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ー9

そうは言われても

なかなか心は決まらない。


それにどうしても引っかかることがある。


契約をしたとして

この男に力を渡してしまった後、

私はどうなってしまうのか。

いくらイザナミから守るといっても

そこで私が力尽きてしまえば全て終わりなのではないのか…

結局妖怪に全てを取られて終わり、なんて馬鹿な話あってたまるものか…。


そしてもう一つ、

今の話だと主人は熈濤ということになってしまう。

あいつの下僕になる事だけはごめんだ。


そもそもそれだけ力があれば

結界が張れるのであれば

イザナミなんか怖くはない。

自分の身は自分で守ればいいのではないのか…


思えば全てが本当の事かさえ怪しい。

熈濤や天琥君達が妖怪だ、というのは百歩譲って真実だとしよう。

しかし他はどうだろうか。

本当にこの神社に神様なんて存在したのだろうか。

イザナミに狙われている事は…?

私に力があったとして

全てこの力を手に入れるためにでっち上げたことなのではないだろうか…

それこそ狐に化かされた、といっても過言ではない。

最初から話がうますぎる。



「ねぇ…」

私は頭に浮かんだ疑問の一つをこの妖怪たちに聞いてみることにした。

「もし私が主従の契約とやらを結んだとして主人は…誰?」


「それは……」

二人の狛犬は言いにくいのか言葉を濁す。

やはり私の思った通り…

「お前だ、透。」


「えっ……………!?」

正反対の答えに戸惑いを隠せない。

「俺がお前の力をもらう。それをお前が制御する。元は半分以上お前の力だ。この力を私利私欲のためだけに使わぬよう、ちゃんと俺を見張れ。」


……………。


疑っていた自分が馬鹿みたいだ。

こんなにも思ってくれているのに

私は…………


「不器用なお前は自分の力を意のままに使う、なんて芸当出来るわけがないからな。だから俺様が…」

「透様!」

また熈濤の嫌味が始まったところで

また言い合いが始まっては、とそれを遮るように天琥が話かけてきた。

「幾つか言い忘れていたことがございます!」

「えっ?」

「制御、と申しましても具体的に儀式を…などそういった事をする必要はございません。」

「どう言う事?」

「透様は熈濤様に対し、願いをいう事が出来るのでございます。」

「願いを……」

「はい、その思いが強ければ強いほど熈濤様の力は強力なものとなられます。」

「そして一度願った事は絶対。」

「叶うまで熈濤様を縛り続けます。」


「そう…なんだ………」


「ちっ、余計な事を。」


「そしてもう一つ」

「言霊縛りというのがございます。」

「言霊…縛り?」

「はい、主人は言霊を発することで従えているものを縛ることができるのでございます。」

「相手を生かすのも殺すのもご主人様次第なのでございます。」

「…………。」


「これでわかったか?馬鹿女。俺たちがお前を利用などしようとしてないという事が。」

またもや思いをずばり、と当てられ気まずさから思わず目を伏せる。


「ごめん…なさい…」


「それでいい。わかったらさっさと休め。もう寝る時間はとうに過ぎている。」

男は相変わらず不機嫌な顔で私に命じると

自分はこちらを振り向きもせずさっさと部屋を出て行った。


「ねぇ、契約の事…」


「とても大切な事でございます。透様をお守りするためとは言え、その一生を全て変えてしまうことにもなりかねません。」

「故、我々もすぐに答えを求める様なことはいたしません。」

「じっくりお考えくださいませ。透様。」


では、お休みなさいませ

と口々に頭を下げ

二人も熈濤に続くように扉を開けて部屋から去って行った。




「願い事…か……」

もしも契約を結んだとして

私の人生が大きく変わってしまうのは分かりきった事。

でも…

この人といればもしかしたらもう一度

大好きな両親に会えるかもしれない。

もう一度、もう一度…。


私の願い事。

強い想い。



私は灯りを消すと

そのまま大きな天蓋付きのダブルベッドに思いきりダイブした。



バフッ、

とふかふかの枕に顔を埋めると

その瞬間優しい香りに包まれた。

私はその香りに誘われる様に

重い瞼を閉じると

疲れからか数分後には睡魔に襲われ、

そして間もなく夢の世界へと旅立った。


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