No.003 クロ、叱られる
「隊長、一体どうやって今の俺をシゴくんですか?というか俺と隊長じゃあ、身体の構造からして違いますよ?」
お節介ではないが、とりあえず気になった為聞いてみると、
「心配するな。構造が違っても、サイボーグの構造に関しては大体はわかる。お前に合わせた訓練をするさ」
と、何故か優しい顔で言ってきた。
・・・・・・これはイヤな予感がする。
「さて、早速やるか…と言いたいところだが、クロ。」
「はい」
「お前の腕を見せてくれ。お前のその状態を見てからトレーニングを今からやるかどうかを決める。」
「何だそんなことですか、良いですよ。ちょっと待っ…て……」
今この人間なんて言った?
今からやるって言わなかったか?
「どうした、黙りこくって?まさか、見せたくないだなんて思ってんじゃないだろうな?」
気のせいだな。うん、そうに違いない。気のせいだ気のせいだ。
「えっ、いや、そういうことでは無いですよ」
「ならさっさと見せろ」
「あっはい」
なんか引っかかるな~と思いつつ、俺はボロボロ ー俺は思わないがー な腕を隊長に見せた。
「ほら。どうですか?全然ボロボロじゃあないですよね?」
これは自信を持って言い放てる。
少しだけ、いや、かなりの回数煙とショートを生じさせたが、問題ないと思う。
「どうです?問題ないでしょう?」
「・・・・・・」
あれっ?返事がない。というか、表情が唖然としているように見える。
と思ったら、今度は顔色が青くなり始めた。
大丈夫だろうか、本気で心配だ。
取り敢えず声を掛けてみようか。
「あの、隊長?大丈夫ですか?」
「·····ぉぃ」
「はい?」
おっ良かった。
別にどこも悪いようじゃないようだ。
ただ、様子がおかしいが…
「『はい?』じゃねェよ。お前よォ…この腕のどこがボロボロじゃねェか、言ってみろやァァァァァ!!」
えぇぇ!?なんでなんでってちょっと待って下さいノイズが走るやめて、ちょっやめて下さいってば!
◆◆◆
「お前の腕を見せてくれ。お前のその状態を見てからトレーニングを今からやるかどうかを決めるから。」
私はそう言った。
私の名はエレン・シーク。
帝国の極秘部隊「Bunker」の隊長をやらせてもらっている。
今何故この様な会話になっているのかと言うと、それは約3時間前の事がきっかけだ。
あの時の私は暇を持て余していた。
――約3時間前――
ピコピコッ ドンドンッ ガガガガガッ
「あと少しッ、ほらそこだそこ。あぁー違う違う。違うってば!」
チュンチューン ババッ ドガドガッ
ビビビッ "ケーコク ケーコク 体力ガ残リ
10%ヲキリマシタ!10%ヲキリマシタ!"
ズガーンッッ!!
「···あっ」
GAME OVER
「·····クソッタレがぁー!」
私はその場でコントローラーを放り投げた。
あぁクソッ、またダメだったか。
私がさっきやっていたのは、戦争中だと言うのに新作が発売され、しかも何故か大ヒットを記録した格闘ゲーム。略して格ゲーの
『アイアンストリートⅣ』
だ。
このゲームはルールがとてもシンプルで、相手の体力ゲージを全て削り切った方の勝利というものなのだが……。
これがとても面白い!単なるパンチやキックだけでなく、投げ技やつかみ技、キメ技などの特殊なものだけでなく、キャラクター特有の技が存在するのだ!
また、コンボと呼ばれる、相手に反撃の間を与えないで一方的に削るテクニックが有るのだが…これが決まるとチョー気持ちい!
全く飽きない!
フフっ、またやろうかな…
コンコン
ノックの音がした。
ちぇっ、やろうと思ったのに。誰だよ邪魔した奴。
ムスッとしたが仕方ない。
直ぐに顔を『リーダー』にする。便利だな、"演技"って。
「入れ」
許可を出した。すると、
「失礼します。隊長。こんな夜分にすみません」
入ってきたのはハチだった。本名はCode811らしいが、そんなもん知らない。関係ない。
「ハチか。どうした?こんな夜分に?」
「はっ。申し訳ありません。黒丸についてでして」
んぉ?黒丸について?
·····あぁ、クロのことか。
「黒丸がどうかしたのか?」
「実は、もう夜の11時なのですが、何処かに行ってしまいまして…」
どこかに行った?
おおっ。なんか面白そうな匂いがするゾ!
「御手数ですが、夜分外出の許可を頂きに」
「その必要はない」
「エッ?」
ハチが驚いたようにこちらを見る。
「私が探しに行こう」
「そんな!結構です、私が探しに向かいますので…」
「やかましい!私が行くと言ったら行く!これは決定事項だ!」
こんな面白そうな事譲ってたまるか!
「で、ですが…」
「暫くここに居てくれ。そこにあるアイアンで遊んでてもいいから。ただし、セーブデータを上書きするなよ!」
「エッ?あの」
「では行ってくる」
私は雷の如き速さで部屋を出た。
ムフフっ、面白そうだな!
一方、ハチは…
「えーっ。行ってしまったか…ていうか、あいあんって何ですかね?まぁ、待つしかないか…」
――現在――
そんな事があって今私はここに居る。
まさか、隠し部屋のような場所にいただなんて思わなかったが。
まさか、強くなる為の特訓をしていたとはねぇ。
ま、付き合うことを決めたのは私だからな。
私とこいつでは体の構造が全然違うのは承知の上だ。
だが、ただこいつの言っている『大丈夫』の基準が分からないため腕の状態を見ようと思ったんだ。
で、何だ?見せてくれるのか?
うん、そうだ、そうやって見せてく··れ·····
「どうです?問題ないでしょう?」
·····何だこれは。
鉄のボディが見えているじゃないか。
しかも所々情報神経が切れてるし、武器の収納場所がほぼダメになっている。
サイボーグというのは、物理的ダメージや人間のような五感が存在しない。
ただ、黒丸は違う。
何故か人間のように五感が存在する。通常だったら重体だぞ、これ……。
やはり、確認して正解だったな…
「あの、隊長?大丈夫ですか?」
なんで自分の身を心配しないんだこいつは。
「·····ぉぃ」
「はい?」
腑抜けた返事をしてきやがった。もう我慢の限界だ。
「『はい?』じゃねェよ。お前よォ、この腕のどこがボロボロじゃねェか、言ってみろやァァァァァ!!」
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