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明日死んだって構わない

作者: 白宮 安海


いつからだろう。心が冬の終わりに無様に地面に堕ちる、枯葉のように枯れてしまったのは。

小さな踊り子は足を折り、世界はいつからか、ただ白と黒を乱雑にぬりつけるように無味無臭になった。

夏の蝉の音が聞こえたあの日、心を踊らせながら入った古本屋で、僕は多分、あの時死んだんだ。見たくもないものを見た。男二人が女一人に怖い事をしている。怖くて涙が溢れた。


叔父さんは叔母さんを殴ろうとして壁を殴って穴を開ける。叔母さんはおばあちゃんに包丁を向ける。

愛はない、憎しみだけがそこにある。


母さんは僕や父さんを罵るよ。お願いだから僕の心を殺さないで。気持ち悪い、死ね。言葉は刃のように心臓に深く突き刺さり、今でも引き抜けずにいる。母さんどうして僕のお腹を息が出来なくなるまで踏み潰したの。母さん僕の遺書を笑って捨てないで。

僕はみっともなくて、恥ずかしい存在なのか。自分を殺して生きていく事が、普通になった。

母さんに好かれたくて、僕は体を売った。その金を渡したら母さんは笑顔になった。みんなが優しくしてくれる。

父さんは酔っ払って母さんの首を絞めて、5階から突き落とそうとした。


父さん病んで、リストカットをした。アルコールばかり飲んで、会社も辞めた。父さんは辞めさせられたんだ。会社の人は、印刷用のインクが全部捨てられたのは父さんのせいだといった。父さんは否定してた。

それから、父さんは酒ばかり飲んで、とうとうご飯も食べずに心筋梗塞で死んだ。


愛だけが欲しかった。本当の愛を知らずに人を愛せるのだろうか。みんな僕から逃げて行くよ。僕が心から人を愛し、信じる事が出来ないから。あなたの前で無理して笑う。僕はとっくに死んでいた。生きている振りをして生きていくのは、こんなにも辛い。


明日死んだって構わない。

明日死んだって構わない。

もうあなたに愛されないのなら。


何度も何度も何度も何度も繰り返し僕は死ぬ。そうして深い水の中で永い息が終わるのを待つ。泡が消えたら、僕は何になるのだろう。

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