後処理
さて、この死体を埋めるか。
ザッ、ザッ、ザッ
草を歩く音がしたから後ろを振り向くと
「相棒、殺したのかソイツ」
そう声をかけるのは〈デュオス〉、俺より上の年齢で壊滅した村で生き残った男のエルフだ。
「休まなかったのか?」
「相棒が心配で後をついて来てしまった」
心配か、きっとギャブルもこう言うのを求めていたのに見放されたのか。
「相棒、そいつどうだった」
「最後は実に皮肉な奴で全員から見放された奴だった」
「そうだったのか、でもまだコイツより強い奴がまだ居るのか」
「ああ、これよりもっと強い奴らはまだ居る」
この世界には異常な程に強い奴らはまだ居る。だがそれは俺だけでいいのでは?デュオスはまだ自分から手を汚していない。
「デュオス、お前の手はまだ汚くない。だから俺から離れて静かに暮らしてもいいのだぞ」
「相棒って呼んでいるやつがそんな簡単に離れてたまるか」
「ふふ、さすがデュオスだ」
村でもいつも俺と争った仲だ。
俺たちは村の10人の若手の中でいつも1位を争っていた。まあ村が壊滅して生き残りの若手は俺ら2人になってしまったけど。
「当たり前の事言っただけやぞ。ていうかこの死体どうするのか?」
「装備だけ剥ぎ取って…死体はモンスターの餌にするか?それとも埋めるか?」
「お前怖い事言うな…そうだな、せめての優しさで埋めるのが妥当じゃないか?」
やっぱりデュオスは優しすぎてこの裏仕事に向いていない気がする。
「しかし、どこに埋めるのか?不自然に盛っていると違和感があって見つかるぞ」
「それは大丈夫だ。彼が放った斬撃の跡はちょうど深く抉っているしそこに埋めようか」
「自分の作った斬撃の跡で埋めるって良くそんな事思い出すな」
そうして俺らはギャブルを斬撃の跡に埋めた。結果的に違和感なく埋めれたが、そこに多分ギャブルが倒した夜鳥の死体を置いといたらこの斬撃の跡は夜鳥に対して放った跡と思われ、そこに死体が埋まっていると気づかれないだろ。
「じゃあ街に戻って装備を売りに行くか」
「分かったぜ、相棒」
俺らは装備を袋に詰めて街に戻った。街に戻った時のは空は明るく朝日が見えていた。
俺らは薄暗い路地裏で装備の処分方法を話しあった。
「相棒、これどこで売るのか?」
「この辺ではバレる可能性があるから売れないし、隣町はここから2日かかるし闇市場に行って売ろうかな」
「でも闇市場なんか噂でしか聞いた事ないぞ」
確かにそうだ、闇市場は禁止されてる人身売買や店に出回らない素材や装備があるという噂がある。しかも闇市場は国にバレないように定期的に場所を変えており、その場所を知る者は極少数だと言う。
けど、こんなけの事が噂で流れているなら本当に実在するのだろうと思う。噂にしてみればリアル過ぎるからだ。
「いや、闇市場は絶対にある」
「じゃあどうやって行くのさ」
「俺に考えがある」
俺らは街で一番大きな酒場に来た。入ってみると商人や冒険者、さらには受付の人まで色んな職業の人が居る。
「相棒、こんな所に来てどうするのだ?」
「ここに居る奴らに酒で酔わせ吐いてもらうしかない」
「ここにいる奴全員だと!?いくらなんでもお金や時間が足らないよ」
「大丈夫、聞くのは冒険者と商人だけでいいから。見といてくれよ、こうやるのさ」
まずは、店で1番強い酒をたくさん買う、そしてそれを酔っ払いの奴にあげて更に酔わせて情報を聞けばいいだろう。
「すみません、店で1番強い酒をたくさんください」
「いらっしゃい、あらでも坊やはまだ早いのじゃないかな?」
「え?俺はただ買うだけで飲まないぞ」
「ダメだよ買うだけでも20歳からだよ」
え?そうなのか、酒を買うだけなら何歳でもいいと思ったのだが。
「もっと大きくなってから買ってね。そうだ、ジュースなら買えるし飲めるから買う?」
「……オレンジジュース1瓶ください」
「まいど(可愛い子だね)」
酒を買うはずだったのにジュースを買ってしまった。
「アハハハハ、相棒…ジュースでどうやって吐かせるのだアハハ…腹痛え、相棒の可愛い所まだ残っていたんだ」
「知らねえよ俺は酒の事なんかあんまり知らないよ」
まさかこんな事になるとは思わなかった。待てよ、20歳からだったら俺の代わりにデュオスも買えないじゃないか。
「相棒無理だったな、俺もまだ酒を買えないし」
デュオス知ってて何も言わなかったのか。
「はあ仕方がない、俺らが奢って飲ませるか」
「相棒、それならいけるな。でもどうやってやるのだ?分からないから見本見せてくれよ クスッ」
「デュオス!からかうのは辞めてく、くだ…しゃい」
「久しぶりに聞いたなその幼い反応。まあ見本見せてくれよ」
俺はデュオスにバカにされながら酔いが酷い人に酒を奢るか聞いた。
「おじさん」
「ヒクッ、どうした小さい子。あー酒が、酒が欲しい、でも金がねええ」
「(勝ったな)奢ってあげようか?」
「小さな子、気持ちだけ受け取っておくぜ。大人がこんな小さい子に奢らされたら恥だから」
「分かった。(え?要らないのか。なら別の人に奢ろうかな)」
「要らん」「不要」「何や?ジュースが欲しいのか」
「ガキには奢られたくねえ」「親はどこ行った」
「どうした、子供が来るような所じゃねーぞ」
ダメだ、全く奢らせて貰えない。大人はそんなに奢られたくないのか。
「相棒、誰かに奢れたか?」
「………0人」
「ブアハハハ!!!相棒面白いな。そりゃ子供に奢られて飲む酒は美味しくないだろ」
「なんでデュオスは酒飲んだ事ないのに味なんか分かるんだよ」
「酒は飲んだ事なくても分かるよ。俺だって自分より結構小さい者には奢られたくないし」
なんだよ俺が無知なだけだったのか。まあ1ついい勉強になったな。
「そうそう、俺は奢らんと情報聞けたぞ」
「なんだと、どうやって!」
「簡単だよ、酔っ払いと会話しただけ、そんな奢らなくても聞けたぞ俺は」
なんだと、そんなことで聞き出せたのか。俺は少し考えすぎたのかもしれない、話に入るだけでよかったのか。
「まあ、相棒は幼すぎて誰も会話に入れてもらえないと思うが、むしろ親は誰って聞かれそう…アハハ!」
コイツ後で覚えておけよ。
「ふう…相棒、話を戻すけどどうやら次以降の開催場所はある人に聞けばいいらしい」
「そいつはどこにいるのだ」
「それは不明らしいが『ブドウ』と『ピンク色のワイン』を嗜んでる大人に『合言葉』と『物』、『用件』を言えば会場に行けるらしい」
なんかすごいブドウ好きな人だな。
「そうか、なら黒のフードを被ってから行こう。一応自分達ギルドに入っているからバレると厄介だ」
「確かにそうだな、じゃあ一度服屋でフード付きの服を買ってから行こう」
そう決めて俺たちは外を出た。出るともう辺りは夕方になっていた。俺らは急いで服屋でフード付きの衣服を買ってその人物を探した。
「あら?エルフなんて珍しいわね、うふふ、近々会うかもね」
この街でブドウはどこでも売っておるが、ワインは酒場でしか売っていない。だから酒場に行けば居るだろう。
俺たちは再び同じ酒場に行くと夜で賑わっていて最初どこにいるか分からなかったが、隅っこの方に全身紫の服を着て赤・白ワインとブドウを美味しそうに飲食している人がいた。
「相棒、この人だろ」
「いや、ピンクのワインを飲んでいないからまだ断定できない」
すると男は両方のワインをグラスに入れるとなんとピンク色のワインになった。間違いないこの人だ、俺たちは男の席の隣に座った。
「相棒、任せてくれ」
デュオスはフードで隠しながら言った。
「『ブドウは果物で1番美味しい』が合言葉だな。俺たちを闇市場に行かせてくれよ、だから些細な物だがこれを受け取ってくれ」
安直な合言葉を言いながら装備の入った袋からケースを出した。どうやらお金をあげないといけないらしいと思っていたが
開けると冷気を出しながら真っ白なブドウが入っていた。
「(デュオス、どこでこんな物買ったんだよ。いくらしたんだよ)」
「(相棒が服を着替えている間に買いに行って来た、値段は確か9Sだった」
よくもこんな高い物買ってくるとはな、しかしこんな高い物買ってくれたから今までバカにした事を流してやろう。
「こ、これは雪ブドウか、なかなか市場に出回らないから食うのは3日ぶりだ!安価なブドウでも良かったのだが早速食べようかな」
いや最近食ったのかい、しかも安いやつで良かったのか。デュオスを見ると呆気ない顔をしていた、後で
9S返しておこ。
「ご馳走様、じゃあ時限式転送魔法を付与するから」
パッ
「5分後に自動的に転送されるから人が見られない所で転送しとよ、じゃあ今すぐに行け」
そう言われて俺たちは宿を離れて酒場近くの裏路地で転送をされるのを待っている。5分後自分達の床下に魔法陣が現れると気が付けば別の場所に居た。
紫の壁に紫色の床、あたり一面紫色の場所に居た。




