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そのときはもう、  作者: 芳田文之介
1/3

第一話



(工事中)


この校、再度校正し直す予定。





それは、さびしい週末の朝だった――。


ベッドから起き上がったぼくは、眠気(ねむけ)まなこをこすりながら、けだるそうに、建てつけの悪い部屋の窓ガラスをガラガラと音を立てて開いた。


欠伸を一つ噛みつぶし、開いた窓から、ひょいと(こうべ)を挙げて、しょぼい視線を天に投げる。


見ると、墨汁を流したような、ドス黒い雲が、低く、不気味に、頭上を(おお)っているのが目に入る。


イヤな空だなあ……。


つぶやいた瞬間、ぼくの頬を、ふわっと風が撫でていった。


チェッ、なんだよ――思わず、ぼくは舌を打つ。


湿った風。頬を撫でていったその風に、ぼくは雨の臭いを嗅いだ。


いそがしさにかまけて、愛車ルノートゥインゴの洗車を、この二ヶ月あまり、サボってしまった。


ーー週末には必ずおやり。


週のはじめに、ぼくを、もう一人のぼくがそう鼓舞していた。


けれども、よりによって、これから雨になるらしい。


天気予報士のお姉さんの嘘つき……うらめしそうに、ぼくは、ドス黒い雲をねめつける。


すると、そのとき――。


ん? な、なんだ!!


ぼくがねめつけた、ちょうど、そのあたり。そこが、急に、モゾモゾとうごめいた、ような気がした。


はは、気のせいだよねぇ……いくらなんでも、それはね、そう思いながらも、ぼくは躍起になって眠気まなこをゴシゴシとこする。


それから、改めて、恐る恐る、そこに目をやる。


う、うっそ⁈


や、やっぱり、モゾモゾとーーふいの事態に、ぼくは思わず、不安な気持ちに襲われる。


野放図な自分を棚に上げて、これみよがしに、舌を打った。その上、イヤな空だなあ、とうらめしそうにねめつけてしまった……ひょっとして、それが天の不興を買った??


い、いや、ちがう、ちがうんです。


あくまでもぼくは、天気予報士のお姉さんに対して、舌を打っただけで、て、天に対してだなんて、そ、そんなぁ、めっそうもない。


だ、だって、聞いてくださいよ。きのうの夜、ニッコリ微笑んで言ったんですよ。


「あすは、絶好のお洗濯日和になりますよ」って、天気予報士のお姉さんが……。


だ、だったら、洗車は大丈夫だろうなって、ぼくもお姉さん同様にニッコリ微笑んだんです。


そ、それなのに、それなのに今、湿った風がぼくの頬を、ふ、ふわっと……だ、だから、それはないじゃんって感じで、ぼくは、お姉さんに、し、した、したを……。


天に向かって、ぼくは懸命に弁明する。可笑しいほど、しどろもどろになりながら。


が、それにもかかわらず、そんないいわけなぞ通用せん、と言わんばかりに、事態はもっとややこしくなったのだったーー。



つづく




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― 新着の感想 ―
[良い点] 一話完結かと思ったら、まさかの続く!悔しいのでブクマさせていただきました。評価は続きを読んでからにします。 期間中にぜひとも完結させて下さい! [一言] こういう幼稚園、うちの近所にもあり…
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