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に (ネーロ視点)

それから少しづつ自制を覚えていった俺はハクとハクのご両親とも良好な関係を築けていたと思う。

なかなか素直になれないけれど、ハクの事は大事にしていたと思う、よ。

ただ一回ハクにしっぽを盛大に揺らしていることを指摘されてからはいろんなことをめちゃくちゃに我慢することにした。やっぱりハクの前ではかっこいいところ見せていたいじゃんか。っていうかさ、ハクに釣り合う様になりたいんだ。誰にも文句を言われない様に。で、いつかはみんなに、この世のやつらに知らしめるんだ。ハクは俺のモノだってな!


ああ、そういえばハクの事をいっぱい勉強した。正確には代々の『ハク』っていう事でいいのかな。

何百年かに一度、吸血族には白い個体が生まれてくることがある。長命種のせいかあまり個体数が増えない吸血族にとっては珍しく、そして特別なことのようで、この『ハク』は吸血族の行き先を決めるかじ取りの役目を担うらしい。難しくてよくわかんなかったけど、長老みたいな感じ?

まあ、どちらにしても言えることは、ハクを番にするにはものすごい人数の敵、俺からハクを取り上げようとするやつはみんな敵、を倒さなければいけないってこと。


そう思って鍛錬していたら怪我をした。師匠の言うところ、雑念が多すぎる、だってさー。運の悪いことにその現場をハクにみられてしまい、ハクは顔色を真っ青にして泣きながら俺の事を看病してくれた。怪我自体は大したことないしいつもの事なのに、ハクにとっては大ごとだったみたいでめちゃくちゃ心配させてしまった。おれはハクを心配させるために鍛錬しているわけじゃないし、ハクを守りたいのに余計な心配事をさせてしまった。とっても反省した俺はハクが寝ている時間帯にこっそりと鍛錬をすることにした。ハクのそばにはハクの母さんが見張って、コホン、付いていてくれるから安心して励むことが出来る。ハクの動向を気にしなくて済む分集中できて師匠にも褒められるようになってできることも増えていいことづくめだ。


そんな生活にも慣れてきたころ、一回は通わなければならない学校への入学通知を持って親父がやって来た。世界のことを勉強して将来の職業の適性を見るために入るところで、どんな種族も一度は入らなければいけないし、ここを出ないと一人前と認めてもらえない。親父もそこで勉強して商人の道を見つけたらしい。いろいろな種族のものが通うところなのでそこで番を見つけたりすることもあるんだそうだ。俺にはそんなことはどうでもいい。それよりももっと大事なことがある。

ここに通わなければ一人前と認められない、という事はハクと暮らせないという事だ。そんな決まりなんてくそくらえだぜ、と思っていたけど、ハクの事を考えたらそうは言ってられない。ハクに釣り合う男になるためには世の中のものに一人前だという事を知らしめないといけないからな。

俺はおじさんにハクと共に学校に通えるように頼み込んだ。まあ、実際はハクの体質の事もあるから特例として二人一緒に入学させることは了承済みだったらしいけど。だったら最初から言ってほしかったぜ。これで二年間も離れなくて済んだ。二年間も離れていたら自分を抑えきれなかったかもしれない。


だけどここで大きな問題が起こった。主にハクの事で。

前々から疑問に思っていたんだが、ハクはここ5年ほど成長していない。俺の魔素が足りないのかと思ってたくさん吸い取るように言ってもハクはいらないと言う。なんかヘンに遠慮しているっぽい。今は全然平気だけど何かの時にハクの体に異変があっても困ると思って、ハクが寝てからおばさんに頼んでハクのそばにいてもらえるように頼んだ。その間におじさんの元に聞きに行くことにした。


「おじさん。ハクの事についてなんだけど・・・。」

「ああ、ネーロ君。そのことについてちゃんと話さなくちゃいけないと思ってたんだ。」


おじさんが言うにはハクは特別な吸血族だから成長の仕方も特別なのかもって。ハクは生まれてから5年ほどは産まれたままの姿でいた。それに変化が起きたのは俺と初めて会った時。白い何かだったと思ったのは小さい小さいハクだったってことだ。それで俺が気絶するくらいの魔素を吸って今の大きさになったんだ。あの時吸い取られたくらいの量なら今は気絶することもないとは思うけど、万が一俺が気絶してしまった時、周りに俺以外のヤツがいて、大きく綺麗に(絶対綺麗になるに決まってる!)なったハクを見るなんて絶対に許すことはできない。そんなことになったら・・・。


「おい、ネーロ君。落ち着いて。だいじょうぶだから。」


無意識のうちに唸っていたみたいで、おじさんに頭と背中をゆっくりと優しい手つきでさすられていた。そのおかげで少し冷静になった。危ない危ない。おじさんにみっともないところを見せてしまうところだった。そんなことしたらおじさんにハクを取り上げられてしまう。おじさんはまだ俺が超えることのできない、でも越えなければいけない大きな大きな高い壁なのだ。

おじさんと話して結論が出た。なるべく魔素を吸い取る量を抑えて、卒業したら準備を整えて魔素を吸ってもらうことにしよう、と。

あともう一つ、ハクにこのことは内緒にすることにする。これはおじさんが言い出したことだ。よくわからないけど、ハクの事を思っての事だし、おじさんが言う事なら間違う事もないはずだ、と思う。

ちょっとハクの事を置いてきぼりにしている気もするけれど、ハクのため、俺のためを思うとこうするしかない。

おじさんとの話が終わった後にハクの顔を見に行くことにした。おばさんと入れ替わりで部屋に入れば穏やかな顔で寝ているハクがいた。

気配を探れば何も異常はなく静かな夜だ。ハクの事を見れば心が満たされていく気がして俺自身も優しくなれる気がしてくるから不思議だ。


そっと近寄って覗き込めば小さい寝息が聞こえてくる。胸がいっぱいになってなんだか泣きそうになる。

これから先の事が不安で叫びだしたくなってきた。

ああ、なんだか俺が俺じゃないみたいだ。

小さい頃はあまり感情の起伏も少なく、よく意思確認をされてた。楽しいか?とか嬉しいか?とか。

それが今じゃあ耳はピコピコ、しっぽはユサユサ、場合によってはブンブン。昔の俺が見たらダッセー、とか思ったに違いない。でも俺は嬉しい。それよりも何よりもハクを見つけたことを。


もっとハクの顔を見たくて、もっと近くに寄りたくて、触りたくて、嗅ぎたくて、味わいたくて・・・。


うわーーーー。

お、俺は今な、なにをしようと?

ハクの事を喰おうとした!!なんでだ!

大事なハクを喰ったら大変なことになるじゃないか!!

わーーーーー!もう、俺が信じられない!


その日から俺はハクに近づけなくなっちまった。




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