第36話 ブレイク破り
トビは時間を稼ぐためにも話を続ける。
「あなたのミスは跳んだことだ。上からの攻撃は一見、意表をついた選択に見えるけれど、真上に来たら影でわかる。プラス、落下攻撃は速度が一定になるからタイミングを合わせやすい。因果応報の絶好の餌だ」
「けっ。くだらねぇことしやがる。挑発して俺の意識を話に集中させて、後ろから不意打ちってかぁ?」
クリシュは振り返り、イヴンの盾による突進攻撃を右腕一本で止めた。
「あかん! バレとるわ!」
「完全に気配は消したつもりだったんだけどね……!」
「すげぇ! 盾が喋ってら」
クリシュは盾を蹴り飛ばす。イヴンは後ずさるも堪える。
「……硬いな。その盾といい、そこのクソガキの籠手といい、どんな素材で出来てやがる」
ヨタマルが変化した盾には『死』という文字が刻んである。死耐性を得た盾、不滅の盾だ。
トビとイヴンはクリシュを前後で挟み込む。
「遅いよイヴン」
「アンタが速いのよ!」
トビはソフィアの姿がないことに気づくが、敢えて口にはしなかった。イヴンが目線でトビを制したからだ。
「お嬢、アイツの耐性は種族耐性の死耐性だけや」
「あらやだ。シンパシー感じちゃうわね」
吸血鬼になって初めて得られる死耐性しかない。ということは、人間の時は無耐性だったということだ。
クリシュは流し目でトビを見る。
「因果応報使い。お前、俺との相性最悪だよ」
「どういう意味ですか」
「すぐにわかるさ。俺はな、その技が大嫌いなんだ」
クリシュは右足で地面を一瞬で四度踏み抜き、地割れを起こす。
「四震脚!!」
四つの地割れはそれぞれ別のルートを辿ってイヴンの足元に迫る。
「ちょっ!」
イヴンは地割れに足を取られた。その隙に、クリシュはイヴンを無視しトビに接近した。
(この人は強い。さっきの二度の因果応報は相手が油断してたからできたこと……体術は圧倒的にこの人の方が上だ!)
「おらこいよ因果応報! 因果応報!!」
クリシュは思い切り拳を引き、トビでも見切れる速度で拳を振りぬいた。
(いける!)
トビはクリシュの拳に籠手の甲を合わせる。
「因果応報!!」
「三又拳!!」
因果応報は成功した。だが、
「……!?」
クリシュの口角が吊り上がる。
衝撃音が三度鳴った。
一度目は因果応報が成功した音。
二度目は、反射した衝撃がなにかに防がれた音。
そして三度目は、トビの右腕に衝撃が走った音だ。
トビの右拳が、弾かれる。
「ちっ。その籠手がなけりゃ腕を持っていけたのによ」
「いま、のは……!?」
「教えてやーんね」
クリシュはトビの腹を殴り飛ばす。
「ごふっ!」
「このまま撲殺してやる!」
「てかさぁ!!」
イヴンがクリシュを横殴りし、叩き飛ばす。
「私を忘れんなよコラァ!!」
「引っ込んでろよ嬢ちゃん。後で丁重に犯してやるからさぁ!!」
「はぁ?」
イヴンはクリシュに追撃を繰り出す。
「下品なこと言ってんな老害!!」
「老害はいいのかよ、老害は」
クリシュはイヴンの背後に回り、左手で頭を掴んで盾に顔面を叩きつける。
「!?」
「お嬢!!?」
「あんまり傷つけたくないんだよ。綺麗なまま楽しみたいんだからさ……つっ!?」
イヴンは盾を捨て、クリシュの背後に回り、膝蹴りでクリシュの後頭部を蹴り、顔面を盾に叩きつける。
鼻血をフンと吐き、治癒術で折れた鼻を治癒させる。
「お生憎様、清純派ってわけじゃないのよ。綺麗な女抱きたいなら他を当たりな、いきりチェリーボーイ」
「やっべ。惚れちゃいそ~」
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