プロローグ
叩く。斧を振った。
ミシミシと音を立て、巨木が倒れる。
……一呼吸を置いて、妥協する。
木漏れ日が差し込む森との境。
少しばかりの風が、草木を、光さえも揺らしていた。動物たちの音使いが聞こえてくる程、その森は豊かな姿を見せつける。
乾いた根元の幹は、ひんやりと体温を奪いながら。
温度差と少しの風は、こうして横になるのに十分な理由。
心地よい春の日のような、……そんな日だった。
樹木を切り倒し。
余計な枝を切り取って。
丸太を加工する。
そんな事が、仕事だった。
『シェルレッタ。そろそろ行くよ』
「______日光浴中。もう少しかかりそう」
『サボってないで早くして?……って言うか、そっちに向かっているから!』
「……車で?」
『車で!お客さんも乗せてる!』
荷物は大分収まり、許容を過ぎてこれ以上は運べそうにない。だからこそ自分は迎えが来ることを期待し、こうして午後の時間を有効に活用していたわけだ。仕事にならないのだから働く理由はなく、働く理由が無いのなら、体を休めることが何よりの得策だからである。
愛用の斧に寄り掛かりながら、囀りに合わせて鼻歌を歌う。
先ほどまで樹木だったものは、これから価値に代わる。
インカムから聞こえる声に答えず、作業を続けた。
切り取られ。
加工され。
木材として積みあがった其。
積みあがった木材たちは、新木の独特な匂いを漂わせる。新築の木造建築を思い出させるその匂いに、多少の眠気を覚えながらも仕事に精を打つ。
言葉を語る。
自分の身長を優に超えていた加工品たちは、何時の間にやら小さな玉になって山と成していた。木材だっった証の様に、文様だけが球体に彫られている。
それらを袋に詰め、先ほどよりも容量が小さいそれを背負い、合流場所を目指すことにした。
森であったその場所は、草原だけを残している。
懐から、葉巻を取り出し火を付けた。
煙は、空へと棚引く。