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V6エンジンの奏でるミュージック

作者: とさか

「この忙しい時に~」

「忙しければ違反していい訳~」

「ご主人それではこちらへサインお願いします」

「何でこんなものにサインなど…」

「サインして頂けない場合は警察署にてじっくりと説明させて頂きますが?」

「サインすりゃいいんだろう!ほれ!急いでるんだもう行かせてもらう!」

「確かにサイン頂きました。ご主人急いでる時はしっかり交通法規守って下さいね?捕まったらかえって時間かかっちゃいますからね?」

「この税金泥棒が!」

ライトバンの男は捨て台詞を吐いて去っていった。

「行くか中丸」

「はい桜井さん」

桜井は愛機であるクラウンアスリートに乗り込むと首都高入口に向かう。夜の首都高はスピードを出す車が多く危険だ。4号新宿線の新宿乗り口より首都高に乗る。アクセルを踏み込むと3.5リッターV6エンジンが唸り声を上げて加速する…んだが緊急走行時でもない今そんな事したら同僚に捕まっちまうな。

桜井はスムーズに合流すると制限速度で流す。

(はぁ…エンジン音が心地良い…V8は踏み込んだ時ボロボロと滑らかじゃない音がするしV12になると音が甲高すぎて耳障りだ。6気筒が良い…)

「桜井さん漫然運転になってませんか?」

「すまんすまん、考え事してたわ」

「来ましたよ」

「おう」

後ろからスピードを出して追い抜いていく個人タクシー。個人タクシーは追い抜いすぐに減速した。

「なかなかいい感してらっしゃる」

「そうですね」

(はぁ…個タク共いい車使ってやがんなぁ…クラウンのGエグゼクティブかよ。3.5リッターハイブリッドで5リッター級のパワーを誇るんだよな…)

個人タクシーは70キロ程度を維持してジリジリ離れていく。ある程度間が空いたら再度スピードを出して消えていった。

何回か首都高を往復していると

「桜井さん来ます。早いです」

「マジではえぇな」

後ろから白いNSXがあっという間に抜いていく。桜井はアクセルを踏み込み後ろへつける。

「計測開始!」

「140.141.141計測完了」

「はいサイレン鳴らせ」

『 う〜〜〜ぅ~~~ 』

「逃げる気か…追跡開始!」

三宅坂ジャンクションからC1へ入り爆走するNSX。3.5リッターツインターボハイブリッドのNSXは直線こそ早かったがC1は完成当初「日本は世界一のサーキットを作った」と海外から言われる程の難コースだ。

C1に入ってからNSXはパワーを生かしきれず桜井のクラウンがジリジリ追いついて行く。C1を1周した後NSXはたまらず東関道方面へ逃げる。

(うっすら明るくなってきたな…そろそろ終わりにしないと)

東雲ジャンクションの合流を見て桜井は減速する。

「諦めるんですか?」

NSXは辰巳ジャンクションを深川線に入って…

ガシャン!

「あーぁやったか…」

「桜井さん分かってたんですか?」

「あぁ、生簀積んだトラックが水撒いてたからな…」

「なるほど…あのスピードじゃスピンしますね…」

桜井は逆向きで壁に張り付いたNSXの後ろへクラウンを停めると

「中丸コーン置いてきてくれ」

「はい」

桜井はNSXの運転席を開ける。

「大丈夫か?」

「大丈夫です…」

消え入りそうな声で若い男が答えた。

「動けるならすぐに出てこい」

「え…何で…」

「高速道路で事故したら事故車後方の路外に避難は教習所で習っただろ?今この場に脇見運転のトラックが飛び込んで来るかもしれんのだぞ?」

男は慌てて運転席を降りると桜井の後ろをついて来る。

「あの車は君の車なのか?」

「個人シェアで借りました」

「他人の車で逃げたら持ち主に迷惑かかるだろ?」

「すいません」

「それにゲームじゃないんだから安全運転しないと。ゲームなら事故ってもコンテニュー出来るだろうけど実際に事故すれば死人が出る事もある」

応援が到着してレッカーで事故車を撤去し桜井達は残業にはなったが無事分駐所へ戻って報告を済ませる。

「ふぁぁぁぁぁ」

「桜井さんお疲れ様でした」

「中丸いい所に来た。ちょっと付き合え」

桜井は愛車に中丸を押し込む

「築地で海鮮丼食って帰るぞ!」

桜井は愛車の白いNSXのギアを1速に入れてゆっくり発進させる。

赤いエンブレムのNSXはパワステもエアコンも付いてない。もちろんカーステレオもだ。何も無い車だが最高の音を奏でるエンジンがある。心地よいエンジン音を聞きながら築地へ向かうのであった。

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