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空を見上げても
今夜は生憎の曇り空で
星一つ見えない。
静かな住宅街を私は行く当てもなく
歩き続ける。
喉が乾いたため
途中コンビニに寄って飲み物を買い、
近くの公園のベンチで一休みすることにした。
「ありがとうございましたー。」
残金は2850円。
お釣りを手紙が入っているほうの
ポケットにしまい、私は暗い夜の公園へ向かった。
ベンチに腰掛け
これからどうしようか…と途方に暮れていると、
ふいに見知らぬ男に声をかけられた。
「ねー君、ここで何してるのー?君1人?夜こんなところに女の子1人じゃ危ないよー?」
「1人じゃないです。友達を待っているので…」
私はとっさに思いついた嘘を並べてみる。
「よかったら一緒に来ない?そのお友達も一緒にさー。お兄さんが楽しいとこ連れてってあげるよ?」
「いえ、大丈夫です。もう行くので…」
「ん?何処に行くのかなー?俺らと一緒においでよー?」
はっ、としたそのときは既に遅く
気がつくともう数人の男達に取り囲まれていた。
「さっ、行こう?」
ぐいっと腕を掴まれ、怖くなった私はその手を思い切り振りほどいてしまった。
「は?何様だてめぇ。」
それが頭にきたのか男は更に強い力で私を掴んだ。
「痛っ…」
怖い……
「なんとか言えよ、こらぁ」
横から別の男に髪を掴まれ無理やり立たされる。
「やだっ…」
誰か助けて………
「お、こいつ意外と可愛い顔してんじゃん。ククッ。なぁ?お兄さんとキスしよっかー。」
男は強引に顎を掴まれ顔を近づけてくる。
顔を背けたくても顎が固定されていて動けない。
私はぎゅっと目をつむった。
…何か柔らかいものが唇にあたり、
ねっとりしたものが割って入ってくる。
そしてそれは口内を這いずり回り、私の舌に乱暴に絡みついてきた。
キモチワルイ…
「…いってぇ!!」
口内に広がる血の味と男の叫び声。
目を開けると前の男は口を抑え、涙目でこちらを睨んでいた。
「こいつ、俺の舌を噛みやがった!ちょっと優しくしたからって調子のってんじゃねーぞ!」
バシンッ
一瞬何がおこったのかわからなかった。
じんわりと頬に痛みが広がり、そこが赤くなる。
「この程度で許されると思ってんのか?ぁあ?」
ドカッ
今度は腹を蹴られた。
痛みで思わず涙が出る。
「泣いてんじゃねーよ。気持ちわりぃ。」
そう言ってまた殴られ、蹴られた。
ギャハハハハ……
バカにされることも殴られることだって慣れていた。
これを耐えればこのときさえ我慢すれば
後にちゃんと幸せが待っていたから。
だから生きていられた。
どれだけ貧しくったって
イジメられたって平気だった。
だって私には帰る家もあって
大好きなお父さんとお母さんも一緒だったから。
でも…今は違う。
もう帰る場所もない
あの大好きだった父も母もいない。
…何もないの。