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ご (ネーロ視点)


不安げに揺れている瞳は舐めたいくらいにおいしそうだ。

綺麗に美しく成長したハクは存在感が以前よりも増している。それを感じた俺の中の信用ならない奴が叫んでいる。ほら見たことか!これではハクを奴らにとられちまう!!

うるせえなあ。もう決めたんだって。俺はハクを信じるんだって。


「 ネ、ネーロ。ボクどうなっちゃったの? 」

「 ああ、大丈夫だよ。魔素を吸ったせいで体が成長したんだろう。」

「 成長? 」

「 ああ、お前みたいな白いヤツは魔素を一定量吸わないと成長できねえんだよ。その代わり一気に成長するから注意が必要なんだとよ。」

「 へえー、そうなんだ。ネーロは物知りだなあ。」


うんうん、と頷くと一緒に長く伸びた髪が揺れる。腕を組んで何やら考え出したハクはめちゃくちゃいい匂いがする。このいい匂いが俺を惹きつけて離さない。この匂いを感じることが出来るのが俺だけでよかった。

俺の事を番だって決めてくれた小さい頃のハクに感謝してもしきれねえ。


今度は自分の髪をつかむと何かを確認して満足そうに頷いた。次は自分の体を見下ろし、くるりと回って見せた。どうやら体つきを確認しているようだ。自分の左の腕を右手で掴んだり握ったり忙しそうに手が動いている。


わ、ばか!何してんだ!


急に自分のシャツの中を覗き込んだと思ったらむ、む、む、胸をも、もみ、揉むなよ!!

ぺったんこだった胸が盛り上がったせいでシャツの裾が上がっている。裾の下から白い肌が見えて目に毒過ぎる!!どうするか、俺のシャツで包むか、どうするか。


と、急にハクの動きが止まる。

小さい声でブツブツ何か言い出した。上向いたり下向いたりしたと思ったら俺を睨み付けてきた。

成長しないことを悩んでたのを知ってて黙ってたことを怒ってるな。いつもは抜けているからごまかせているとは思ってたけどさすがに・・・。


「・・・気付いたか。」


まっすぐなハクの視線に耐えられなくて目をそらした。やばいな、結構怒ってる。今更ごめんとか謝っても遅いよな・・・。

そう思っていたらバチン、と両頬の痛みと共に響いた音にびくっとする。


「 説明してく、れ、ま、す、か、? 」


うう、やっぱり怒ってる。でもでも教えてたら絶対に成長したがったろ?そしたら信用ならない俺が出て暴れちまいそうだったんだよ。


「 だって、教えたらハクは大きく成長したくなっちゃうだろう?」

「 当然でしょう? いつまでもネーロに守ってもらうのは悪いし、自分の事は自分でしたい。」

「 ・・・だから教えなかったんだよ。」

「 なに? 聞こえなかった。」

「 なんでもねえ。」


だってよ、大きくなるってことは俺の手を離れていくってことだろ?世話を焼きたい俺にとっては迷惑だったんだよ。い、今はもうそんなこととかは、思ってはいない!と、思うんだけどな・・・。

ちょっとだけ自信がまだ、ない・・・。


ハクの顔もまだ見れなくて横を向いたままになっていたらハクの唸り声が聞こえてきた。苦しそうな悔しそうな声に心配になってきた俺は下を向いて唸っているハクの顔を覗き込む。

ああ、下唇を噛んでる!ダメだって!そんなに強く噛んだら唇に傷がついちゃう。


「 それなら聞くけど、俺がお前の世話を焼くことに不満があったのか? 」

「 ・・・不満というよりも、引け目を感じる。」

「 引け目? 」

「 うん、ボクがいると世話ばかりかけてしまうだろう?」


何を言っている!!!!

ハクは俺の事をわかってなかった!俺は!ハクの為にすべてを使いたい!


「ボクの面倒を見て、そのあと自分の事をしなくてはならないなんて大変だ。魔素が吸い取られると虚脱感に襲われることも知っている。深夜と早朝に欠かさず鍛錬をしているのも知っている。でも、ボクの世話がなかったらもっと早くに鍛錬もできて、体を休めることもできるのに。」

「 な、おま、知ってたのか!」

「 鍛錬の事? 知ってたよ。」


恥ずかしすぎる・・・。隠せていたと思っていたのに隠せていなかったとか恥ずか死ねるだろうよ!


「 ・・・ハクは俺から離れたいのか?」

「 うーん、離れないとネーロが困るでしょ。」


そこまで言うとハクは黙り込んだ。でも俺のそばから離れない。言っている事とやっていることがちぐはぐだ。

しばらく様子を見ていれば潤んだ目で俺を見上げる。ほら、涙がこぼれてるじゃないか。


「 はあ、これだから・・・。」


ハクを放っておくなんてできやしない。こんなにも単純でわかりやすいカワイイ生き物。俺のモノ。


さあ、どうしてやろうか。

はやる気持ちを落ち着けるために大きく息を吐く。

逃がしてやる気もなかったがハクの気持ちが付いてきてるならなおさらだ。

絶対に逃がさねえ。

そのままそっと潰さない様にそっと抱きしめる。


「 なあ、ハク。 お前は俺が邪魔なのか?」


そう聞いた瞬間に腕の中のモノがふるふると動く。


違う、違う、とうわごとのように言いながら綺麗な粒をポトポト落としていく。

ああ、もったいねえなあ。こんなにもおいしそうなのに。手のひらにそっと握りこみたいけどうまくいかねえ。


「 なんか勘違いしてるみたいだからはっきりと言っておく。いいか、一度しか言わねえからしっかりと聞けよ?」


またふるふる動く。

ああ、どうしてやろうか、どうして欲しいのか。


「 俺がお前の世話を焼くのは当たり前なんだよ。お前は、ハクは俺の唯一の番なんだよ。」

「 つがい?」

「 ああ。だから俺の魔素をお前が吸うのは当たり前なんだよ。むしろ俺のしか受け付けねぇとか、どんだけ俺を喜ばしたのかわかんねぇだろ。」

「 え?ああ、うん。」

「 わかんねぇって顔してんだろうな。」


もぞもぞして俺の腕から逃げようなんてぜってえに許さない。

気を落ち着けて優しく言い含め、いや、話すためにふう、と息を吐く。


「 あのな、俺たち神狼族は番の世話をすることを無上の喜びとして生きてんの。だからお前の世話をするのは俺にとっては喜びで、頼んでもしたいことなの。それなのに俺の世話から逃げようとか、何? 俺の息の根を止めようとしてる? 」


必死に首を動かして否定してるつもりかもしれないが、実際には俺の息の根を止めるには十分なんだからな。


「 そう? まあいいか。今、ハクがこうして俺の中にいることが重要。」


でも、まあ、しょうがないよな。知らなかったようだし、知らなかったことはこれから知っていけばいいことだし、もう俺も遠慮しないでおくことにするよ。

腕の中でもがいている様を堪能するのも楽しいけど、今はもっと重要なことがあるからね。


腕の力を弱めればハクが俺の顔を嬉しそうな顔で見上げる。


ああ、本当に、きれいになっちゃったなあ。これはダメなやつだ。早くシルシを付けて俺のモノにしなければ。


脅かさない様に、傷つけない様にそっと頭を撫でる。うっとりと見上てくるハクに思わず喉が鳴る。

ゆっくりとハクを見つめながら顔を近づけて・・・。


ガブリ


ハクの鼻の先に噛みついた。




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