第31話 ブレイクの極意
「メイビスさぁん! さすがに無理です! 勝ち目無いです!!」
「勝てる勝てる。負けたら死ぬだけなんだ。臆せず戦え~」
「無茶苦茶言うな!」
メイビスは「やれやれ」とため息をつく。
「30分。30分耐えたら助けてやる」
「!?」
「それまでは絶対出さねぇ」
V・ドラゴンは翼で竜巻を起こす。トビは走り回り、竜巻を躱す。その様子をメイビスは鋭い瞳で見ていた。
(30分!? これ相手に30分!!? 無理だ。せめて1分が限界……!)
「戦いはリズムだ。相手のリズムを読め」
メイビスが指示を飛ばす。
(リズム……?)
V・ドラゴンが突進してくる。トビは好機とばかりに息を整える。
「リズム、か。つまり、この技を使えってことですね」
V・ドラゴンの突進に合わせ、籠手の甲を衝突させる。
「因果応報!」
V・ドラゴンは頭を弾かれ、後ろへ吹き飛んだ。
(堅い! 鱗も耐性も! あと20発近く殴らないと耐性を壊せる気がしない!)
でも。とトビは笑う。
(因果応報をうまく使えば、30分はもつかも!)
そう思った矢先のこと。
V・ドラゴンは雷のブレスを口に溜めた。
「なっ!? あれに因果応報は使えない!!」
「……」
トビの言葉に、メイビスは眉をひそめる。
V・ドラゴンが雷を吐く。吐き出されたボール状の雷の塊はトビの三倍は大きい。
(速い!?)
トビはよけきれず、雷撃を浴びる。
「がっ!?」
体が痺れ、地面に膝をつく。
「まったく、仕方ねぇな」
V・ドラゴンがトビにトドメの雷のブレスを吐いた瞬間、メイビスがトビの前に立った。
メイビスは銀魔法で槍を二本作り、構える。
「因果応報」
メイビスは、目にも止まらぬ速度で槍を振るい、雷に当てた。瞬間、雷は散り散りになって消えた。
トビは目の前の現象を理解できなかった。
「因果応報で雷を、物理攻撃じゃない攻撃を弾いた……!?」
「因果応報を物理にしか使えないって勝手に線引きしやがって阿呆が。いいか、究極の因果応報は……万物を防ぐ」
その言葉を証明するように、V・ドラゴンの翼撃を、ブレスを、突進を、竜巻を、すべてメイビスは一歩も動かず因果応報で弾いた。まるで、メイビスの間合いいっぱいに結界が張ってあるようだ。
「銀耐性は一般的に当たりの耐性とされている。実際そうだ。上の中程度の当たりではあったさ。だが、最上位ではなかった」
メイビスは喋りながらV・ドラゴンの攻撃を弾いていく。
「いくら銀魔法を極めたところで最上位の耐性を持つ連中を相手取ることはできない。だからひたすら考えたさ。魔法以外の活路を。魔術のセンスは生憎だが無くてな、結界術しかマスターできなかった。だから他になにか無いかと探った……結果、行きついたのがこれだ」
メイビスの因果応報が再びブレスを弾く。今度はブレスは四散せず、その威力を保ったまま、V・ドラゴンに返っていきV・ドラゴンの顔に激突する。しかし、V・ドラゴンは死耐性を持っているため無傷だ。
着目すべきはブレスが効かなかったことではなく、メイビスがブレスを反射したことだ。
「因果応報は全部で三段階ある。99.99%の戦士は一段階目……衝撃の反射で止まっている。お前のようにな」
「メイビスさんは、衝撃を操ってますよね」
「違うな。俺が操っているのは運動エネルギーだ。二段階目の因果応報は衝撃ではなく、運動エネルギーを反射する。運動エネルギーは動いてる物すべてに通っている力、これを捉えることができれば雷や水とった実体のない攻撃も反射が可能。そして、三段階目、究極の因果応報は……この運動エネルギーを操作する。ここまでいくと神技の域だな。弾いたモノすべてを自分のモノのように操れるわけだ」
V・ドラゴンは如何なる攻撃も弾かれ、ついぞ息を切らし、攻撃の手を止めた。
「あ~、やっぱ今日はいけないか。我ながらこの世で一番因果応報をうまく使える自信があるが、究極の因果応報は調子が良い時にしか出ん。しかしまぁ、二段階目までできればほぼすべての攻撃を相殺、あるいは反射できる。魔力の強化によりタカの外れた身体能力と、螺旋の衝撃がこの神業を可能にする」
「一つ疑問なのですが、なぜ螺旋の衝撃で運動エネルギーを操れるのですか?」
「螺旋、回転はエネルギーを効率的に逸らす。歯車、車輪、ドリルなんかが良い例だな。螺旋ってのは……無限のパワーなんだよ」
メイビスはまた洞窟に戻る。
「バトンタッチだ。30分間逃げ切ってみろ」
トビは立ちあがり、籠手を構える。
(究極の因果応報か……まだ納得はできないけど、やるだけやってみよう)
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