さっきの奴みたいな下らない奴もいるけどこの世界は面白い、もっと面白い事が起きないかなぁ」
私は溢れる喜びを抑えきれず笑いながらその場を去った。
聖世界、誰かがそう名付けたこの世界に私は生きている。この世界に生きる人間は全て不思議な力を持っている。
そして私はその中でも幻といわれる程珍しい再生という能力を持って生まれた。
人は私をこう呼んだ、不死身のヴェルと…




