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3 独裁者の最期

 一年生三人はしゃべっていた。


「なぁなぁ、俺さ、昨日ガチャで星5キャラ当たったん だよ。すげえだろ、褒めて褒めて!」


何やらゲームの話で盛り上がっていた。


「いいなぁ。俺にもガチャ運分けてや。ところで、なんのキャラ当てたんだ?」


休憩時間にしゃべっていた。


「それがだな、あのドセイヤサッペイなんだよ!」


「まじか!あのキャラを!」


【あの】と、言われてもわからないが、盛り上がってい

た。


「俺もガチャ運上げたいなー」


「物欲控えるか・・」


 そこに、独裁者はやってきた。


「お前らぁ、ちゃんと練習しろよ。休憩時間は30秒って


あれほどいっただろうが!」


そんなこと、一年生たちは合意した覚えはない。そし

て、きょうのサキトは一段と機嫌が悪かった。


「半沢先輩、ぼくたちそんなこと、ミーティングで聞いてないんですが・・」


「そりゃあ、そうさ。お前たちが入部する前から決まってるんだから」


無茶苦茶である。すると、一人がこんなことボソッと呟いた。


「どうせ部長を追い出して決めたんでしょ」


サキトはこれを聴くと、目を見開いて喋りだした。


「いや、違うよ!いや聞いて。第一、あの男が部活投げ

出してさ、いや、だから、本当はやりたくなかったけど、仕方なく部長代行してるわけ。わかる?でさ・・」


(いやいやいやいやうるせえなあ)


(仕方なくって、一昔前のなろう主人公かお前は)


(腹減ったでござる)


そんな事を思いながら一年生三人はサキトの口から吐き出される空気の振動を聞き流していた。話はまだ続き、口調がどんどん荒くなっていく。


「だからとにかく練習しろよ!俺は忙しいんだよ」


(よかった。もうすぐこの説教地獄から解放される)


(ほんまなんなんこの時間)


(ラーメンがいいでござる)


 ついにサキトのパワハラ説教が終わると思ったその時、サキトは決して後輩に対して言ってはいけない理不尽なことを口にした。


「お前らへの指導でどれだけの時間を無駄にしてると思ってんだよ。そのせいで大会負けたらどうすんだよ!」


今まで黙って聞き流していた三人も、ついに堪忍袋の緒が切れた。


「黙って聴いてりゃなんですか。そのまるでお前らなんか本当は要らないみたいな言葉は」


「そうですよ。あなたが大会に負けることと私たちへの指導と言う名の『パワハラ』は、全く関係ないでしょ」


「負けたくないなら、俺たちに構ってないであっちで練習すりゃあいいでしょ。“時間の無駄”とやらが省けますよ」


一年生たちの爆発した不満をぶつけられて、サキトの方も怒りが大爆発した。


「ハァ?何言ってんだよ。俺の何が嫌いなんだよ」


感情に任せて意味不明な怒り方をするサキト。


「いや、そう言うことじゃなくて・・」


一年生もツッコミを入れてしまった。


 そして。


「ええぃ、うるさいうるさいうるさいうるさいうるさーい!やる気ないなら帰れよ!」


アニメでしか聞かない台詞を吐いたと思ったら、サキトはついに帰れと叫んだ。図書館から遅れてやってきた隆人や山仁が駆け寄り、サキトを諫めたが、効果はなく、最終的にサキトはこう言った。


「卓球するか死ぬか選べ!そうしたら許してやる」


無茶苦茶である。一年生三人は部室から出て行ってしまった。


 あの後、隆人は山仁としゃべっていた。


「なあ、本格的にやばくね。あの【独裁者】」


山仁は答えた。


「一年生にあんなこと言うのはさすがに酷いよな」


「卓球するか死ぬか選べって、ある意味天才的なワードセンスだよな・・・フッ、フフッ」


ツボにハマったのか、隆人は笑い出した。


「ちょ、何お前、【独裁者】に聞こえたらどうすんだよ・・・はっ、あはははっ!」


山仁も釣られて笑った。隆人は、


「おい、【独裁者】に聞こえるぞ!」


と、言った。


「お前が言うんじゃねえ」


山仁はツッコんだ。すると、サキトがきた。


「え?なんの話してんだ?」


べつに、怒ってはいない。しかし、二人は嘘をついた。


「い、いやぁ、ゆ、悠仁、今日いないよなって・・・」


すると、サキトはこう言った。


「へぇ。なにそれ天才。ねぇねぇ聞いて聞いて!昨日さあ・・・・んなことがあったんだよ。どう思う?」


それに対して隆人が、


「へ、へぇ」


と、答えた。しばらくしてサキトは去って行った。


「・・・ほんと、あの男、話遮る天才だな」


「あんなことの後なのに、どんな神経してんだろ」


二人はサキトに呆れ果てた。



「ありがとうございました!」


部員たちの声が響く。


「よーし。気をつけて帰れよー」


顧問の久後ノリヒコ先生が号令をかける。


「お、半沢ぁ。お前帰らないのか?」


「あ、はい。カギ置いといてください」


「お、わかった」


サキトは部室に残り、黄昏れることにした。窓から外の景色を眺めている。この部屋は体育館の二階に付属している。


「みんななんで俺の指示に従わないんだ・・・クソッ」


自分の普段の行いを省みたらいいのに。



 それは一瞬の出来事だった。



 背後から足音がした。



「おい、誰だっ・・・・」



 一年生三人はマスクと手袋をして、二人がサキトの腕を掴んで動きを封じ、そして同時に、一人はサキトの背中を、さっきの二人は掴んでいた腕を思いっきり窓の外へ、押し出した。

 

 物を言う暇はなかった。

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