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悪の首領、電話相談室に電話する

作者: eel

 

 prrr・・・

 prrrr・・・ガチャッ


 「ハイ、こちら『人生お悩み電話相談室』です♪」

 

 「・・・こんにちは・・」 

 「ハイ。こんにちは。えっと。お名前を伺ってもいいですか?」

 

 「はい・・・私の名前は・・・田中栄一(仮)と言います・・・」

 「田中(仮)さんですね?えーっと・・ご職業は?」

 

 「・・・悪の首領をしています・・」

 「え・・・っと・・アクノシュリョウ・・ですか・・なるほど・・」

 

 「はい・・・悪の首領・・・です。」

 「えーっと。まず、説明させていただきますね。この電話は基本無料です。ここでお話戴いた事は全て秘匿とし、一切他言しない事と致します。

 私は基本的にお話を聴くだけで、意見を求められれば私の考えうる範囲内でお答えいたします。

 また、超長時間のお話は他の方のお電話もある都合上遠慮させていただく事もございますのでご了承ください・・・よろしいですか?」

 「はい・・いいです」

 

 「では、今日はどういった内容のお話ですか?」

 「はい・・・この国に・・『正義の味方』は・・実は居ないのでしょうか?」

 

 「・・・・はい?」

 「私が組織を創って以来、組織の怪人を使って多くの事をしたのですが・・・来るのは、警察と自衛隊ぐらいで・・・いくら待っても『正義の味方』は現れなかったのです」

 

 「・・・はぁ」

 「私は最初 -すぐに来るはずがない、彼らだって他の組織や地球の危機に対し戦っているのだから、私がもっと多くの事を成せば・・・きっと来てくれる筈だ- そう思っていました。」

 

 「・・・なるほど・・・」

 「しかし・・・何をしても・・・待てど暮らせど・・来るのはこの国の権力機構だけ・・・私は警察や自衛隊と戦う為に悪の組織を作ったわけではないのです!!」

 

 「・・・・・・」

 「ただ・・ただ・・『正義の味方』と戦い・・そして・・・敗れ去りたかった・・・・。ただそれだけなのです・・」

 

 「・・・なるほど・・」

 「私は昔から悪の組織に憧れてきました。研究所ラボで、他のDNAと繋げても一切の拒絶反応を起こさない『擬態化染色体』を見つけた時は本当に歓喜しました。 -これを使えば怪人を作ることができる- と・・・。

 その後は、さらに研究を進め『合成獣キメラ』を元とする『戦闘員』、モノの巨大化を促す『刺激毒エリクサー』を使った大型獣。その大型獣に人の脳を乗せた『結合怪人マッドハッター』。

 ・・・多くの『悪の組織』に相応しい者達を作り上げ、数を用意し、資金を増やし、満を持して世に悪の組織在り!!・・・と、行動をしてきたのに・・・」

 

 「・・・・・」

 「・・100年掛けました。ここまでにするのに、100年です。私の体も一応、不老化処置をしてある為、老いによる死亡はありません・・・ですが・・・もう疲れました・・・。

 私が研究所ラボを出るとき、研究所ごと破棄してきました。思えばそれがいけなかったのかもしれません。テレビをみれば、未だに人体移植程度で右往左往している様で・・・本当に・・・」

 

 「そう・・ですか・・」

 「40年程前に、改造手術を施してわざと一人の男を逃がしました・・・そう、有名なヒーローの様にです。

 その男と戦うときの為に、『イーイー言う奴ら』も用意しました。 -さぁ、復讐に来い!お前にした事を私に後悔させろ!- と・・・しかし・・・。

 彼からは結婚式の招待状が届きました。中国の雑技団サーカスで、有名になったのは貴方のおかげだと・・・そして、妻と出会えたと・・・。」

 

 「それは・・・いいことをしまし・・たね・・。」

 「・・・ええ・・ありがとうございます。(震え声)」

 

 「他にも、努力はされたんでしょう?」

 「ええ・・巨大化して赤い全身タイツを着せ、同じく巨大化した怪獣と戦わせようと思い研究したりもしました。細胞の急速な増大、縮小はとても大きな負担が強いられるため、それを緩和させる薬の作成にも成功し、カプセルの服用によって『3分間だけ巨大化』する事もできるようになりました・・・けど・・・」

 

 「・・・けど?」

 「三分では皆 -お!今、地震有った。けっこうおっきくね?- ・・・と・・・それだけでした・・」

 

 「それは・・・まぁ・・・」

 「時間が問題なのかと思いもしました。しかし、それ以上時間をかけると自重に体が耐え切れなくなってしまう為・・・断念せざるをえませんでした・・・」

 

 「・・・・・・」

 「最近では、アナクロな殴り合いでは見向きもされないのでは思い、派手な光線銃や、レーザーブレードと言った機械技術の方にも力を入れ、ようやく実践投入できるレベルのマシンゴーレムも出来上がりました。」

 

 「それは、すごいですね」

 「・・・できたその月から、電気を作るための燃料費がとんでもなく掛かる様になりました・・・」

 

 「・・・・・」

 「最初は、充電と発電の為の装備を組み込んだんですが、怪人の蹴り一発の衝撃で大爆発が起きてしまったので、充電のみで動く、もしくは電子光波によるワイヤレスでの行動に切り替えました。

 当然、機械類を動かすための電気は、拠点の中の発電所で賄われる事になります。核融合による発電も効率がいいとはいえ安全を考慮すれば限度があり、物語のようにはいきません。そうなると、他の発電の要素が必要になるのですが・・・

 どうしても、他の発電では費用がかかりすぎてしまい・・・結局、運用は見送られる事になりました。」

 

 「・・・・・」

 「先日、きっと現れるはずと願って『堂』を占拠しましたが、やはり『正義の味方』は現れず・・・結局、何もせず帰還しました。」 

 

 「・・・・・」

 「もう、正直何を目標にすればいいのか、分からなくなってしまいまして・・・どうしたらいいのか・・・」

 

 「それなら・・・」 

 「・・え・・・」

 「それなら、作ればいいのでは?『正義の味方』を」

 「・・・おぉ・・・なるほど・・・。いないのならば作ってしまえばいい・・・のか・・・」

 

 「そこまで、『悪の組織』が作れたあなたなら、きっとできるはずです」

 「なるほど!それは考え付きませんでした!ああ、相談して本当によかった。ありがとうございます。生きる希望がわいてきました。」

 

 「いえいえ、お役に立てたようで何よりです」

 「それでは早速取り組む事にします。・・・『正義』なのだから、国家機関にしないとだめか・・・」

 

 ガチャッ・・・プー・・・プー・・

 

 ・・・後日、この国にてとある機関が発足するのだが・・・また別のお話・・・

 


読了ありがとうございました。

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