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ー2

「…透……」

散々教えるのを勿体ぶっていたわりに芸のない名前だとかなんだとか、どうせ罵られるものだとばかり思っていたが

意外な男の反応に少し戸惑ってしまう。

それどころか愛しいモノを呼ぶかのように優しくその名前を繰り返すのだった。


「ちょっと…何よ、気持ち悪い。」


「ん?おまえもしかして知ら…まぁいい、そのほうが好都合というものだ。」


「………?」

まったく妖怪という生き物はこんなにもわけのわからないモノなのだろうか。

しかしそれよりもそんな変な生き物をすんなり受け入れている自分に内心少し驚いていた。




「ごちそうさまでしたーっ」

どこの料亭のフルコースだよ、というくらい豪華ですさまじい量の料理をお腹の空いていた私は米粒大一つ残さずぺろりと平らげてしまった。


「……………おまえ…体型のわりによく食うんだな…。」


「何か問題でも?」


「いや、ただ…少し驚いているだけだ。」


大食いな自分がなんだか急に恥ずかしくなり

思わず言い訳をしてしまう。

「…お腹空いてたから……。あとすっごく美味しかった!」


「そ、そうか…」

戸惑いながらもどこか嬉しそうな表情を浮かべるこの男を

一ミリでも可愛い、だなんて思ってしまうとは、私も相当おかしな人間のようだ。



「さぁこれを飲んでもう一度ゆっくり休め。」

「何?それ…?」

差し出されたそれを見て若干ながらも警戒してしまう。


「俺が念を込めて煎じた薬だ。毒など入ってはおらぬから安心してお飲み。」


中を覗くと緑色のドロドロした液体が並々と湯呑みにつがれていた。

こういうものは少しずつよりも一気に飲むほうがいい。


…よし……いくぞ…


ゴクッ…ゴクッ…


「ぶはっ…」


「ん?全て飲んだか。偉い偉い。」


「苦い…」

口の中がネバネバしてなんだか気持ち悪い。


「良薬は口に苦しというだろう。明日には疲れもとれて元気になっている。…さぁ、もうお休み。」

先程から男の口調が妙に優しいのが気になったが

考え過ぎだろうと思い直す。


「…ねぇ、どうしてここまでしてくれるの?」


「神様は万人に情けをかけてやるものだろう。馬鹿女。」


「だから透って名前が…」

「さぁて、そろそろ俺は退散するとしよう。」

男は私の言葉を遮る様に

意地悪い笑みを浮かべ

腹だして寝るなよ、馬鹿女

などと嫌みを言いながら颯爽と部屋を出ていった。


「誰がお腹なんか出して寝るか!」

ほんっと余計なお世話。

これが神様なんだろうか?


はぁ……

私は盛大に溜息をつくと、

電気を消し、布団に潜り込む。


…そして間もなく睡魔に襲われ

私は深い眠りについた。





ー…

熈濤(イナミ)様、あの娘をどうされるおつもりです?」


「やはり…ー様を見つけることが最優先かと…」


「しかし何の罪もない人間の娘をそのような…」


「…?熈濤様、どうされましたか?」


「……まさか熈濤様、いけません!そのような事がたかが人間の小娘に務まるはずがございません!」


「………熈濤様?」


「…お前たちには関係なかろう。全ては俺の問題だ」


「しかし……」


「案ずるな。神である時間が少し長くなるだけだ。」


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