闇市場
目が痛くなるような一面紫の場所に転送された俺たち。すると目の前に看板があった。
[ここでは争い・外部へ漏らすの禁止!以上 ブドウの会より]
運営の名前までブドウってよっぽど好きなんだな。看板を見ているとある2人が来た。
「おやおや珍しいね、エルフが2人も闇市場に来るとはね」
全身紫の服で頭は白髪の人が来た。なるほど、服は紫ブドウで頭は白ブドウを表しているのか。
もう1人の女は…人間なのに見たことのない顔つきの人間だな。
いやそれ以前に、俺たちは黒のフードで隠しているのになんでバレた。
「なんで俺たちがエルフって分かったのだ」
「以前酒場で酒場の酔っ払いにエルフの2人が何かしているのを見たからね、きっと闇市場のことを聞いていたんでしょ?それに2人は身長差もあるから隠してもすぐに分かったよ」
そうか、そんなにすぐにバレるようなことをしていたんだな、次からは気をつけて行動しないと。
「(相棒、コイツ一体何者なんだ?)」
「(俺も分からない)」
コソコソ…
「あら失礼したわ、私はグレープよ、ブドウの会の会長だわ」
会長だったのか!ってならないな、見た目から酒場に居た案内人とは全然違うし、小声を聞き取るとはね。
何か怪しいから自己紹介を言うのを躊躇ったが、デュオスが自己紹介したから俺も自己紹介をし、目的や過去の事などを話した。
「そう、あなた達も大変だったわね。私も同じ目的でアイツらをこの世から消すためにこの闇市場をしているのよ」
「なんで闇市場をしてるんだ?」
「闇市場は表の市場では売られない貴重な物は誰でも欲しいよね?だからここには色んな人が来るのよ。それはあいつらも同じでたまにこの闇市場に来るのよ」
「じゃあなんで人身売買するのだ?」
「実は今まで人身売買してなかったのだけど、アイツらはよく表の市場の人身売買の子を助けるから、ここで人身売買したらなんと」
「アイツらが来る回数が増えて情報が多く集まるのよ。あ、でも中には強いスキル持ちや、珍しい種族の子が売られるからそう言う子は内らが買い取っているわ」
「来たらどうするのだ?殺すのか?」
「いえ殺さないわ、戦闘になればはただじゃ殺せないから、私は貴方たちような人たちに情報提供するのよ」
そうか、ならこの闇市場で情報をもらうか。
「貴方たちにも情報をあげるから、後で用事を済ませて本部へ来なさい」
そう言うとその場を離れた。しかし、村が滅んでからエルフを見たのは初めてだな。
しかし、隣にいた女は何も話さなかったな、一体何者なんだ。
「相棒、俺たちも行こうか」
「そうだな、さっさと情報を手に入れて帰りたいしな」
俺らは装備屋を探した、意外にも市場は広くて困ったがやっと見つけた。
「何か用か?」
「装備を買い取って欲しいのだが」
「見せてみろ」
袋に入った装備を全部渡した。店主は装備を一つずつじっくりと見たり、軽く叩いたりしながら査定をしていた。
「ふむ、胴体だけ傷があってしかも材質が市場に多くある〈鉄鋼製〉やから価値はないがそれ以外は〈上鉄鋼の靴〉や〈黄鉄のアーム〉など少しだけ良い価値の装備だから全部で8Gで買い取る」
なるほど、胴体は俺の持つ安い粗鉄製のナイフで刺せたからあまりいいのでは無かったのか。だいたいDランク
「しかしこの剣だけはいいな、ほとんど使われていないから魔石が劣化していないくて、市場にあまり出回らない白鉄製の剣だが、魔石の含有量が少ないから12Gでいいか?」
「相棒、もうこれでいいじゃないか?」
「そうだな、じゃあそれで」
「契約成立だな」
俺らは装備を全部売った。手に入れたこの金は汚いが裏の世界に入ったなら何も思ってはいけない。デュオスに金を半分あげると言ったが1Bも受け取らない。
この時に10Gと雪ブドウの分の9Sを返したかったが、雪ブドウの分だけ返した。
「デュオス、言いたく無かったがやっぱり表の人間に戻ったらどうだ?」
「相棒はバカだな、本当にまだまだ子供だ。俺は金なんて要らない、俺はただ目標達成のために動いているだけ、相棒さえ居れば俺は金なんて物は全くいらない」
デュオスは真剣な顔で俺を見る。俺はまだまだ子供だと改めて思った、もっと相手を理解できる者にならないといけないと思った。
俺らは本部に行った。また本部の場所が分からなくて迷ったが、結構歩いて着いた。本部と書かれたドアを開けると中には雰囲気が変わって農園のような所で鉄格子の門があった。
門の先にはブドウがたくさん生い茂っていたて、その先に屋敷があった。
俺らは門の近くのブドウの手入れをしている人に声をかけた。
「すみません」
「何かようですか?」
「ここでグレープさんから情報を聞きに来ました」
「わかりました。グレープ様に確かめます」
その人は屋敷に行ってしばらくすると屋敷からグレープさんが来た。
「君たちいらっしゃい、ささ、入りたまえ」
門を開けてもらい入ると、その道中はブドウの葉で生い茂っており気持ちいい日陰ができていた。
「君たちどうだこの道、私はこの程よい日陰の辺りにたくさんのブドウがあって心地が良い」
「相棒、何か懐かしくないかこの風景、まるで村を覆っていた森を歩いているみたいな気がしないか?」
「そうだな、上を見れば葉っぱだらけの俺たちの村に戻った気がする」
懐かしいく思いながら歩いていると屋敷に着いた。入ると中は豪華な内装ではなく、質素な内装の屋敷で俺たちは部屋に入った。
座るとあの時の女の人が水と白ブドウを持ってきた。
「召し上がってね」
グレープさんはそう言うが
「これ白ブドウよな?なんでこんなに粒がでかいのだ?」
「相棒本当に食べてもいいのか?しかしこのブドウ見るだけでなぜか食べたくなるぞ」
俺らは恐る恐る一粒食べてみる。美味い、美味すぎる、店に売っているブドウはどれもここまで甘くないし種だって絶対に入っている。
しかし、このブドウは芳醇な香りがして噛んでみるとジュワッと果汁が溢れて果肉も上品な甘さがあってしかも種がない。今まで食べたブドウでダントツで美味しい。
「相棒、こんな美味しいブドウは見たことねえぞ」
「嬉しいことを言うわね、それは〈シャインマスカット〉と言う品種」
「どこでこんなブドウを手に入れたんだ」
「これは私の嫁さんが作った品種のよ、それにここにある全部のブドウも嫁さんが作ったのよ」
すげえなぁ、こんなもの作れるって羨ましく思っていると
「嬉しいです。そんなに喜んでもらえて」
この女の人がそう言うと言うことは、グレープさんの奥さんでこのブドウの開発者だと!?
「どうやって作ったの!」
知りたい、どんな風に作ったのか
「相棒、幼くなってしまったか」
「ふふ、可愛い子。それは私が転生者だから前世のブドウの知識があったのと、私が扱う事ができる唯一のスキル〈ブドウ生成〉だからできるの」
「転生者ってなんだ。覚醒者とは何が違うのだ?」
「君たちは知らないのね?転生者は前世で死んだ者が前世の知識を持ったままこの世界に生まれ変わる事なんだわよ、そして転生者は固有スキルを手に入れるのよ」
「…つまり転生者が強大な殺しの能力を持つ人間になるのか?」
「確かに理論的にはそうなるけど中には無スキルの者もいれば、弱いスキルを授かる者もいるわ。私の嫁さんは時間かけて種を生み出すことしかできないわ」
「本当にこの方はそれしかできないのですか?」
本当にブドウの種を作るだけなのか?人間に触れたら種にできるとかじゃないのか?
「相棒、殺意を向けてはいけないぞ。この人は村を破壊した人間とは違うし」
「本当です、私はこれしかできない人です。もし色んな物を種にできるなら私は多分ブドウを作る仕事なんてしていません」
奥さんは俺を真剣な目で見る。その目は濁りが一つもない眼差しで見ていた。
「ごめんなさい、貴方のような人が全員悪だと思っていました」
「仕方ないよ、私みたいな人があなた達の村を破壊したらそう思ってもおかしくないよ」
奥さんは俺を優しい声で俺に言う。お母さん以来だな、女の人に優しい言葉をかけられたのは。
「さて、サンベルくんとデュオスくん。話を変えるけど君たちにある情報を与え…」
ドーン!!
急に凄まじい音が音がした。
ガチャ!
「グレープ様!人身売買の所で争いが起きました」
配下の者が慌ただしくドアを開けてそう言うと
「まただわ、どんな人達?」
「そ、それが…女3人と男1人のパーティが起こしましたが、見たことのない女の人が攻撃をしておりまして」
それを聞くとグレープさんの顔は険しくなった。
「ふうん…普通じゃないわね、サンベルくんとデュオスくん、手伝ってくれるかしら?」
「当たり前だ、転生者か覚醒者かも知れない、だったら殺すまでだ」
「もちろんです、相棒と一緒に戦えば負けることはないです」
俺たちは現場に行くと壁には大きな傷や、あたりには瀕死の冒険者や会員の者がいた。
そしてその奥には見たことのない女と男1人が人身売買の司会者を尋問していた。
「君たちルールを守りなさい」
「私に指図していいのはマスターだけ、お前らは指図するな」
「誰だ貴様ら、マスター以外の者だったら殺すぞ」
どうやら話をする気がないらしい。
「そうか、だったら分かってもらうしかないわね」
そしてこの3人と俺たち3人はこの闇市場で激戦をするのだった。




