超訳・蜘蛛の糸
とんでもないスケールのプロジェクトが完了する。
工期は15年。
宇宙エレベーター。
プロジェクト『バベル』。
人類は、かつてガガーリンが言っていたことを、だれでも体験できるようになる。
未曾有のプロジェクトだ。
難航続きだった。
特に宇宙と雲の間が難航していた。
結果、搭は神に壊されることもなければ、言葉が突然バラバラになることもなかった。
プロジェクト完了の式典は、世界各国の首脳陣、報道機関、国連の関連機関が集結していた。
NASAの局長の挨拶ののち、搭を覆っていた大きい幕が開く。
長い街道の先にそびえたつ灰色の搭が建っている。
宇宙へは6日、往復で12日間の旅。
地球の遠心力を利用して空を昇る。
中はホテルのようになっており、低グレードの部屋はベッドと椅子、机が一通りそろっているだけだ。
風呂、トイレは共有である。
この部屋に窓はない。
高グレードの部屋にしか窓はなく、低・中グレードの利用者はラウンジの窓から外を眺めることができる。
低グレードと中グレードの違いはラウンジで頼める料理とドリンクの違いと、部屋にユニットバスが追加される程度の違いだ。
今は雲よりは上だが、まだ暗くなっていない。
ついに頂点に着いた。
ガガーリンは言っていた。
「地球は青かった。だが神はいなかった」と。
地球は青く、大きく、球であるのにかかわらず、縁が直線に見えるほどだ。
だが確かに曲線を帯びていた。
これまで見たどんな景色より壮大で、怖く、そして美しかった。
12日間の旅が終わった。
大地に足をついて、空を眺める。
6日前、空の向こう側に居た。
夢のような出来事だった。
あれは現実だったのか。
それとも悟りの先にあるニルヴァーナだったのか。
人類が空を夢見てどれほどの時間が経過したのかは不明だ。
ついに誰もが地球を眺めて帰ることができるようになった。
釈迦に蜘蛛の糸を垂らしてもらうことは必要ない。
人類は自らの力で、極楽へ上ることができるのだ。




