1 男子卓球部の独裁者
「おい、しっかり練習しろ」
今日もなかば怒鳴るように部員に声をかけるのは、神河中学校三年生、男子卓球部副部長の、半沢サキト《ハンザワ・サキト》である。
「また怒鳴ってるよ・・」
「ほんと怖えよな。逆らったら何されるかわかんねえ」
二年生の森山隆人と山口山仁は陰口を叩く。そこに、隆人の兄の悠人も話に入った。
「あのさ、こないだあの【独裁者】さ、みんなが弱いから俺が強くなれないとか言ってたぜ」
「え?まじ?」
「自意識過剰すぎな。」
【独裁者】そう裏で呼ばれている。隆人は言った。
「アイツのせいで部長かわいそうだな。【独裁者】に主導権取られて名ばかりになったし」
山仁も言う。
「そして他の生徒から無能な部長って後ろ指指されたんだよな。・・・いまや不登校」
「生徒会からも部長職をサキトのやろうにわたせと言う意見が出ているらしい。もう、いっそのこと、僕らで部長を復帰させて【独裁者】に対抗しようぜ」
悠人がそんな提案をした。二人は揃って賛成した。
「いいな、それ」
「で、どうする?誰を仲間に誘う?」
部長復帰計画を話し合っていると、アイツがやって来た。男子卓球部の独裁者が。
「おい、お前ら!しゃべってないで練習しろや!特に悠人、お前大会控えてるだろうが」
と、吐き捨てまた歩いて行った
「いくら正論だろうと、毎回あの言い方だと嫌気がするんだよな。あと、友達でもないのに僕らのこと呼び捨てにしてさ・・・」
「それな」
サキトの評判は、部活内では最悪である。しかし、サキトはスクールカースト上位の奴らと繋がりがある。だからこそ、誰も意義をとなえられないのだ。




