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エピソード4:文字通り……目を開く時

この章では、退屈な主人公の人生が驚くべき変化を迎える……!

――少なくとも、彼にとってはね。

なんとかその場所を抜け出し、俺はしゃがみ込みながら缶をじっと見つめていた。

ただ……何か気を紛らわせるものを探したかっただけだ。


「……なんで、俺って何をやっても上手くいかないんだ!?」

叫び声が周囲に響く。

「女の子をケガさせるなんて、バカみたいじゃないか! カメラの映像だって何も見えなかったし! 夢に集中しすぎたせいだ……!」

俺は両手で髪をぐしゃぐしゃにかき乱した。恥ずかしさで胸が苦しい。


雨はもう止んでいた――つまり、あの夢は予知夢なんかじゃなかった。ただの夢だ。


「くそっ……ちゃんと“夢の回想シーン”まであったのに! どう考えても異世界転生の前フリだったろ……クソッ!」

思い切り缶を蹴飛ばした。

だが同時に、勢い余って近くの石にも足をぶつけてしまった。


「いってぇぇぇっ!」

片足で飛び跳ねながら、なんとかバランスを取る。

「せっかく感動シーンにしようと思ったのに……完全にコメディじゃねぇか!」

結局、俺はしゃがみ込み、両膝を抱えてじっとしていた。

もう何かを蹴ってぶち壊すのはごめんだった。


それでも、視線は虚ろで、どこか沈んでいた。

情けなくて、退屈で……そして、嘘つきみたいに感じた。


「“ヒーローになる”って言ってたのに…… 誰かを助けるって、言ってたじゃないか、俺。」

退屈しのぎに小石を拾って、目の前の湖へ投げる。

「誰を助けてるんだよ……自分のことすら助けられないのに。」

もう一つ、小石が水面を叩いた。


――いつかは俺の物語が始まるはずだった。

いつかは、俺も世界の“役割”を持てるはずだった。

普通じゃない、何か特別なものを――


「なのに……どうして17年も生きてきて、何もないんだ?

趣味もない。冒険できる友達もいない。誰ともろくに話せない。

脇役どころか、“存在してる”って言えるのかよ、俺は!」

立ち上がって、誰もいない空気に向かって叫ぶ。

恥ずかしさなんて、今はどうでもいい。


「じゃあ、俺はどうすればいいんだよ……!?」

ノボルはしゃがみ込み、両手で顔を覆った。

「世界が俺に役をくれないなら、どうやって見つけりゃいい?  ……俺って、ただの“背景キャラ”なのか? いや、“キャラ”ですらないのか?」


このまま退屈に生きていくのか?

何の特別さもなく?

卒業したら何をすればいいのかすら分からない。


――これが、俺の“運命”なのか?


「やば……このままじゃ絶望する。」

毎日努力しようとしてるのに。

ボランティアもした。わざと授業を間違えて新しい出会いを探した。

学校をサボったこともある。

町を出て、何かを探そうとした。


「……でも、全部ダメだった。」

頭を抱え、震える。涙が止まらない。


「なんで……なんで俺は“重要”になれないんだ……?」

なりたい。重要な存在になりたい。


「脇役でもいい! 世界よ、俺に何か“特別な意味”をくれ!

“ヒーローになる”夢も、“命”も、全部くれてやる!

だからお願いだ、世界でも神でも誰でもいい……!

俺を、“特別”にしてくれぇぇぇ!」


鳥たちが飛び立ち、風が通り抜け、水面が波打つ。

……でも、返事はなかった。


またしゃがみ込む。結局、それしかできなかった。


「“特別になる代わりに夢を捨てる”か……はは、無理だな……ははは……」

笑うしかなかった。情けなさで。

いや、もしかしたら緊張で――いや、違う。

“ヒーローをやめる”って考え自体が、馬鹿らしかったんだ。


昔は違った。

ただ純粋に、ヒーローになりたかっただけだった。

剣を振り、危険に笑い、困ってる子を助けようとしていた。

でも、誰も覚えていなかった。

誰も「ノボルだ、ヒーローだ!」なんて言ってくれなかった。


『あはは、ごめん、名前なんだっけ?』

――俺の名前さえ、覚えてもらえなかった。


皆が俺を置いていった。

それでも、俺は“ヒーロー”なんて夢にしがみついてた。


『また“ヒーローごっこ”かよ? もう子どもじゃねぇんだ、ノボル。』

かつて“友達”だった連中は、振り返りもせずに去っていった。


置いていかれたくなかった。

誰かの人生から、俺だけ欠けるなんて嫌だった。

だって物語に“主人公”しかいなかったら、つまらないじゃないか。


でも――俺はもうヒーローじゃいられなかった。

重要な役になれないのなら、諦めるしかなかった。


俺は夢を捨てた。

いや、もうとっくに捨ててた。

さっきまで“異世界転生”なんて馬鹿げた夢にすがってただけ。

まるで、古い残飯を漁るネズミみたいに。


「……ほんと、バカだな俺。新しいことをしても、何も変わらなかった。」

情けない。

“役割”だの“キャラ”だの“物語”だの……そんなの存在しない。

ただ、無意味な人生に意味をつけたかっただけなんだ。


――もう、大人になって、普通に生きたほうがいいのかもな。


「結局さ……」

目を閉じた。希望はほとんど残っていなかった。

それでも、かすかに心臓は動いていた。


「俺は――物語の“主人公”には、なれないんだ。」


そして俺は、目を開いた。

――文字通りに。


静寂。

話せないわけでもない。ただ、本当に、言葉が出なかった。

目の前に広がる“それ”を見た瞬間、

俺は、息を呑んだ。

次回――ノボルが見た“それ”とは一体……?

お楽しみに!

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