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マガツヒの神 ~三つのお守り~  作者: 印西たかゆき
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神社仏閣は大切に

 翌朝、私達はとある場所にやってきていた……掃除道具一式を持って。

「よし、それじゃあ始めるか」

「はい!」


 そう言って、私とアシュリン先生は、その場所を清掃し始めた。

 その場所というのは……例の神社だ。

 私が住んでいるアパートから徒歩で少し歩き、周囲にはちょっとしたアパートやマンション、一戸建てなどがある。そのため、早朝の静けさが辺りを支配しており、少し空気が澄んでいるように感じる。

 そして、その神社は長い間放置されていたようで、石畳には雑草が伸び放題となっており、木々も鬱蒼としている。


「エレノア、こっちに来てくれ」

「はい」


 私達が来たのは、神社の入り口付近にある大きな木の前だった。

 その木は、まるで天に向かって伸びるかのように背が高く、太い幹はどっしりとしており、まるで大木という言葉がピッタリと当てはまるような立派なものだ。


「これを見てくれ」

「これは……?」


 先生の指差す先にあったのは、その大木に掘られた小さな穴だった。直径にして2~3センチくらいの穴だが、よく見ると、奥に何かがあるようだ。


「……先生、あれって」

「わからん……」


 先生はそう言って、手にしていたほうきの柄の先端を、その穴に突っ込んだ。すると、カチっと音が鳴り、ゆっくりとそれが引き上げられていく。

……それは、古ぼけた手鏡の様だった。


「手を貸してくれ」

「はい」


 私は先生と一緒にそれを引っ張り上げた。

 大きさは30cm四方ぐらいだろうか……全体的に黒く汚れていて、鏡を覆うようにして施された金細工の縁のあたりにヒビが入っている。


「すまないが、水を汲んできてくれないか?」

「わかりました」


 先生に言われたとおりに、神社の境内にある水道まで行き、バケツに水を入れる……一応、水道は通っているようだ。

 そして、先生の元に戻ると、そこには、既にタオルが敷かれていた。


「先生、これでいいですか?」

「うん、ありがとう」


 先生は、持ってきた鏡を拭くために一旦バケツの中に沈めて手洗いを始めた。

 バシャバシャと水が跳ねる音だけが響く中、私は先生に話しかけた。


「先生……結局、あの少女はどこの誰だったのでしょうか?」


……私の脳裏では、もうある程度答えが決まっている…でも、科学信奉者のアシュリン先生の手前、私はなんとなく言いたいことをぼかしたニュアンスで聞いてみた。先生は鏡を洗う手を止めて答える。


「エレノアはどう思う?」

「……」


 先生の問いに対して、私は沈黙した。先生が何を考えているのか分からないし、下手なことは言えないと思ったからだ。

 私が黙っていると、先生は続けた。


「私はね、こう考えるんだ。きっとあの子は、君を助けるために姿を見せたんじゃないかって」

「私を、助けるために……?」

「ああ」


 先生は、再び鏡を洗いながら、静かに語った。


「君が言いたいように、彼女は本当に幽霊なのかもな。でも、そうだとしたら、どうして君の前に現れたんだろう? それに、なぜ君を助けようとしたのか? エレノアは、彼女が何者かわかるか?」

「……」


 私は首を横に振った。正直、私もわからなかったのだ。いや、そもそも。


「先生。私、彼女が幽霊だなんて一言も――」


 その時、先生はこちらを向いて微笑んだ。


「確かに、私は科学を信奉している。いずれは、どのような現象も科学によって説明がつくと思っている。だが……そうなるまでは、オカルトが幅を利かせてもいいと思うんだ……人をイラつかせたり、迷惑をかけない範囲でな」


……最後の部分が、なぜか妙に強調されているような気がしたのは、私の気のせいだろうか?


「あの、先生…」

「今回の件、私は科学的な結論を出せないでいる。仮説は色々と立てているがな、立証することが出ない」


 先生はそのまま話を続ける。


「だから……いつか、君が見たという人影――もしかしたら、それはいわゆる隠神だったのかもしれないが――や少女の正体――君が言うように、幽霊だったという可能性――が科学的に証明できるように……私は祈っているよ」


 そう言って笑う先生の顔は、いつも通りの笑顔だった……。

以上で完結となります。読了ありがとうございました。

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