表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

28/44

第27話 リッカ村

 イヴンの手を離れた盾を、トビはもう一度ぶん殴る。パリン! と耐性が割れる。同時に盾は形を変え、猿――ヨタマルに戻った。

 トビはヨタマルの首を籠手で掴み無力化。ソフィアがブーメランをイヴンの喉元に添え無力化する。


「勝負あったね」

「すまんなお嬢……」


「ここまでです」

「わかったからブーメラン向けんな! 私の柔肌に傷がついたらどうすんのよ!」


 トビとソフィアは武器を収める。

 イヴンは威張るように胸を張り、


「合格よ! 私についてくることを許可するわ!」

「負けた癖にどうして偉そうなのでしょう」


 イヴンとヨタマルがパーティに加入した。

 眼帯を付け直したヨタマルはソフィアの頭に飛び乗る。


「なぁなぁエルフの嬢ちゃん、どうしてこの男と旅してるんや?」

「話すと長くとなるのですが……」

「私は籠手を拾ってからここまでの経緯を知りたいわね」

「いいよ。休憩がてら話そうか」


 トビは二年前、籠手を拾ってから今に至るまでの経緯を全て話す。

 自分に激痛耐性があること。籠手を使ってスラムロックの王を倒したこと。ソフィアとの出会い、エルフの里で起きたこと。その全てを話す。


「激痛耐性……そんな抜け穴があったとはね。たしかにそれなら勇者の籠手を使えるわ」

「イヴンはどういう経緯でこの籠手を探す旅に出たの?」

「お師匠の命令よ。私のお師匠は勇者パーティの魔法使いで、私は小さい時から弟子入りしてたの。そのお師匠から『勇者の籠手を取ってきたら一人前と認めてやる』って言われてね。めんどくさいけど仕方なく籠手探しの旅に出たの」

「勇者様はいまどこにいるのですか?」

「さぁね。どこにいるのかしら。スピカの王都に行けば足取りを掴めると思うけど、勇者パーティは世界中動き回ってるからね~。追いつくのも一苦労よ」

「勇者探し。旅の目的としてちょうどいいんじゃないでしょうか?」


 ソフィアはトビの眼を見て言う。


「そうだね。勇者様には個人的にも会ってみたいし。ねぇイヴン、勇者様ってどんな人?」


 イヴンは腕を組み、どこか呆れたように、


「最強よ」


 どんな人か、という問いに対して、強さで答えるのはズレている。そうわかっていてもイヴンは兄のことをまず最強と説明した。

 勇者という人間の性格、人柄、それらを説明する前に、まず彼の強さについて語った方が良いと判断したのだ。


「世界最強。歴史上にもお兄ちゃん以上に強い人はいないんじゃない? 魔王ですら、きっとお兄ちゃんの本気を引き出せなかったわ。お兄ちゃんは一人だけ手こずる人間がいるって言ってたけど、どうかしらね。私はお兄ちゃんが負ける姿が想像できない。その強さに起因するお気楽さ、楽観的な性格。ほんっとうに色々適当で、よくお師匠に怒られていた」


 イヴンの話を聞き、トビは笑う。


「ぜひ会ってみたいな。最強の人か……!」


 話を聞き終えたトビは勢い良く立ち上がる。


「さっ! 休憩は十分でしょ! 行こ!」

「なに急にテンション上げてんのよ」


 底の見えない笑み。

 どこか飄々とした感じ。

 イヴンはトビの後ろ姿に、どこか兄を感じていた。



 ---



 山を登り始めた三人と一匹。

 曲がりくねった坂道、つづら折りを上がっていく。


「この山の山頂には村があります。今日はそこで休みましょう」

「あー、そういえばあったわね。無視したけど。なーんか、辛気臭い感じだったわよ」

「そうなのですか? 以前に行った時は活気あふれる村だったのですが……」


 トビの肩にヨタマルが飛び乗り、耳元で小声で喋り出す。


「……なぁなぁ。あのエルフの嬢ちゃん、トビはんの彼女なんか?」

「まさか。ただの仲間だよ」

「……そっかぁ。じゃ! ワイが狙ってもええやんな! 代わりにトビはんにはお嬢をあげるから堪忍してな~」

「そんな勝手なこと言って大丈夫?」


 ヨタマルの顔面にイヴンの右ひじがめり込む。


「聞こえてるわよバカザル!」

「ぽぎゃあっ!?」


 ヨタマルはトビの肩より落下するが、ソフィアが両手でキャッチする。


「大丈夫ですか?」

「ありがとなソフィーはん。やっぱ短気な女子はあかんわ……お嬢、そんなんじゃ一生彼氏できへんで」

「作ろうとすればいつでも作れるわよ。私に見合う男がいないから作らないだけでね」


 山を登り切り、一行は村にたどり着く。


「ここがリッカ村……のはずですが」


 山の巨大な空洞部分に岩や木で作った建物が多くある。リッカ村、山の内側に存在する村だ。実に物珍しい作りの村である。村の屋根が山の頂上になっている。

 なぜか村人の表情は暗かった。

 狩猟道具を持って立ち尽くす者。ひたすら神に祈る者。

 怒声に近い声色で話し合う老人たち。

 明らかに何かが起こっている感じだった。


「話を聞いてみようか」

「ちょっと、面倒ごとはごめんよ」

「放ってはおけません」


 トビとソフィアが責めるようにイヴンを見る。

 イヴンは観念したように肩を竦める。


「あー、もうっ! 勝手にしなさい!」


 事情聴取開始。

【読者の皆様へ】


この小説を読んで、わずかでも

「面白い!」

「続きが気になる!」

「もっと頑張ってほしい!」

と思われましたらブックマークとページ下部の【★★★★★】を押して応援してくださるとうれしいです! ポイント一つ一つが執筆モチベーションに繋がります! 

よろしくお願いしますっ!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ