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彼と彼女の恋愛風景_あるデートのこと⑥

は、半年以上経っている…!!


 後悔先に立たず。先人はかくも見事な言葉を生み出したものだ。感心する。後悔という言葉自体が、後に悔いるという単純明快な意味を表していることもさることながら、教訓として心に刻むには非常に語呂がよく、また理解しやすい。意味の伝達を担う言葉において、理解しやすいというのは最大の長所だ。これを考えた先人は、思いついたときに膝頭をぽんと叩いたことだろう。上手いこと言った、と。

 どうして後悔という言葉を絶賛するのか。それは俺が文字通り、後に悔いているからである。起こしてしまった事象に対して、どうしようもない気持ちを持て余しているのだ。では一体何を後悔しているのか、と問われれば簡単なことだろう。彼女を傷つけたことに対してだ。俺の最愛の彼女である理子が、『誰も居なくなったおうち』での失態を予想以上に恥じいり動揺してしまったこと、つまり俺の浅ましい欲望によってやさしい柔らかさを持つ彼女の心を傷つけてしまったという事実、その一点についてである。



(本当に、阿呆以外の何者でもない)



 申し訳ないことをした、と涙目になって落ち込む彼女を見て、俺がしでかしたことの軽率さに吐き気を催すほど嫌悪した。何故彼女が謝るのか。悪かったのは俺だ。許しを請うべきは、間違いなく俺のほうだ。なのに、彼女は自分の咎だと感じて、俺の浅ましさを断罪するかのようにいたいけな謝罪するに至った。その状況を招いた俺は、本当に最悪で醜悪な生き物だ。

肉体的接触のハードルを越えるためとはいえ、大の苦手である彼女を引きずり込んだのは明らかな短慮であり失策である。確信はなかったが、苦手かもしれない程度のあたりをつけていたことが尚更腹の底で燻る気持ちに拍車をかけた。ただ、彼女と親密な関係になりたいという、唾棄すべき、恥ずべき衝動に負けたのだ。

 何が彼女を愛しく思っている、だ。彼女を泣かせている俺が、その言葉を紡ぐなどおこがましいにもほどがある。あのアトラクションの中で彼女にしがみつかれてにやにやしていた自分が、ひどく滑稽で気持ち悪く、そして愚かしい人間であるという後悔で、土下座をしたい気分に陥ったのは仕方のないことであろう。

 しかしできなかった。プライドが邪魔したとかいう愚かしい言い訳ではない。あの場で土下座をすることになれば彼女がもっと落ち込むことは目に見えていたからだ。彼女はひどく優しい。俺があの場でそんな人目を引く行動をすれば、そんなことをさせてしまった、という罪悪感に襲われることは想像に容易かった。俺を責めればいいというのに、その選択肢をはなから消しているのが厄介だ。その柔らかさが愛おしさに拍車をかけるが、自罰的すぎるのも彼女の負担に視点を置けば、いいことばかりでない。

 どうにか彼女を落ち着かせたい、謝罪したい一心で、俺は抱きしめて落ち着かせる選択をした。人の温もりはとても安心することは、母や父に抱かれた幼子がぐずるのを止めるように、古今東西変わらぬ摂理だ。そうするのが当たり前のようにすっぽりと納まった体に、目の奥で我侭に暴れる衝動に眩暈がしたのは事実だが、それ以上に彼女への謝罪と愛情で満ちた行為であったことを宣言しておく。いくら俺であろうとも、弱っている彼女にそれ以上漬け込もうなどという外道にはならないし、なれない。彼女が泣くだけで震えるほどに動揺する俺に、そんな真似ができるはずもない。

 落ち着いた彼女の『惚れ直した』同意発言には、そのまま物陰に連れ込みたい衝動に駆られたが、そこは割愛する。



「正宗くん、とんだ! イルカがあんなに高く!」



 彼女のきらきらと無垢な興奮に彩られた声が耳朶を打つ。ふと現実に意識を戻せば、ぷんと潮の香りが鼻腔を擽り、水飛沫が頬を濡らした。

俺の眼球の上で、陽光に照らされた美しい流線型が舞う。水面から躍動して高く飛んだイルカは、その尾びれで垂れ下がったボールをぽーんと綺麗に弾いた。どっと沸く朗らかな歓声と同時に、彼女の頬も上気する。凄いね、と甘く興奮した声で俺に同意を求める唇もまた、血色よく艶めいていた。

よく色づいたそれはとても美味しそうで、齧りたい衝動に駆られた。きっと甘いに違いなく、滴る果汁のような瑞々しい声が溢れるだろう。それを舌で丹念に舐る想像を頭の片隅で遊ばせながら、同意する返答を返した。彼女がまた嬉しそうに笑う。


 やはり、笑っているときが一番可愛い。イルカ達が身につけた芸を披露するたびに歓声を上げる姿を見ながら、そう思う。お化け屋敷で見た恐怖に潤む顔も愛らしかったが、今のように日差しに綻んだ花のような笑顔の比ではない。どこか気を張ってきりりと引き締めた表情の多い彼女が、その糸を緩ませる無防備さが堪らない気分にさせる。それを見せられる相手である、という自負心もまた、俺のちっぽけな自尊心を愛撫してくれる。もしも彼女の笑顔が俺だけに向けられるようになれば、どれほど俺の欲を満たすのだろう。それはとても汚らしい想像だと思いながら、彼女の笑顔を見つめる。そんな俺に微笑むかのように、イルカが、きゅきゅ、と無邪気に鳴いた。


 歓声をあげる彼女の姿を見ていると、昼食後に迷わず会場に足を運んだ甲斐があったと感じる。また、動物園部門での目玉、イルカショーの最前列に位置どれたことは行幸であったといわざるを得ない。最前列に座ったもののみに渡される、青空に雲が浮かぶ模様がプリントされた限定の雨具がいたく彼女のお気に召したのも嬉しい誤算だった。そういったものを渡されるということは知っていたが、単なる情報として受け止めていたため、それが彼女の喜ぶものにカテゴライズされるとは考えていなかったのだ。せいぜい、可愛いもの好きな彼女だから多少嬉しがるだろう程度の認識だった。しかし実際は、開演前に配られたそれを興奮気味に身につけ、発表会にドレスを着た女の子のように、



『正宗くん、似合うかな?』



と、はにかみながら一回転してみせたのだ。普段の彼女ならばまず恥ずかしがってやらないような行動である。そのあまりの愛らしさに思わず抱きしめて誰にも見せないように閉じ込めてしまいたい気分に駆られたのは、誰にも責められることない感覚であると自信を持って言うことができる。似合っている、と何食わぬ顔で返すことができたことに、奇跡に近いものを感じてしまうのも、頷いてもらえるだろう。ともすれば、だらしなくにやけそうな頬の筋肉を食い止めた、俺の顔面筋肉統制力に心の底から感謝した。でれでれと鼻の下を伸ばした顔なぞ、みっともなくて見せたくはない。彼女の前では、嘲笑してしまうほど薄っぺらくとも格好いい姿でありたい。それは、俺にとって矜持だ。



「わ、わ、歌ってる、可愛い、歌ってるよ正宗くん!」

「そうだな。いい声だ」



 きゅいきゅいと歌うイルカに相好を崩す様子を見ていると、相当な動物好きであると感じる。俺も好きだと言える程度に興味があるが、彼女がこれほどまで好んでいるとは思っていなかった。先ほどのフクロウでも蕩けて美味しそうな顔で熱っぽく見つめていたのを思い出す。



(そういえば、猫を道端で見るたびに嬉しそうだったな)



 デートの際に見かける犬や猫を見て、「尻尾もふもふ…」だの「お耳がきゅーと…」と色っぽいため息交じりの呟きをこぼしていたことを思い出す。ふらふらと揺れる犬や猫の尻尾を見つめるあまり首がふらふら揺れていて、その様子のほうが俺にとっては可愛くて堪らなかった。思わず、人気のない暗がりへ連れ込みたくなるくらいに。



(思えば、俺は確信を持てるほど、彼女の好みを知らないな)



 好きなものは大概見当がつくが、それを確かめるようなことをしていない。突っ込んで聞くことに抵抗があるし、何より手探りでそれを暴いていく感覚がいいというのもある。全てを知るために質問する、というのも、中々面倒だと感じさせてしまうだろう。だが、攻撃的な感情を好まず、また嫌いという意思をあまり見せない彼女を見ていると、いやいや付き合ってくれているのでは、という危機感を抱くことが度々ある。恐らく存在するのであろう彼女の嫌いの範囲はなかなか大らかで曖昧だ。また、態度にそれほど酷い拒否を見せることもないので、選択に迷う場面もある。

 彼女を喜ばせたくて選択するべきだからこその先ほどの惨劇だったわけだが、彼女の反応を見落とさぬようこれからもしゃぶる様に観察する必要があるだろう。失態を繰り返すという愚考を、俺は俺に許していない。



「よく訓練されている。彼らも大変だっただろう」

「ね! イルカさんも大変だろうけど、スタッフさん大変だっただろうな、言葉が通じないし」

「学習行動の強化だろうな。正の強化と負の強化を上手く使っている」



 また空に踊るしなやかな流線型が彼女の視線を奪っていく。それに軽い妬みを覚えてしまうのは、我ながら大概にするべきだと自重してしまう。イルカが彼女と添い遂げたいと直談判でもしてこない限り、俺はイルカと敵対する要因がない。逆に彼女がイルカと添い遂げたいと言い出したら、色々と正気に戻すために手段を講ずる準備があるので、それは考えないでおく。そんな馬鹿げた空想よりもむしろ、調教師になりたいといって人生を方向転換することの方がありうる未来だ。そうしかねない動物好きだと感じた今、その進路を応援する心構えも必要かもしれない。今後のために検討しておこう。



「わたし泳ぎが苦手だから、あれだけ気持ちよく泳げるのが羨ましいなあ」



 まあ、運動全般苦手なんだけどね、と照れたように言う。そんなことはないだろう、と言い掛けて体育の授業がある度に憂鬱そうにしていた高校時代を思い出して苦笑すると、彼女も、でしょう?と笑った。運動が苦手でも、何も恥じることはない。それが不利に働くようであれば、俺がサポートすればいいだけである。

 他の男に見せたくなくて、海やらプールやらに誘う予定はなかった。しかし、泳げないというのは些か危ないかもしれない。来る緊急時に助かるアドヴァンテージを下げてしまう。そういった事態に遭遇しないことが一番だが、人の意思で曲げられるような代物でもない。やはりプライベートビーチあたりを父から借りる交渉をして、手取り足取り腰取りみっちり鍛えてやろう。それがいい。決して下心はない、本当だ。彼女の水着姿を考えて、少し心拍数が上がったのも気のせいである。



(彼女の水着か…)



 想像しただけで滾り始める何かについては、軽快に無視を決める。頬に当たる飛沫が、ひんやりとしていて心地よい。それが最善だ、といってくれているようだ。単なる空想だが、それで十分だ。落ち着きを取り戻せれば、空想だろうと戯言だろうと構わない。彼女を傷つける自分など、存在する価値を見いだせない。



『ごめんね、正宗くん』



 頭の中で響く、音。声。言葉。涙でふやけた、彼女の心だ。怯えたような目でこちらを見つめてきた彼女をみて、叫びたくなったのは、仕方のないことだろう。

 謝らせたかったわけじゃない。苦しませたかったわけじゃない。ただ、ただ。

重ねれば重ねるほど矮小で、愚かしい自分しかそこにはいなかった。言葉にしてしまえば、彼女に嫌われてしまうと恐れるほど、滑稽で卑劣な、ただの子供がそこにいた。己の能力を研鑽して作り上げてきた如月正宗は、そこにいることができなかった。ただ、彼女を傷つけた自分を殺してやりたいくらい嫌悪する、最低な人間だった。

 ただ、つながりが欲しかった。いつかふらりと手を離してしまいそうな、そんな彼女との確かなものが欲しかった。それだけの欲望で、そんなほんの少しの下心で、彼女にあんな顔をさせるなんて予想できなかった自分が、何よりも愚かしい。焦る愛情が、ただの凶器に成り下がることなど、予想して然るべき事態だというのに。

 彼女は生真面目だ。全力で、全身で恋愛に挑戦している。何もかも初めての彼女が、自分がしでかしたと思っている失敗で顔を歪めることくらい、分かって当然だったのだ。なぜなら、俺は彼女の恋人だから。幼馴染として、ずっと傍に居たから。彼女の笑顔の回数を、家族に次いで恐らく、一番多く知っているはずの間柄なのだから。

 抱きしめた彼女を思い出す。それだけで、想像していたよりもずっとすっぽり腕に収まった彼女の熱が、じわりと肌の上で疼く。すんなりと思い出せるほど、ふんわりと柔らかく、しっとりと心地よい温度だった。細すぎず、太すぎず、しっかりと人間としての血と肉を持った、魅力的な女性の体が発する、俺だけが口に運べる至上の供物の熱だった。それは、ひどく傲慢な考えだと、俺は自分を断罪する。

 彼女の露になった項が美味しそうで、美しくて、思わず汚したいと思った俺は、こうした反省を積み重ねても変われないのだろうとどこかで分かっている。彼女と俺の距離が縮まるまで、きっと繰り返す愚考なのだとも、本当は。それでも構わない。次はもっと上手く、もっと巧妙に、もっと賢く行えばいいだけのことだ。俺を苛む罪悪感の代償に、彼女が手に入るならば安いものなのだから。



(理子)



 ぽとりと落ちた椿のように、名前を呼んだ。唇には乗せず、けれど確かに。



「正宗くん、ほら、また!」



 高く、きれいな流線型が空を舞う。そして、水へと帰っていく。空へそのまま浮かび上がることはできない。ただ、抱かれるように落ちていく。どこへも行けないのだ。結局、水の中へ、それを抱える地へと帰るしかない。当たり前の光景を、ぼんやりと俺は思考する。

 それに囚われている憐れさを見るのか。それとも帰る場所のある安心を見るのか。人それぞれの価値観に左右されるが、俺は後者を抱く。幸せなことだ。安心して戻る場所がある、いていいと思える場所があるというのは。それを築くという過程に、どれほどの年月や信頼や愛情という、かけがえのないコストを支払うかを考えれば、俺はそう考える。

 そんな途方もなく大きなものを、彼女の中に作れたらいい。どれだけ俺が離れても、理子の中に俺の納まる場所があるといい。温かく抱きしめたくなるような、そんな穏やかな場所を作れたらいい。だが一方で、ぽっかりと空いた、そこに誰も座らせたくないくらいの、深い傷のようなものであれたならいいと思う自分もいる。相反した欲望に突き立てたいのは、ただ、俺だけが理子の最愛になりたいという欲望だけだ。

 


「羨ましい」



 彼女の視線を、何の曇りもなく捕えることのできる存在が。彼女の中に、何の苦労もなく居場所を作れる存在が。煩悶せず、苦心せず、愚考せずに、ゆるやかに彼女に好意を抱かせる存在が何よりも羨ましい。妬ましい。そして、苦しい。自分は、こんなにも無力だ。そのどれにもなることのできない、どうしようもない自分が、一番憎くて気持ちが悪い。

 そっと視線を落とせば目に入る彼女の幼気な丸い頬に、泣きたくなるほど愛しさを感じる。そっと手を握れば、途端にぱっと色合いが華やいでいくさまを見ると、腹の底から言葉がこみ上げてくる。けれどまた同時に、その下に隠されている生々しい女を暴きたくなる。染まった色の意味を塗り替えて、あどけない喜びを大人びた悦びにしてしまいたくなる。彼女が泣いて嫌がっても、組み敷いてしまえるくらいに、傲慢に。

理子、理子、こんな俺は嫌だろう。理解している。そのくらい。



「なあに、正宗くんもあんな風に飛びたいの?」

「そうだな」



 願わくば彼女の中に飛び込んでいきたい。そのまま沈んで、浮かぶことなく溺れていたい。掬われなくていい。救われなくていい。二人ぼっちの閉じた世界で生きていたいと、そんな薄気味悪い願望を告げたとして、彼女は一体何を思うだろう。何を返すだろう。答えが分かっているのに問うてしまう俺を、彼女は嗤うだろうか。いや、笑うだろう。戸惑いながら、それでも優しく。とても優しく、俺を好いていてくれるから。

 なのに俺は、笑い返せないのだ。決して。

 彼女のように、柔らかな愛情ではないから。

 彼女が優しい笑みでしか返せないような、どうしようもない愛情をどうしようもないほど抱いているから。

 それはなんて気持ちの悪い、最低な感情なのだろう。



(けれど、後悔はしない。そして、捨てもしない)



 この思いを、唾棄し罵倒し断罪しても、決して後悔も遺棄もしない。結局は俺のエゴイズムに従っているだけだ。自分の思うように彼女を愛したいという、浅ましい俺が、ずっとここにいる。それをずっと続けるだけの、憐れで滑稽な俺しか、俺の中には存在していない。生きていない。そして、それでいいと考えている俺が真実だ。

 また、空に投げ出されていく放物線。耳を撫でる甘く高い声が、彼女の頬を上気させる。そんな、無邪気な好意では満足できない自分で、申し訳ない。口だけの謝罪はそっと奥歯で磨り潰し、柔らかい視線を水へ戻るそれへ向ける。



「羨ましいな」



(すまない、理子。愛しているよ)



 愛していると言えば、全て許されるなどと下らない考えは持っていない。だが、それだけは疑われたくないという、言い訳じみた主張を繰り返す。己の中のどろどろとした、見据えたくはない部分と正面からぶつかっていける程度には、俺は彼女に天秤を傾けている。一人の女性の愛を勝ち取るために、みっともなく煩悶し、苦悩し、哀願するような自身を、受け止められるように、日々戦っている。それを彼女に求めるのは、傲慢だろうか。時期尚早だろうか。まだ付き合って3か月。だが、3か月。その時間をどう受け止めればいいのか、いまだ俺には判断ができなかった。

 懇願するように、泣いているかのように、その言葉をしっとりと飲み込む。ともすれば出てきそうな言葉は、彼女にとって重圧であり、ただの足枷にしかならない。だけれど、それすら羨望の思いを抱いてしまう自分は、大概なものだ。

 思わず見下ろした彼女の笑みに、誤魔化すように微笑みかける。唇の描いた弧は、綺麗な形をしていないだろう。恐らく、とても美しく歪なものだろう。だが、それで構わない。彼女に、この気持ちを押し付けるような自分になるよりか、よっぽどましだ。

 外に出すことは許されない、そんな色合いを帯びた気持ちは、容易く俺の中で無難な言葉に装いを変えて、転がり出ていく。



「本当に、羨ましいよ」



 きゅい、甘く高い声が、歌う。曇りのない丸い眼球が、こちらを見ていた。滑稽だな、そう告げられているような気がして、目を伏せる。

ばしゃん、と跳ねた飛沫が、笑うように瞼の裏を焼いた。




 ちょっと文体が変わっているかもしれません。違和感がありましたら、申し訳ないです…

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