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短編2

よろしいならば逆ハーレムですわ

作者: 猫宮蒼
掲載日:2026/04/19



 ある日唐突に前世の記憶を思い出し、今いるこの世界がその前世で遊んだ事のあるゲームと全くといっていいくらい同じ世界だと把握したのは、本当につい先程の話だ。


 パチン、とまるでシャボン玉の泡が弾けた時のような音がしたような気がしたけれど、それすら気のせいだったのかもしれない。


 ともあれエリーゼは友人に誘われて行ったお茶会で、思っていたよりも豪華なメンバーね、なんて思った直後に前世の記憶を思い出したのだ。

 そして気付く。

 この場にいる令嬢たち全員――勿論エリーゼも含めて――そのゲームに出てくる登場人物であるという事に。


 ゲームのタイトルはさておき、内容は乙女ゲームである。

 そしてこの場にいる令嬢たちは皆、攻略対象と何らかの関わりを持つ者たちだった。

 ヒロインはこの場にいない。


 言ってしまえばこの場にいる者たちは全員ヒロインと攻略対象との仲を進展させるために出てくる当て馬やライバルといった存在である。


 ヒロインの邪魔をし、障害となり、そうして最後にはヒロインと結ばれた攻略対象に断罪される身。


 ざまぁされる側と言えばいいだろうか。


 断罪されるといっても皆が皆処刑されるわけではない。

 この茶会に誘ってくれた友人のアナベルは自分の父親よりも年上貴族の後妻として嫁ぐ事になるし、エリーゼは戒律の厳しい修道院行きだ。ちなみにこの中でもっとも身分の高い公爵令嬢――第二王子の婚約者である――ローズマリーは彼女の家と対立している派閥が裏で暗躍するためか、なんとラストは命を落とす。


 恋愛ゲームで悪役のラストにそんなバリエーションを持たされましても……と思わないでもないけれど、ラストで悪役がさらっと退場しましただけではヒロインの心の安寧が訪れないのかもしれない。

 いやでも何かが間違ってると思うのは、エリーゼだけではないだろう。


 現在、原作とも言える乙女ゲームが始まるよりも少し前の時間軸。

 エリーゼは本当に今しがた思い出したようなものなので、何一つ対策などは練れていないがしかし一足先に前世の記憶を思い出し、なおかつこのゲームについて知っている者たちは既に対策済みなのだそう。仕事が早くてエリーゼが何もしなくても解決しそうな勢いである。


「既にヒロインさんの居場所も把握済みでしてよ」

「凄い。有能」

「ちなみに彼女も転生者のようでしたわ」

「なんと」

「恐らく、ヒロインさんが一番最初に前世の記憶を思い出したのではないかしら?」

「そうなんですか!?」


「えぇ、わたくしがお忍びという形で市井に行った時にこっそりと確認してきましたけれど、その時には既に……でしたので」


 ローズマリー様の行動力凄い……とエリーゼは思ったが、しかし速やかに行動して対策を練らないと最悪彼女は殺されるのだ。それも決して楽な死に方ではない。そりゃあ対策を練ろうというものである。


「適当に事故を装ってヒロインさんを始末しようか、とも考えたのですが」

「わぉ過激。でも嫌いじゃないです」

「ありがとう。でもね、こうも考えたの。

 彼女を殺しても新たなヒロインが誕生するだけではないか、と」

「ありえる」


 ゲームのヒロインは貴族の血を引いてはいるものの今は市井で平民として過ごしている。


 それがまぁ、なんか色んな事情――創作物でよくある感じの――によって貴族の家に引き取られ、そうして貴族社会へと足を踏み入れる形となるのだ。


 そういった境遇の人間は、別にそこまで珍しいわけでもない。

 政略結婚という親の敷いたレールの上を素直に進む事に反発して、婚約者以外の相手に目移りし、決して認められる事のない恋なんてものに目が眩んで――という言葉のオブラートをぶち破るが、言ってしまえば手軽に恋愛して最終的に捨てても後腐れのない相手として平民に手を出すおバカさんが令息の中には一定数いるので。


 手出しをされた平民の女性も、相手の身分的に逆らえなくて仕方なく……という場合もあるが、あわよくばという風に考えている者もいるので、完全な被害者とも言い切れない。

 けれど、そうして生まれた子供は実のところ結構いるのだ。


 後々利用価値があると思い、そういった子を引き取る家もそれなりにある。

 ヒロインの家もそういったケースに該当しているだけの話だ。


 なので仮にヒロインを始末したとして、似たような境遇の他の誰かが新たなヒロインとして出てくる可能性はゼロではない。ローズマリーもそのあたりを考えて、直接的に始末しようとすぐに行動に移れなかったのだろう。


 しかしヒロインも転生者なのね……とちょっと転生者ばかりすぎないかしら、これ攻略対象のイケメンどもももしかして……? なんて考えていたけれど、どうやらその考えは顔に出てしまっていたらしく、ローズマリーや友人のアナベルにそっと首を振られてしまった。


「彼らは転生者ではありませんでした」

「そうですか……」


「えぇ、なので面倒な事になっているのです」

「えっ?」


 面倒、とは?


 そんな疑問が浮かぶのも当然の事で。


「彼らは原作通りなのですわ」

「あぁ、そういう……」


 ローズマリーの言いたい事をサクッと理解してしまった。


 乙女ゲームのイケメンは、誰も彼もがスパダリというわけではない。

 ツラは良い。何故って乙女ゲームで不細工しか出てこなかったらそもそもそんなゲームは売れないから。勿論話題作りとかネタで手を出す人はいるかもしれない。ゲーム実況者とか。けれども真に乙女ゲームをしてときめきたい、という考えなら、まずその手のプレイヤーは手を出すはずもない。まぁ気になるからじゃあゲーム実況とかの動画見て済ませるか、で終わるのが目に見える。


 ただ、まぁ……ツラは良いがそれ以外が……というキャラもいるのは確かなのだ。


 性格に問題があるとか、家庭環境に問題があるとか、過去のトラウマのせいで精神面に問題が……だとか。

 実に様々なバリエーションが存在している。そういった彼らの心に寄り添い、時に問題を共に解決し、そうしてヒロインとの絆を育てていく。


 ゲームであればそれでもいいと思う。


 キャラの内面が深く描かれる事で、最初はあんまり好きじゃなかったけどこういう事ならそりゃそうなるよなぁ……と納得できる事もあるだろうし、そうしてそのキャラのエンディング後にはすっかり好きになっている、なんて事も乙女ゲームではよくある話だ。


 最初から気になったキャラだけ攻略しよう、というプレイヤーはさておき、とりあえずコンプ目指そうとすると興味のない相手を最初に攻略しがち。何故ってモチベーションが続かなくなるから。

 けれど、そうやって興味ないなぁと思っているキャラの方が最終的に好きキャラになっていたりするので、乙女ゲームはいつだってダークホースの坩堝である。


 だが、まぁ。

 それは乙女ゲームだからであって。


 ゲームだから多少面倒な性格の相手でもプレイヤーはヒロインとしてうんうんと優しく頷いて話に耳を傾けて、全肯定botかと思われる勢いで否定的な事は言わず相手の自己肯定感を上げていくのも苦ではないが、現実にそれをやれと言われると中々である。

 ゲームであるから面倒な相手でもエンディングを目指して絶対こいつの母ちゃんよりも甘やかしてるぞヒロインは……と思いながらも攻略するが、しかし現実でそれをやれと言われると冗談ではないな、と思うわけで。


 ゲームならエンディングという明確な終わりがあるからいいけれど、現実でそれをやるとなると、ゲームのエンディング後も続くのだ。


 精神的に不安定なものを色々と抱えている相手の攻略とか、ゲームだとある種その場凌ぎみたいなものだけど、しかし現実でそれをやれというのはもうぶっちゃけると精神カウンセリングみたいなものだ。

 ヒロインはカウンセラーでもなんでもないのに。


 画面越しに現実の自分には害がないからこそ性格に難があるタイプの攻略対象のキャラでもきゃっきゃできるが、現実だと関わりたくなさ過ぎて無理。


 ヒロインと仲を深めていくうちに、ヒロインに対してはスパダリっぽさを出していくけれど、しかし好感度が低い時はぶっちゃけて言ってしまうとただのめんどくせぇ男でしかない。


 エリーゼと関わりのある攻略対象者も、言ってしまえばそういうめんどくせー男だ。

 自分がヒロインの代わりとなって献身的に支えるにしても、エリーゼにヒロイン補正も何もなければその支えを逆に鬱陶しがられるかもしれないし、仮に上手くいったとしても結婚後もそうやっていかなきゃいけないと考えるととても面倒。好感度が高くなってもエリーゼの婚約者でもある彼は、ヒロインに向けるようなスパダリさをエリーゼに果たして見せてくれるかも定かではない。


 考えれば考えるだけ、面倒だなぁ……となるのが現実である。

 いっそ彼らも転生者であれば話が早かったのに。


 そう思ったのはエリーゼだけではないのだろう。だからこそ、打てる手は既に打ってある、とローズマリーが言うのも理解はできた。


「実を言うと、王妃様も転生者なの。だから話が上手く運んだと言っても過言ではないわ」

「なんと」

 この世界女ばかりに転生者が偏りすぎていないだろうか。

 そう思っても、エリーゼたちに何ができるわけでもない。


 ともあれ、将来断罪される可能性が一ミリでもある以上、それを上手い事回避しなければならない。自分たちの平穏な生活のために。


 といっても、ゲームと異なったのはエリーゼの婚約が確定していない事くらいだ。

 他の令嬢たちも似たようなもの。

 ゲーム開始時点で婚約が結ばれている者たちの婚約は確定ではなくあくまでも候補、という感じで完全な決定事項ではない。


 婚約者でもなくただの友人とか幼馴染といった関係の者たちは、もっと気軽だ。

 それとなく距離を取ればいいだけの話なので。


 ゲームだと友人や幼馴染といった立場の令嬢たちは、仄かに相手に想いを寄せていたからヒロインと対立する形となってしまったけれど。

 しかしここではそうならない。

 わざわざ攻略対象の男と関わろうと思っていないのだ。


 なのでそういった令嬢たちからすれば彼との関係は、幼馴染だけど今はそこまで関わってない、とか、友人ではあるけれどその友人というのも知人以上友人未満とかそういうギリギリかろうじて友人と言えなくもないかなぁ……? というくらいの薄い関係だ。


 エリーゼも婚約を確定させていないので、仮にヒロインが婚約者とくっついても大勢の前で婚約破棄を突き付けられたりする事もない。


 ちなみに婚約を早い段階で確定させないのは、王妃様によるものだった。

 どうにも過去に、やらかした相手がいたようなのだ。


 幼い頃に決められた婚約に反発して、年頃になってから出会った他の女性に目移りし、そうして大勢の前で婚約破棄を宣言するなんていう破滅ルート一直線みたいな出来事が何度か。


 一度ではなく何度か、という点で対策を取りやすくなったのだろうとは思うが、まぁそんな話を聞かされてもエリーゼは遠い目をするだけだった。本当についさっき前世の事を思い出したエリーゼには、既にできる事なんてほぼなかったのである。



 婚約を正式に結ぶのは、貴族たちが通う学園を卒業後、という感じで決まった事でエリーゼの婚約も現時点では仮のままだ。

 正式に決まっていないからこそ、お互い上手くやっていけそうだと思うのならそこから互いに歩み寄り交流を重ねていく事になるし、上手くやっていけそうにない場合は他の相手を探す事も可能。婚約が確定した状態だとそれは浮気であるととられてしまうが、正式に婚約していない現状では他に良い相手がいるのならそちらと縁を結びなおしても構わないのだ。

 それを悪用する者も現れるだろうけれど、この仮婚約システムは概ね好評だった。


 勿論、全ての貴族にそれらが適応されるわけではない。

 第一王子に嫁ぐ予定の令嬢は王妃教育などもしなければならないので、あまりに遅い時期に婚約をする事になってしまえば後々大変な事になってしまう。

 けれども、そうでもない貴族家の婚約であれば、むしろそちらの方がスムーズに事が運んだくらいだ。


 親の決めた婚約というものに反発心を抱いていた者も、確定したわけではないと知れば心に余裕ができたのか、改めて歩み寄って上手くいく者、やはり相性が悪いなと判断し他の相手を探す者と、様々に分かれはしたけれど。

 無理に上手くいかない者同士をくっつけたところで最終的にどちらの家にも不利益な事が発生する可能性を考えれば、どうしてもっと早くにこういう風にしなかったのだろう、と前世の記憶なんてない何も知らない貴族たちは思ったりもしたのであった。



 そういうわけでエリーゼは、本来ゲームで婚約していたはずの攻略対象とは婚約者候補という状態で当たり障りのない関係であった。

 エリーゼとしては積極的に関わりにいくつもりはない。何故って、貴族たちが通う学園で既にヒロインが彼らに接触していたので。

 下手に関わって、やれヒロインを虐めただのなんだのと言われて断罪ルートに入るような事は絶対に避けたかったのだ。


 だからこそエリーゼは、どうやら彼は他に想いを寄せている相手がいるようですよ、と両親に報告を入れて、婚約者候補であったけれど多分互いに上手くやってはいけないだろうと暗に匂わせ、両親から「それじゃあ他の相手を探しておこうか」という言葉を引き出したのである。


 ちなみに他の攻略対象の婚約者になるはずだった令嬢たちも概ね似たようなものだった。


 何故ってよりにもよってヒロインさんが逆ハーレムルートに突入しようとしていたからだ。


 本来であれば眉を顰めてしまいそうな状況だが、しかし前世の記憶を持つ令嬢たちからすればむしろ全力で逆ハーレムルートに突入してくれという気持ちである。

 一人とくっつくのでもいいけれど、その場合メンタルがめんどくせー男である攻略対象者と結婚しないといけない相手もいたので。


 ゲームのキャラなら全肯定してもいいけど、現実で関わるとなると流石にそれは無理だったので。

 ゲームプレイ中だけならまだしも、それ以外の人生全て、ずっと同じようにはできるはずがないのだ。

 いやお前それはどうなの? みたいな選択肢を選びたくても好感度や攻略的な意味で選べなかったりするものでも、ゲームなら割り切れるけれど。

 だが現実で自分の思った事を何もかも飲み込み続けるとどうなるか。


 とんでもないストレスになる。


 なので婚約者候補となった時点でエリーゼは距離をある程度取り続けていた。向こうが歩み寄ろうとした時だけ同じくらいに歩み寄ったけど、向こうはそこまで歩み寄ってこなかったのでエリーゼも距離を保ったままだった。

 それだけの話である。



 結果としてヒロインと彼の仲は、あっという間に進展した。

 だがそれで構わない。あくまでも婚約者『候補』なのだ。

 なのでゲームのストーリーのようにヒロインに対して嫌がらせをしようだとか、そんな事も思わない。むしろあんな面倒な男を引き取ってくれてありがとうという気分である。


 そうして候補の彼とはあまりうまくいきそうにありませんわ……と親に報告した甲斐もあって、エリーゼには別の婚約者候補ができた。こちらはゲームの攻略対象ではない、完全なるモブであるけれど過去になんか超絶重たい何かを抱えているわけでもなければ、トラウマがあって精神面が不安定という事もない。勿論過去にそれなりに嫌だなぁ……と思うような経験をしたものの、それをいつまでも引きずるような事のない、言ってしまえばどこまでも平凡な相手だった。

 悩み事を聞かされる事があっても、同じようにエリーゼの悩みを一緒になって解決しようとしてくれる、エリーゼにとって一緒にいて安心できる相手だった。


 他の攻略対象者と関わりのある令嬢たちも同じようにモブと呼ばれていた相手と縁を繋いでいたようで、式には是非来て下さいね、なんて互いに話に花を咲かせていた。

 ヒロインにわざわざ絡みに行く必要もなければ、精神面が不安定な攻略対象に気を使い続けなければならないわけでもない。

 ゲームでは悪役だとか当て馬扱いだった令嬢たちとも、転生者という共通点からすっかり仲良くなっていたのでエリーゼたちはとても平穏に学園生活を送り、そして無事に卒業したのである。


 悪役が悪役しなかったことで、もしかしたらヒロインと攻略対象との恋愛は盛り上がらなかったのではないか。

 もしその結果特に恋が発展せずにくっつかなかったら……なんてチラッとエリーゼも考えたりはしたけれど。


 だがしかしそんな事もなく、ヒロインは見事攻略対象たちを全員落としてみせたのである。

 逆ハーレムの完成であった。


 邪魔が入って結果恋が燃え上がる、という場面もゲームにはあったがその邪魔をこちらは一切していない。それなのに何故……と思う部分もあったけれど、それについては他の攻略対象たちが上手い事作用したらしい。


 最近あいつとも仲いいよな、もしかして俺の事なんてもうどうでもよくなったのか……?


 そんな風にじめじめ鬱陶しい系の攻略対象その1が別の相手との仲を勘繰ってみたり、それ以外にも他のキャラが他のキャラと仲良くしているヒロインを見て嫉妬したり。

 それらをヒロインは上手い事言いくるめたかしたらしく、最終的になんだかんだみんなでくっついたというわけであった。


 ちょっとエリーゼには何を言われたのか理解できなかった。


 いやだって絶対そんなの俺とこいつとどっちを選ぶんだよとか言って修羅場始まるやつじゃん……

 最悪殺傷沙汰に発展するやつじゃん……


 そんな風にサスペンス風味漂う状況を、ヒロインは綱渡りでもするかのようにギリギリすり抜けて乗り切ったらしい。そこまでして逆ハーレムにせんでも……と思ったが流石に本人には突っ込めない。


 ゲームであれば、ヒロインと誰か一人、攻略対象のキャラが結ばれた場合はエンディングで結婚式の流れになったりもしている。式すっ飛ばして結婚後のシーンを垣間見れるキャラもいた。

 ただそれはあくまでも誰か一人と結ばれたエンディングであって、逆ハーレムルートは少し異なる。


 誰を選ぶでもなく皆の事がだぁいすき☆ みたいなヒロインに、それぞれのキャラたちは仕方がないなというようにそれを受け入れていた。

 つまりは、卒業した直後がエンディングなのである。

 結婚式だとかその後の生活だとか、そういうシーンは一切描写されない。


 それでもゲームなら、それぞれの攻略対象者たちはそこそこの権力を持っていたし、精神面における問題が解決したのもあって頼もしくなっているから卒業後の生活もどうにかなりそうではある。

 もっとも、マトモな生活にはならないだろうが。


 だからこそゲームでのエンディングは卒業した直後だったのだろう。



 そして既にゲームでのエンディングを迎えた後である。


 悪役令嬢による嫌がらせもなければそんな彼女たちを断罪する必要もどこにもなかったために、ヒロインは少しばかり拍子抜けしていた様子だが、それでも当初の目的の逆ハーレムを達成したから問題ないと思ったのだろう。何が何でも悪役令嬢たちをどうにかしてやろうとはしていなかった。


 まぁ、無理に断罪しようとしてもヒロインと一切関わっていないのだから、そんな事をやろうとすれば流石にヒロインの方が悪者になってしまう。



 結局ヒロインはエリーゼたちに喧嘩を売るような真似はしなかったし、であればエリーゼたちも学園生活は平和なものだった。


 当然断罪される事もなく。


 卒業後エリーゼはゲームで婚約者だった相手とは別の相手と結婚したし、その生活はどこまでも穏やかだった。

 なので、ヒロインたちの存在を思い出したのは、久しぶりに友人に茶会に誘われて彼女たちの話題が出た時である。



 ヒロインはゲームと同じようにキャラの攻略をした。

 攻略対象者たちもゲームと同じくヒロインによって救われた。


 ただ違うのは、その時点で彼らには婚約者といった存在や、彼に想いを寄せる友人や幼馴染といった存在が既に離れた後だった事だ。


 救われて精神的にようやく前を向く事ができた彼らの想いの先は当然ヒロインであるし、そしてそんなヒロインは皆の事が大好きだと言う。

 誰かを選べば他の誰かは選ばれない。そんな当然の事を彼らも頭では理解していたが、その時点では受け入れられなかった。


 自分が一番彼女に愛されているとは思う。


 思うけれど、もし誰か一人を選べと言った時に自分が選ばれなかったら?


 そんな可能性を考えると、折角前を向いて生きていこうと思っていた心がぽっきりと折れてしまいそうだった。


 ――そう、彼らは確かにゲームと同じように前を向く事はできても、本当の意味でメンタルが鍛えられたわけではなかった。過去のトラウマを乗り越えて精神面が強くなったかと思いきや、しかしヒロインには他にも好きな相手がいる。皆、彼女に救われているとわかっているから、下手な真似ができなかった。

 自分を救ってくれた彼女に嫌われたくはない。

 その一心で、彼らは内心に生じた嫉妬や黒い感情を上手く抑え込んでいたのである。


 精神的に強くなれたように見せて、その実ヒロインに依存していた。


 ヒロインが誰か一人を選んでその一人と結ばれていれば、その一人は依存ではなく互いに支え合えるようになっていただろう。

 だがしかしここにいるのは精神的な意味で完全に自立した男ではなく、苦難を乗り越えはしたけれどヒロインに依存しつつある連中である。


 本来のルートなら家の跡取りになれていたはずの青年は、しかし精神的に未熟であると家長に跡取りは不向きとされた。まぁ当然だろう。嫁を連れてくるならいざ知らず、他の男も侍っているし女も女で誰か一人を選ぶわけでもない。子供ができたと言われても、父親が誰であるかもわからない可能性がとても高いのだ。


 だからこそ大半の攻略対象者は跡取りという立場からはしごを外されてしまったし、いずれは騎士となって身を立てようとしていた者も、やんわりと家から追いやられた。

 文官を目指していた者も同様である。


 初っ端からスキャンダラスな状態の人材を迎え入れたら、どんなトラブルを持ち込まれるかわかったものではないのだから。


 婚約者候補としていた令嬢たちと上手くやっていれば……と思う親もそれなりにいたけれど、そんな候補の令嬢と関わる気はないとばかりに行動していたのは悲しい事に自分たちの息子である。

 この時点で彼らを後継者にするわけにはいかないと、早い段階で家の軌道修正ができたのだけは救いかもしれない。


 全く何もできないと言う程の無能というわけではない。


 だが、華々しく注目を集めるような場所では働かせる事ができないだけだ。


 だからだろうか。


 ヒロインとそんな彼女に侍る者たちは揃いも揃って家を追い出される立場であるけれど、王家から与えられた領地で暮らす事となった。

 一応それなりに使えない事もない人材である男たちには、その領地を盛り立ててもらおうという算段である。

 ヒロインは王都から離れる事に納得がいかない様子ではあったけれど、王家の命となれば流石に逆らうわけにはいかないと理解していたので従った。内心で文句は言いまくりだろうけれど、表向きは素直なものである。


 そんなヒロインに楽な生活を与えてあげようと、彼らもまた奮闘したのだ。



「……それで、王家が与えた領地はそれなりに賑わったけれど、最終的に皆いなくなった、って事?」

「そうみたい。まぁそうよね、いくら精神面でのあれこれが片付いたって言っても、染みついた色々はすぐには消え去ったりしないもの。ゲームの中だけの間ならヒロインだっていい顔し続けられるだろうけれど、エンディング後もそれを続けなければならない、って気付いてなかったんじゃない?

 だからあんな事に……」


 アナベルはそう言って、一息つくように紅茶を喉の奥へと流し込む。

 それから小さめに作られたマドレーヌを口に運ぶ。

 芳醇なバターの香りと小麦や砂糖の控えめな甘さに僅かに表情が緩んだのを見て、エリーゼも同じようにマドレーヌを口に運ぶ。直後にはアナベルと同じように自身も表情を緩ませた。


 エリーゼもアナベルも直接ヒロインたちのその後を見たわけではない。

 あくまでも噂だ。


 だが、ヒロインたちのその後は最初こそゲームでのエンディング同様輝かしく見えるものではあったらしい。


 王家管轄の領地――それも寂れた場所――に追いやられ、そこを盛り立てるようにと命じられた彼らは、ヒロインとの幸せな生活を最初こそ夢見ていたことだろう。

 ヒロインに苦労はさせたくないと、それぞれが領地経営に力を入れた。

 ヒロインのために、という共通の目的を持っていた彼らは力を合わせた。


 王家としては別に彼らのために領地を渡したわけではない。単純に寂れていて、手を付けるにも他にもやる事が多く優先順位としてその領地は下の方だった。

 そこにヒロインたちの存在が丁度良かっただけなのだ。

 別に寂れたまま改良も何もされなくても以前と変わらないまま。もし上手くいけば王家としてはラッキー。それくらいの気持ちだった。

 跡継ぎにもなれず家を追い出される事になった彼らが、自棄になって問題を起こされても面倒だという気持ちもあった。完全なる無能であれば破滅する方向に誘導させて自滅させても良かったが、それなりに優秀であるが故に放置するのも困りもの。

 だからこそ、王家から領地を与え彼らに役目を言いつける事で、彼らの行動方針は強制的に定められてしまった。


 もしその上で領地から逃げ出すような事になればその時はどうとでもしようがある。

 逃げずに領地で奮闘するようであれば、そのままに。


 王家の思惑としてはそんなところだろうか。


 そこに彼らが気付いていたかは知らないが、一人の女を大勢で共有するという常識を疑うしかない状況を良しとするような連中だ。

 王家からの命を受けて追いやられた事を自覚したならともかく、そうでなければ王家は彼らの真実の愛とやらが本当かどうかを見定めようとしているのだ、と考えたかもしれない。

 王家に真の意味で認められれば、晴れてヒロインと過ごすのも何の憂いもなくなると、そう考えたかもしれない。


 だがしかし、その生活は長続きしなかった。


 ヒロインのために、と皆が皆動いたのは確かだ。

 領地を発展させて王都のように都会になれば、田舎暮らしを嘆くヒロインが喜ぶだろうと思った。

 領地を発展させるために資金も増やさねばならないが、領民がそもそも少なすぎる。

 だからこそまずは人を増やさなければならないと、領地に民を募集したりもした。

 財源がなければ彼らとて何をするにもままならないのだ。


 だが、呼んだからすぐ人がやってくるわけでもない。

 生活に旨味がありそうだと思われればまだしも、これといった特徴もない田舎だ。

 学の無い民草であっても旨味を感じられなければ今の生活を捨ててそこに行こうとはならなかった。


 最初の数年は基盤を整える必要があったからこそ、彼らは忙しい日々を送っていた。

 合間合間でヒロインといちゃいちゃし、精神的な英気を養いつつ目まぐるしい日々を過ごした。

 一日の時間があっという間で、気付けば数日どころか数か月経過していたなんて事もあった。


 そうして努力が実ったのか、少しずつ領地は繁栄していった――が。



 ヒロインとの関係は発展しなかった。



 精神的に不安定な面を抱えていた彼らは、ヒロインによって立ち直りはしたものの精神的な自立というより依存状態にあった。それでもしばらく問題がなかったのは、ヒロインと同じ屋敷で暮らし、彼女の存在が身近にあったからだ。忙しくても顔を全く合わせないという状態ではなかったからこそ、彼らも彼女の幸せのために行動できたのである。


 けれども、ヒロインからするとそれは面白くなかったのだろう。


 自分を放置して仕事にかまけてばかり。そう思ったのかもしれない。


 皆が皆ヒロインを放置していたわけではないが、それでも屋敷の中で大事に大事にしまい込むようにされていたヒロインからすれば退屈な日々だったのは間違いない。

 前世の記憶なんてないままに、この世界の令嬢として生まれ育っていたのならそもそもこの状況は異常でしかないのだが、それでも屋敷から外に出る事のない日々に不満を抱く事はなかっただろう。

 令嬢とて外出を全くしないわけではないが、生活のほとんどは屋敷の中で完結している。


 だが前世の、自由に行動できる頃の記憶があればどうだろうか。

 いくらイケメンどもと結ばれたとはいえ、自由に外を出歩けるでもなし。

 むしろ複数いる恋人たちの何人かはヒロインの傍にいた。皆が皆仕事をしてヒロインを一人にしていたというわけではない。関わる時間の差はあれど、決して彼女を一人にしないようにしていたのである。

 むしろそうやってヒロインと関わる時間を捻出しないと彼らも精神的な疲労がとんでもなくなる……というのもあったのかもしれない。


 ヒロインが寂しいから一人になりたくないの……という依存しがちなメンタルの持ち主であったならそれでも問題はなかった。けれどもそうではなかったようで、そうなると常に誰かしら近くにいる状態は見張られている、とやがて感じていったのだろう。

 仕事の内容からもそれなりに自由時間をとれる恋人を疎ましがり、別の仕事が忙しい相手と居たがるようになった。けれどもそちらはヒロインのために仕事をしているので、せめてキリのいいところまで……と仕事を優先したようではあった。


 今ここを乗り切れば後でヒロインとたっぷり一緒の時間を過ごそうとでも思っていたのかもしれない。


 けれどもヒロインはそれを自分を蔑ろにしていると思ったのかもしれない。


 そうやって、少しずつヒロインと彼らの関係に亀裂が生じ始めてきた。


 だったらこっちも好きにやらせてもらうわ、とヒロインが外へ行こうとすれば彼らはそれをやんわりと押し留める。まぁ実際寂れた領地に娯楽らしいものはない。いずれ発展すればともかく、その時点ではむしろ生活水準を引き上げる方に比重が傾いている。


 不満そうなヒロインと、少しでも彼女の慰めになるようにと時間を割く者もいるにはいた。けれども娯楽らしいものもない寂れた土地でやれることなんてたかが知れている。それらが最終的に性的な行為にばかりになってしまうのも時間の問題――かに思えたのだが。


 ヒロインの恋人たちはその頃にはヒロインから徐々に気持ちが離れつつあった。

 離れたというよりは、ヒロインが彼らを捕まえておかなかった、というのが正しいのかもしれない。

 ゲームのシナリオ通りに逆ハーレムルートに突入し、若干原作と異なる展開であったもののそれでも見事にエンディングまで到達した。

 達成感はその時点で最高潮だっただろう。


 だが、そこが最高潮であるというのはつまり、その後は落ちる一方なのだ。最高潮のままを維持し続けるためには、ヒロインも相当努力しなければならなかった。けれどもエンディングを迎えその後はゲームでも描かれなかった場面へと移る。今まではゲームという媒体で彼らの考えている事もどういう風に応対すればいいかも答えがわかりきっていたが、この先はそうではない。


 勿論彼らの好みの反応というものはあるだろうけれど、ゲームのイベントらしきものが目の前で展開されても気付けないかもしれないのだ。

 現にヒロインは彼らが忙しくして自分にずっと構ってくれるわけではない事に不満を抱き始めていた。もう彼らは自分のもの、という認識があったのかは知らないが、ともあれ少しくらい酷い対応をしても好感度はそう落ちないと思ったのかもしれない。既にエンディング後なのだから、好感度がこの先下がらないと思い込んでいた可能性もある。


 だから、自分にもっと構えだとか、アレが欲しいこれやって、そんな風に我侭を言い始めた。

 ヒロインの要望はすぐ叶えられるものもあれば、難しいものだってあった。

 まぁそうだろう。田舎で物流も都会と比べて微妙なところだ。アレが欲しいこれも欲しい、そんな風に言われたところですぐに用意できるわけでもない。

 そうでなくとも生活費は潤沢にあるわけではないのだ。

 彼女の願いを叶えるためにはまず領地を富ませなければならない。けれどヒロインはそんな事は知ったこっちゃないとばかりな態度だ。


 自分を支えてくれて、過去の心の傷を癒してくれた女性。

 けれども、その女性は今、なんだか悪い方に変わってしまったように思う。


 そんな風に思い始めた者もいた。

 中にはヒロインと落ち着いて話し合おうとした者もいたけれど、しかしヒロインは仕事の話になると聞く耳を持ってくれなかった。

「そんなつまらない話じゃなくて、もっと楽しい話をしましょう。ずっとここにいても気分が滅入るばかりだもの、そうだ、今度お出かけしない?」

 そんな風に。


 今まではこちらの事情を慮って気遣ってくれたはずの彼女が、自分たちの明るい未来のために頑張っているのに何故だかそれを理解してくれない。


 ヒロインへの気持ちが離れつつあるのも無理からぬ事であった。



 結果として、彼らは仕事に逃げた。


 話が通じなくなってきたヒロインと一緒にいてストレスをぶつけられたりストレスを溜め込むくらいなら、領地をもっと豊かにしていく方が最終的に自分たちのためにもなる。

 ヒロインのために、と思っていた領地経営はやがて自分たちのためになり、その頃にはヒロインは自分の思い通りにならない事にヒステリーを起こし気に入らない事があるとすぐ喚き散らすようになっていった。


 そうなれば、ますますヒロインと彼らの心の距離は離れていく一方だ。


 そんな中で、ヒロインは恋人たちの誰かの地雷を踏むような事を言ったらしい。


 こんな事なら貴方たちの事なんて好きになるんじゃなかった、とかそういう風に言った可能性は確かにあり得る。

 実際はさておき、どちらにしても彼らの心がヒロインから離れる結果になったのは確かである。


 結果として、彼らはヒロインと暮らしていた屋敷を出て別の家を借りてそちらで暮らすようになったり、他の場所に引き抜かれて新たな職場で心機一転頑張る者もいた。


 仕事に逃げた者もいるし、その頃にはすっかりヒロインへの想いが冷めて、「恋人なんてもういらない。俺たちの友情は絶対だろ」なんて今更のように友情を深める者もいた。

 なんだったらヒロインじゃない別の女にかつてのヒロインのように寄り添われて、結果としてそちらと結ばれた者もいた。


 そもそも逆ハーレムルートはヒロインが攻略対象の誰も選ばず皆と一緒にずっといようね♡ というものなので、誰とも結婚をしていない。

 つまり、ここで彼らが他の女の元にいったとしても、恋人関係が破綻しただけでしかないのだ。


 彼らとてメンタルが弱々しくとも、常識全部を捨て去ったわけではない。


 だからこそ、王家に任された――というか押し付けられた領地経営に関してから逃げるつもりはない。

 それをやると本当に自分たちの身が危うくなることを彼らも理解していたので。


 だから領内でヒロインと距離をとりつつ、彼らは新たな人生を歩み始めたのだ。


 皆が皆一斉に出て行ったわけではない。

 それでも屋敷から誰かが出て行けばその分静かになるのは言うまでもなく、最後まで残っていたのは仕事に人生を捧げると決めるまでにのめり込む事になった者たちだけである。

 だが彼らは彼らで別の場所に部屋を借りて仕事をしていたので、ヒロインが待つ屋敷に戻る事はなくなりつつあった。


 そうなると屋敷に残っていたのは当然ヒロインと、屋敷の中の事をする使用人たちだ。

 ヒロインの機嫌が悪く周囲に当たり散らすようになって、男たちが戻ってこなくなると矛先は使用人に向くようになる。

 最後に出て行く事にした男に「ここにはもう戻らない」と言われた時点で、使用人たちも隙を見て屋敷を出て行く事にしたようだ。


 そうなると最終的に残されたのはヒロインだけだ。


 前世の記憶があるとはいえ、屋敷の中には便利な家電というものはない。

 食事の支度をする使用人もいなくなり、ヒロインはしぶしぶ身の回りの事を自分でやろうと試みはしたようだが、上手くはいかなかった。仮に前世で自分の世話を自分で見ていたとしても、今世と比べるとあまりにも勝手が違いすぎた。


 ヒロインもこのままでは自分の生活がままならない、と気付いたようで、屋敷で過ごすのはやめないが、仕事を探し始めたらしい。


 そうしてどうにかこうにか正社員――ではなくバイトにありつく事はできたようで、屋敷で過ごすより住み込みで働いた方がマシとなったのか、彼女も屋敷から出る事にしたようだった。

 そしてどうやらヒロインにも最近気になる男性ができたようだ。



「……意外とあの人たちの行く末を気にしている人たちが大勢いるので、度々あの領地に誰かしら向かわせて情報収集させてるようなのよ。

 それで、集めた情報を皆で交換して繋ぎ合わせた話がこれですわ」

「最終的にヒロインもメンタルぶれっぶれになってますね」

「そのようです。それが最近は新たな恋を見つけて少し回復しつつあるようですわ」

「誰か一人に絞ってたらカウンセリングする相手も一人で済んだのに、全員に手を付けるから皆のメンタル管理しないといけなくなったりしたんでしょうねぇ……」

「カウンセラーでもないのに本業でもやらないようなレベルで皆さまの精神的な面倒を見ようとするから……」


「それで、ヒロインさんの新たな恋のお相手とは上手くいきそうなんですの?」

「さぁ? それについてはまだわからないのです。お相手がそもそもヒロインさんを恋愛対象として認識してるかどうかも……

 あ、でも」

「でも?」

「お相手は彼らのようなタイプではなく、包容力のある純朴そうな年上の男性との事ですわ」

「それヒロインさんオギャりかけてない?」

「さぁ? わたくしにはなんとも」


 穏やかに微笑む友人のアナベルに、エリーゼはそれ以上何も言えなかった。


 めんどくせータイプの男ばかりだというのに、それでも逆ハーレムルートを狙ったヒロインさんに非が全くないわけではないけれど。

 めんどくせー男たちをここぞとばかりに押し付けられたって事にもし気付いたら面倒な事になるかもなぁ……とは思うわけで。


 ヒロインさんがあの領地を抜け出すのは無理だと思っているけれど、それでももし気付いたら誰かのところに乗り込んできそうだわ……もしそうなったらまた面倒な事になりそうね。


 なんて考えて。


(まぁ、逆ハーレムなんてロクでもないって学んだ事でしょうし、次はもうちょっとマシな結果になるといいわね……)


 正直その考えにもっと早い段階で至ってくれていたら、もしかしたらヒロインも同じ転生者なのだから、友人になれたかもしれないけれど。



 まぁ、とても今更過ぎる考えなのでエリーゼはその考えを声に出す事もなく、そっと心の奥底にしまい込んだ。

 次回短編予告

 なんか……転生先が友人が作ったドマイナーなゲームの世界だったんですよ……

 でも自分は主人公からモブに転向できたのでとりまセーフっすわ。


 次回 転生先は一見王道でした、が……

 俺は勇者なんてやめて一般市民になるぞー!

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― 新着の感想 ―
同じ屋敷の屋根の下でのエンディング後の逆ハーレム、刃傷沙汰が起こらないわけもなく…ということで「そして誰もいなくなった」な物騒なパターン想定してしまっていましたので、大丈夫!穏便なラストですよ!(*⁰…
一度ではなく何度か もうこの一言だけで遠い目になるよね この物語の平穏さは王妃様を始めとした先人たちの苦労と対策の上に成り立ってるんですねえ 内政チートじゃなくても政の大切さと大変さが分かる話でした
攻略相手をカウンセリングするのが乙女ゲームの攻略とか、xで誰かがポストした乙女ゲームへの語り、そのものがそのまま短編に取り込まれ過ぎてて、話が入って来なかった。
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